第4話 やはり瑛士とルナは天敵だった
「い、今の爆発音はなんなのじゃ?」
「三階層のほうから聞こえてきたわね……ねえ、ルナちゃん? 翠ちゃんはどっちに行くとか言っていなかった?」
真っ青な顔をした音羽がルナに問いかける。するとまっすぐ伸びていた耳が垂れ下がり、申し訳なさそうに鳴き声を上げる。
「キュ……キューキュ」
力なく項垂れて顔を横に振る様子を見た音羽が優しく頭を撫で、声をかける。
「ルナちゃんが責任を感じることじゃないわ。もしかしたらモンスター同士で何か起こったのかもしれないし……今は早く翠ちゃんを見つけることが先決よ」
「キュー、キュキュキュ」
言葉を聞いて顔を上げたルナが勢いよく地面を蹴り、音羽の胸に飛び込む。そして、全身を小刻みに震わせながら顔を押し付けると、両手で優しく抱きかかえる。
(ルナちゃんも怖いわよね。自分のせいで翠ちゃんに何かあったらと思ったら……)
未だ震え続けているルナの背中を優しく撫でていると、真剣な表情をしたルリが声をかける。
「ルナ、よく一人で頑張ったのじゃ。翠は子猫じゃから予測不能な行動をするのは仕方がないのじゃ……困ったときは一人で抱え込もうとせず、わらわたちに相談するんじゃぞ」
「キュー! キュキューキュ!」
励ましの言葉を聞いて落ち着きを取り戻したルナが顔を上げ、振り向きながら力強い鳴き声を上げる。その姿を見てルリが笑顔で答える。
「うむうむ、良い顔になったのじゃ。さてと、三階層で何があったのかわからんのじゃが、翠がやられてしまうようなことはないはずじゃ! もしかしたら寂しい想いをしておるかもしれん。一刻も早く向かうのじゃ!」
「キュー!」
ルリの宣言を聞いてルナが大きな鳴き声を上げると、音羽が小さく息を吐きながら呟く。
「ふぅ……さすがカリスマ配信者だけあるわね。言葉にこめられた意志と説得力が全然違うわ」
「ん? 音羽お姉ちゃんどうしたのじゃ? わらわの顔に何かついておるのか?」
音羽の視線に気が付いたルリが不思議そうに聞き返すと、慌てて言葉を選びながら答える。
「え? あ、いや、何でもないのよ! ちょっと考え事をしていただけだから!」
「そうなのか? まあ何でもないのであればよいのじゃ。さて……あそこでいつまでも寝ているご主人をどうにかせねばならぬ」
呆れたように呟いたルリが視線を動かした先にいたのは、気を失って地面で伸びている瑛士の姿だった。
「キュー、キュキュ!」
「なになに? 一発で目覚めさせるから任せてほしいじゃと?」
「キュー!」
音羽の腕から飛び降りたルナが両耳を立て、自信たっぷりに鳴き声を上げる。その様子を見たルリが納得したような表情で声をかける。
「ふむ。ルナができるというのであれば、任せるとするかのう」
「……任せるのはいいけど、またひと悶着起こりそうな予感しかしないわね」
胸を張って自信満々な様子のルナを見た音羽が、苦笑いを浮かべて話しかける。すると、ルリが腕を組みながら答える。
「音羽お姉ちゃんのいうことも一理あるのじゃが、あの状態のご主人を起こすにはほかに手段がないからのう……普通に声をかけただけじゃ起きないと思うのじゃ」
「あーうん、瑛士くんって割と眠りが深かったりするもんね」
未だ微動だにしない瑛士を見て、二人が顔を見合わせているとルナが再び雄叫びを上げる。
「キュー! キューキュキュ!」
「だからこそ自分の出番って言っているのね……まあ、ルナちゃんに任せるのがいいかもね」
「そうじゃのう。ルナ、嫌な役割を押し付ける様で申し訳ないが、頼んだのじゃ」
「キュー!」
大きな鳴き声を上げると、怪しげな笑みを浮かべながら瑛士のほうに振り向くルナ。その様子を見ていたルリと音羽は複雑な表情で見守っている。すると音も立てずに飛び跳ねていき、仰向けに倒れている瑛士のみぞおちに飛び乗る。そして、小さく息を吐くと急所を目がけて思いっきり噛みついた。
「ギャー!」
想像を絶する痛みが全身を駆け抜け、ばねのように身体をのけ反らせて飛び上がる瑛士。上に載っていたルナはその反動を利用して、華麗に地面へ着地する。そして、一仕事終えたといった満足げな表情で座っていた。
「あーアレは痛いわね……でも、ルナちゃんも策士よね。ちゃんと使い物になるようにピンポイントで噛みつくとは……できる!」
「ご主人は大丈夫なのじゃろうか? 見たことの無い飛び上がり方をしておるし、なんかすごくのたうち回っているのじゃが」
心配そうな表情で見つめるルリに対し、肩に手を置きながら音羽が語りかける。
「まあ、アレだけ元気があれば大丈夫でしょ。もうすぐ復活すると思うわよ。ほら、もう犯人を見つけたみたいよ」
音羽の声を聞いたルリが視線を向けると、悶絶しながら犯人であるルナを睨みつけている瑛士の姿があった。
「ルナ、てめぇ……やっていいことと悪いことがあるだろうが!」
「キュー? キュキュキュー」
「あ? なかなか起きないお前が悪いだと? 使い物にならなくなったらどうしてくれるんだよ!」
「キュ、キュキューキュ」
「その程度でダメになるなら最初からいらないだろ? だと……この畜生め、今日という今日は三途の川を渡らせてやる!」
「キューキュ、キュキュ」
「ヘタレにできるもんならやってみろ。さっさとかかって来いよ! ほう、面白い……そこを動く……って、コラッ! 逃げるな!」
瑛士がゆっくり立ち上がると、舌を出してそのまま走り去るルナ。そして、さらに煽り文句をぶつけてくる。
「キューキュ、キュキュキュ」
「あ? 待てと言われて待つバカはいねーよ。早く追いついてこいよ! だと? ふざけんな!」
怒り狂った瑛士がルナの後ろを追いかけ、勢いよく走り出す。その姿を見た音羽が口を開く。
「あーやっぱりこうなっちゃうかー」
「そんな呑気なことを言っている状況じゃないのじゃ。早く追いかけねば!」
前をいく瑛士とルナを慌てて追いかける二人。
この後、三階層に到達した一行は驚きの光景を目にすることとなる……
最後に――【神崎からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想やレビューもお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




