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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間㉓

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閑話㉓ー1 紀元の苦悩は終わらない

 瑛士たちが五階層に到達する直前、紀元のスマホに着信が入る。


「俺だ。お前が連絡してくるなんて珍しいな、どうした?」


 電話の相手は迷宮内で作業を進めていた部下の一人だった。紀元が話し終えると同時に、慌てた様子で話し始める。


「本部長、すいません……非常にまずい()()()()が発生しまして……」

「非常にまずいって何があったんだ?」

「実は本部長から依頼された機械を運ばせていたのですが、コントローラーをどこかで失くしてしまったみたいでして……本体の操作盤があるので、問題ないと言えば問題ないんですが……」


 電話の向こうから聞こえてくる部下の悲痛な声を聞き、額に手を当てて大きなため息を吐く紀元。


「少しは落ち着け……って言っても無理だろうが。落としてしまった物は仕方がない。一応こちらから遠隔でロックはできるから、心配はするな。それにアレは素人が触っても扱える代物じゃない。赤ロムスマホと変わらんから大丈夫だ」

「そ、そうなんですね……」


 話を聞いていた部下が明らかに安堵したような声を上げる。すると、小さく息を吐いた紀元が口を開く。


「安心したところで聞くが、どこで落としたか心当たりはあるのか?」

「はい。当初は六階層の出口付近に設置していたのですが、隠し通路を使うために動かしましたので……おそらく入口か通路のどこかにあるかと思います」

「ふむ……でも、そのあたりはもう探したんだろ? フロアのどこかに落とした可能性はどうなんだ?」


 電話で報告を聞いていた紀元が顎に手を当て、思い当たる場所を挙げてみる。


「そうなんですよ。思い当たるところは探したので、六階層のフロアをいま探させています。搬入時に落とした可能性もあるかもしれないとのことでしたので、念のため下の階層も探すように指示は出していますが……向かわせた一人と連絡が付かなくなっていまして」


 部下の言葉を聞いた紀元の表情が急に険しくなり、低い声で呟く。


「下の階層に向かわせたのはマズいな……おい、どのくらい前に出発したかわかるか?」

「えっと……たしか三十分ほど前だったと思います。同行しようかと思ったのですが、一人で大丈夫と言い張るので……」


 報告を聞いた紀元は眉間にしわを寄せ、考えを巡らせる。


(一人で迷宮内を歩き回るなんて自殺行為だろ……まあ、たしかに飯島博士から作業員は()()()()()だから、社員以外は好きにさせろとは聞いているが……めんどくさいことにならないといいが。今日はアイツ等しかまだ迷宮内に入っていないが、よほど鉢合わせるようなことはないだろうし……)

「本部長? どうされましたか?」


 紀元が考え込んでいると、反応がないことに疑問を抱いた部下が声をかける。


「ああ、すまない……ちょっと考え事をしていた。まあ、戻ってこないのであれば仕方ない。ほかにやる業務が残っているのであれば、指示を出してお前はいったん戻れ」

「え? いいのですか?」

「問題ない。迷宮内で起こったことは治外法権、俺たちの心配することではない。それにそいつらの代わりはいくらでもいるからな……」


 電話口から伝えられた紀元の指示を聞き、思わず唾を飲み込む部下。


(た、たしかに迷宮内で問題が起こった場合はすぐに離脱しろと言われていたし、マニュアルにも書いてあったけど……本当にいいのだろうか?)


 何も知らずに黙々と仕事をこなす作業員を見つめ、部下が何も言えずにいると、心の内を見透かしたような声が聞こえてくる。


「どうせお前のことだから『自分一人だけ逃げていいのだろうか?』とか考えているんだろ?」

「え、あ、はい……」

「そんなことだろうと思ったが……そいつらは訳アリだ。むしろ迷宮内にいたほうが安全だから気にするな」

「そうなんですか? でも訳アリって……」

「それは聞かないほうがいい……っと、言いたいところだが、俺も詳しくは聞かされていない。まあ、触らぬ神に何とやらだ」

「わかりました……それでは、他の階層に設置した機械の動作確認の指示を出したら離脱します」


 急に明るくなった部下の声を聞いて、小さくため息を吐く紀元。


「あとは任せたぞ。また何かあったら連絡してくれ」


 通話を終えるとゆっくり目を閉じ、左右に顔を振る紀元。


(まあ、万が一低階層へ向かったやつが鉢合わせしたとしても……多少の時間稼ぎにはなるだろう。さて、これ以上問題が起こらなければいいけどな)


 考えを巡らせながら小さく息を吐き、目を開けるとゆっくり歩き始める紀元。

 しかし、彼はまだ気が付いていなかった――変に気を使った部下が、作業員に思わぬ指示を出していたということに……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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