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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間㉓

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閑話㉓ー2 飯島の誤算

 紀元が部下から連絡を受けていたころ、飲み物を買いに行っていた飯島がモニタールームに戻ってきた。


「ふぅ……いやな報告を聞いたから、気分転換も必要よね。まったく……公安の連中め、あれほど()()をかけておいたっていうのに、まだわかってないのかしら」


 机の上に買ってきたジュースの缶を置くと、椅子にもたれ掛かって大きな息を吐く。そして、目を細めながら考えを巡らせる。


(おそらく公安全体で動いているとは思えない……ごく一部の勢力が秘密裏に行動していると考えるほうがいいわね。そういえば……研究所があったころ、私の周辺を嗅ぎまわっていたやつがいたわ)


 飯島の脳裏にある人物の顔が思い浮かぶが、名前がどうにも思い出せない。


(顔はぼんやりと思い浮かぶんだけど、名前は……なんて言ったっけ?)


 腕を組んだ飯島がしかめっ面になると、小さく息を吐いて顔を左右に振って呟く。


「あーもういいや。どれだけ考えても思い出せないし、どうせ大した奴じゃなかったってことね。まあ、誰が嗅ぎまわろうとも私の計画を邪魔することはさせないわ!」


 宣言するように言い切ると、先ほど買ってきた飲み物に手を伸ばす。そして、プルタブの開く心地よい音がモニタールームに響くと、乾いたのどを潤すように一気に流し込む。


「ぷっはー! やっぱりもやもやしたときに飲むコーラは格別ね! ほんと、この炭酸のスカッと具合と脳に糖分が回る感じが病みつきになるのよ……あ、でも最近流行りのゼロ系はダメ。人工甘味料の甘さってちょっとくどいのよね」


 誰も聞いていない食レポを勝手に始める飯島。よほどのどが渇いていたのか、炭酸の強さなどなかったかのようにどんどん飲み進めていく。


「はぁー、だいたい紀元もよ。人が気分悪くなるような話を持ってこないでほしいわ。ただでさえめんどくさい……って、なんか変なメッセージ出てない?」


 モニターを眺めていた飯島の目に留まったのは、ある画面に映し出されていたエラーメッセージだった。


「あれは確か二号機につけたカメラだったはず……またトラブルが起きたの? ほんとめんどくさい……エラーを吐き出すまでの記録を確認しないと」


 キーボードとマウスを取り出し、慣れた手つきでログを確認し始める飯島。そして、通信が途絶えた時間を割り出すと、映像のアーカイブを再生し始める。


「はぁぁぁぁぁ! なんで肝心なところが映ってないのよ! しかも六階層にいたはずなのに、なんで四階層を探索しているの? どういうこと?」


 映し出された映像を見た飯島は理解が追い付かず、思わず大声を上げる。そして、勢いよく机を叩くとそのまま立ち上がり、モニターの中で動く二号機に向かって怒鳴りつける。


「ちょっと! 私はそんな指示出していないし、誰が動かしたのよ! なんで連絡つかないの? 誰が通信を勝手に切っていいなんて……って、これ録画映像だったわ」


 キーボードを叩きながらヒステリックに叫び続ける飯島。ふとモニターの端に表示されていた再生中の文字が目に入り、急に冷静さを取り戻すと苦笑いを浮かべて話し出す。


「もー、再生中なら再生中って言いなさいよ。まったく……こんな高画質な映像を記録できるプログラムを組んだのは誰かしら? まあ、この天才科学者である私以外には不可能でしょうけど!」


 紀元が聞いていたら頭を抱えてしまいそうな自画自賛の声を上げ、上機嫌になっていく飯島。すると、一瞬だがモニターに奇妙な影が映りこんだことを見逃さなかった。


「ん? 一瞬だけ映り込んだ影は何かしら?」


 慌てて映像を止めると、該当部分まで再生バーを戻して拡大する。すると、別の人物と思われる影が映りこんでいた。


「ふむ……この影の感じから紀元が言っていた女の子ではなさそうね……まさか瑛士くん?」


 飯島の脳裏に浮かんだのは、迷宮の攻略に来ていると聞いていた瑛士の顔だった。しかし、すぐに目を細めると顔を左右に振る。


「それはあり得ないわね。呪われた(ツイステッド)子供たち(・チルドレン)()()()()()()だけど、魔改造によって物理攻撃だけでは傷つかないし。それに……あの瑛士くんが読書魔法を自ら進んで使うとは思えないしね」


 笑みを浮かべた飯島が声を上げると、再生していた映像を止め、急に笑い始める。


「まあいいわ。誰だか知らないけど、処分する手間が省けたというわけね。さてと……試作機のデータも取れたことだし、本番機にデータを転送して私も動き始める準備をしないとね」


 マウスを操作して違うプログラムを立ち上げると、画面中央に奇妙な更新バーが現れる。


「完全に書き換わるまでは時間がかかるし、ほっといていいでしょ。それにもうすぐ紀元が来るはずね……ちょうど聞きたいこともあったし、どんな反応をするのか楽しみだわ」


 椅子にもたれ掛かると笑みがこぼれる飯島だが、この直後――彼女に思いもよらぬ悲劇が襲い掛かる……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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