第6話 三人の中で一番強いのは?
険しい顔をした音羽が問いかけるが、瑛士は顔を傾げたまま不思議そうに答える。
「感じるって何をだ? あからさまに人力では不可能なぶっ壊され具合から見て、明らかに魔法を使ったことはわかるが……」
「なんでわからないの? こんな低階層のモンスターが持っているような魔力じゃない気配がするのよ? どこまで鈍感なのよ……」
「キュー、キュキュキュ」
瑛士の返答を聞いてあきれたように顔を左右に振る音羽とルナ。その様子を見ていた瑛士が少し苛立ったように声を上げる。
「何も感じないんだから仕方がないだろうが! そもそも俺はいたって普通の高校生なんだよ。お前らみたいな規格外と一緒にするな!」
「はあ? 誰が規格外の化け物よ! こんなに可憐でキュートな幼馴染の女性なんてSSRクラスなのに!」
「なんでレアカードみたいな例え方するんだ? それに自分で可憐とか言うのか……なあ、ルナ。お前はどう思うんだ?」
「キュ?」
いきなり話を振られたルナが驚いたように鳴き声を上げる。すると、背中からすさまじい圧が全身にのしかかる。
「ルナちゃん? もちろんわかっているわよね?」
「ルナ、脅しに屈する必要はないんだぞ? 正直に答えるんだ」
「キュ、キュー……」
瑛士と音羽からすさまじい圧力を受け、全身の毛を逆立てながら体を震わせるルナ。どうするのが正解かわからず、固まってしまうと二人がどんどん迫ってくる。
「ルナ、どうなんだ? 俺のほうが正しいよな?」
「ちょっと、そんな怖い顔で迫ってるのよ! ルナちゃんだって正直な気持ちが話せないでしょ」
「お前こそルナを抱く腕に力が入っているんじゃないのか? 解放してやらないと可哀そうだろうが」
お互いの視線が交わると火花を散らし始める瑛士と音羽。一触即発の空気が漂い始めた時、二人の頭を叩くように一筋の風が駆け抜ける。
「イテっ」
「いたっ、なんなの?」
後頭部に走った痛みに驚いた二人が辺りを見渡すと、腕を組んで笑顔で立っているルリの姿が目に入る。そして、彼女の全身から二人とは比べ物にならないオーラが立ち上っていた。
「ご主人、音羽お姉ちゃん? そろそろルナを解放してくれんかのう?」
満面の笑みを浮かべて穏やかな口調で語るルリだが、全身から発せられる圧力は尋常ではなかった。あまりの迫力に圧倒されながらも瑛士が口を開く。
「ル、ルリ……これは違うんだ。俺たちにはどうしても譲ることの出来ない戦いが……」
「ほう? それは今すぐに決着をつける必要があるのじゃろうか?」
「そ、それは……」
あまりの圧に瑛士が言い淀んでいると、今度は音羽が話しかける。
「ルリちゃん、まずは落ち着いて話を聞いてほしいの」
「ふむ、落ち着くのは音羽お姉ちゃんのほうじゃなかろうか? わらわは質問をしておるだけじゃが?」 「えーっと……それはそうなんだけど……」
「今は三階層に起こった異変を調査することが先決ではなかろうか? それと腕の中にいるルナがぐったりしておるのじゃが?」
ルリの指摘を受けて慌てて視線を下に向けると、力なく項垂れて動かないルナの姿が目に入る。
「キャー! ルナちゃん、しっかりして!」
「キュ、キュー……」
慌てて地面に下ろすと、一筋の風が吹いてルナの体が浮き始める。そして、そのまま宙に浮かび始めるとルリの元へ運ばれて腕の中にスッポリ収まる。
「ルナもお疲れじゃったな。ゆっくり休むがよい」
「キュー」
ルリの腕に抱かれてすっかり安心したルナが丸くなる。その姿を確認すると、彼女は呆然と立ち尽くす二人に向かって口を開く。
「ご主人、音羽お姉ちゃん……そこに座るのじゃ」
「「え……」」
二人が戸惑ったような声を上げると、ルリの口調が一段と圧を増したものに変わる。
「二人ともすぐに正座するのじゃ! 聞こえんかったのか?」
「「は、はい!」」
有無を言わさない迫力に慌ててその場で正座する二人。するとルナを抱いたルリが二人の前に歩み寄り、話しかける。
「まったく……二人は隙があればすぐに喧嘩を始めるのじゃから、どうしたもんかのう? ご主人もいい加減その鈍感な感覚を何とかした方が良いのではないか?」
「……」
「音羽お姉ちゃんもじゃ。ノリが良いのは楽しくて非常によろしいが、時と場合を考えて判断すべきじゃなかろうか?」
「……おっしゃる通りです」
正論をぶつけられて何も言えずに俯く瑛士と音羽。すると、ルリが大きなため息を吐くと、短い詠唱を口にする。
「はぁ……解呪」
次の瞬間、瑛士の全身が淡い虹色の光に包まれる。何が起こったのかわからない瑛士が辺りを見渡していると、呆れた顔のルリが話しかける。
「何をキョロキョロしておるのじゃ。ご主人にかけた魔法を解除しただけじゃよ」
「そ、そうなのか? いや、また何か変な物でもかけられたかと思ってな」
「何を言っておるのじゃ? これ以上何か制約を設けてほしいのか? なんならすべての不幸が全部降りかかる魔法でもかけてやっても良いのじゃぞ?」
怪しげな笑みを浮かべたルリが語りかけると、顔を真っ青にして勢いよく左右に首を振る瑛士。
「勘弁してくれ! 迷宮の中でそれをやられたら、命がいくつあっても足りねえよ!」
「ははは! 安心するがよい、そんな魔法は存在せんからな……まあ、ちょっと魔物に好かれすぎるものはあるが」
「トラウマが蘇るからやめてくれ……」
正座したまま項垂れる瑛士を見て、満足げな顔をするルリ。しかし、すぐ険しい表情に戻ると真剣な声で話しかける。
「まあ、冗談を言っていられるのも今のうちじゃ……ここから先はご主人の魔法を封印したまま進めるほど、甘くはないようじゃ」
言い終えると三階層の出口の方へ視線を向けるルリ。
周囲に漂い始める異様な緊張感とともに、彼女は何を感じ取ったのか?
最後に――【神崎からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想やレビューもお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




