第4話 迷宮RTA配信開始?
ルリが密かにケツイをみなぎらせていると、音羽と言い争っていた瑛士が声をかけてきた。
「なんかやけに気合が入っているな。そんなことよりも、ここからどうするんだ?」
「どうするとは何のことじゃ?」
瑛士の言っている意味がわからず、顔を傾げながら聞き返すルリ。
「あのな……八階層が目的の場所なんだろ? まだ未攻略の六階層と七階層が残っているわけだが、配信を前提に考えたらある程度ペースダウンすることになるぞ?」
「あーたしかにじゃな」
話を聞いたルリが顎に手を当て、眉間にしわを寄せて考え込む。すると、近くにいた音羽が声をかける。
「二人して何を悩んでいるのよ。そんなの簡単じゃない、配信をしながら爆速で駆け抜ければ済む話でしょ?」
「それはそうなんだが、見る側にとって何が起こったのかわからないのはまずくないか? 一応攻略配信なわけだし」
「それは一般的な配信者の場合でしょ? アイツらはなんとか注目を集めようと必死だから、少しでも見せ場を作ろうとするわけ。一方ルリちゃんはすでに多数のファンと視聴者を抱えるトップクラスの配信者なのよ? すでに実力は折り紙付きだし、逆に最速攻略のほうがバズる可能性が高いわ」
「そ、そういうもんなのか?」
自信満々に話す音羽を見て、複雑な表情を浮かべる瑛士。まだ納得していない様子の彼に向かって、人差し指を突きつけながら声を上げる。
「なんでわからないかな? そうだ、瑛士くんもゲームの攻略動画とか見たりするでしょ?」
「ああ、昔遊んでいたやつとか人気のあるゲームはよくチェックするな」
「その動画を見る時、ノーミスクリアとか最速タイムアタックとかって書いてあったら思わずクリックしない?」
「たしかに……小さい時に難しくてクリアできなかったゲームとか、スーパープレイ集とかは必ず見るな」
腕を組んだ瑛士が感慨深く頷きながら答えると、口元をつり上げた音羽が嬉しそうに声を上げる。
「それよ! 視聴者は自分たちではできないスゴさを求めているの! それに……名が通った有名配信者がそれをやったらどうなると思う?」
「そりゃ当然見に行くに決まっているだろ! 有名配信者がスーパープレイをするとなれば、どんなすごいテクが……って、まさか?」
何かに気がついた瑛士が大きく口を開けていると、音羽が勝ち誇ったような顔で話しかける。
「ようやく気がついたようね。ルリちゃんが迷宮RTA配信をすると宣言すれば、大バズりするのは間違いないでしょ?」
「間違いない……まさかそこまで考えていたとは……」
音羽の話を聞いていた瑛士が感心したような顔をしていると、黙って聞いていたルリが腕を組みながら声を上げる。
「ふふふ、わらわのスゴさにようやく気がついたようじゃのう。さあ、このカリスマ配信者をもっと称えるのじゃ!」
「お前な……まあ、人気なのは認めるが……」
「ん? なんじゃ、もっと素直になっていいのじゃぞ? さあ、わらわを崇めよ、そして称えるのじゃ! そうじゃのう、特別にお布施はモーゲンダッツで許してやるのじゃ」
「結局アイスが食べたいだけじゃねーか……」
胸を張って声を上げるルリを見て、大きなため息を吐きながら項垂れる瑛士。すると、不思議そうな顔をした音羽が、二人の会話に割り込んできた。
「ところでルリちゃん。RTA攻略配信をするのは賛成なんだけど、自分たちにとっては未攻略エリアだから……ちゃんと作戦を立てないと厳しくない?」
「うむ、音羽お姉ちゃんが言うことは一理あるのじゃ。しかし、そこは抜かり無いのじゃ。ちゃんと公式が出している紹介動画や先人の攻略動画を見て、勉強してきたから大丈夫なのじゃ」
「そ、そう……大丈夫ならいいけど」
やけに自信ありげに答える様子を見て、一抹の不安を覚える音羽。
(まあたしかに攻略動画とかは少ないけど上がっているけど、どれも参考になるとは言い難いわね……)
音羽が眉間にしわを寄せて考え込んでいると、怪しげな笑みを浮かべたルリが話しかける。
「もしかして、音羽お姉ちゃんも迷宮攻略の動画を見ておったのか?」
「まあね。何が起こるかわからないし、雰囲気だけでも知っておきたいから……」
「良き心がけなのじゃ。まあ、参考になるかどうかと言われたら、疑問が残る動画が多いのも事実じゃ。しかし、わらわたちには特攻隊長がおるのを忘れておらんか?」
言い終えたルリが視線を動かすと、気がついた瑛士が怪訝な顔で口を開く。
「なんでこっちを見るんだよ……」
「ん? ご主人、もうわかっておるんじゃろ?」
「まさか……特攻隊長って……」
「他に誰がおるんじゃ? わらわのRTA配信はご主人に掛かっておるのじゃぞ! 大変名誉ある活躍の場を用意したのじゃ。思う存分実力を発揮してくれたまえなのじゃ」
「なんでそうなるんだよ! 配信のメインはお前だろうが!」
さも当然のように話すルリを見て、瑛士が抗議の声を上げる。しかし、彼女はまったく聞く耳を持たず、意味がわからないといった表情でため息を吐きながら軽くあしらっていた。
「まったく……少し考えれば分かるでしょ。まあ、そろそろ私も本気で動かないと体がなまっちゃいそうね。六階層は瑛士くんに任せて、七階層は私がやろうかしら?」
未だ猛抗議する瑛士の声が響く中、音羽は目を細めてその様子を見つめている。
「ま、変な邪魔が入らなければいいけどね……」
意味深な言葉を口にした音羽だが、彼女の予言は現実となるのか、それとも……
最後に――【神崎からのお願い】
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