第11話 謎の襲撃者と意味深な言葉
「ご主人、やる気をみなぎらせておるのはいいのじゃが……さっき聞こえた咆哮じゃが……」
やる気をみなぎらせて気合を入れる瑛士に、恐る恐る声をかけるルリ。
「どうした? 今までのホーンラビットたちとは違う気迫に驚いたのか?」
「い、いやそういうことではなくてじゃのう……」
少し困ったような表情で声をかけるルリに対し、自信たっぷりな様子で答える瑛士。
「ははは、お前らしくないぞ。二階層程度のモンスターでは、張り合いもなくて退屈だったからな」 「……」
笑い声を上げながら答える瑛士を見て、何も言い返せず困ったような表情で固まるルリ。すると、今度は音羽が呆れたように声をかける。
「瑛士くん、張り切るのはいいけど……調子に乗っていると足元をすくわれるわよ。それに、あの咆哮は聞き覚えがあるし……」
「ああ、そんなことはわかっているさ。きっと変異種か何かだろうし、気合を入れて立ち向かわないとな」
「そういうことじゃないんだけど……」
まったく意に介さない瑛士を見て、額に手を当てて大きなため息を吐く音羽。すると、その様子を見ていたリスナーも、彼に同調するように盛り上がり始める。
《チャットコメント》
『おお! ご主人がやる気満々だぞ!』
『変異種を呼び寄せるとは……ただ者じゃない』
『瞬殺されないように気を付けろ。あ、ご主人がねw』
『どんな相手なんだろ? ご主人、死なない程度に頑張れw』
次々と流れるコメントを見て、瑛士が思わずツッコミを入れる。
「あ? 誰が瞬殺されるだと? ホーンラビットごときに負けてたまるか!」
スマホを握りしめ、瑛士が声を張り上げる。その様子を見ていたルリが大きなため息を吐きながら、音羽に話しかける。
「音羽おね……ミルキー先輩。ご主人は本当にわかっておらんのじゃろうか?」
「あーうん、アレは素で気が付いていないわね……」
顔を見合わせると同時に大きなため息を吐く二人。スマホを握りしめて大声で叫ぶ瑛士を見ながら、ルリが呟く。
「仮に変異種であれば負けることはないのじゃろうが……相手がアレじゃからのう。勝てるとは到底思えんのじゃ……」
「うん、まあ……魔法を使ったとしても、今の瑛士くんじゃよくて互角よね。でも、いい薬になるんじゃない? このまま飯島女史と激突しても勝ち目は薄いわけだし……」
「たしかにじゃ。そんな悠長なことを言っておる時間もないし、ちょっと痛い目にあった方が良いのかもしれん」
言い終えると再び顔を見合わせ、大きなため息を吐くルリと音羽。そして、申し合わせたかのように声を重ねて同じ言葉を吐きだす。
「「本当に頑固すぎるのは、どうにかならないのかのう(かしら)」」
「ん? どうしたんだ? 二人揃って大きなため息をついて」
二人の様子に気が付いた瑛士が声をかけると、二人が呆れたように答える。
「別に何でもないのじゃ」
「そうそう、そんなことよりもぼさっとしていると危ないわよ」
「は? 何のことを言って……イデッ!」
二人の言っている意味が分からず、瑛士が聞き返した時だった。突然後頭部に蹴られたような痛みが走り、思わず体勢を崩して膝をつく。すぐさま振り返るが、膝上ほどの草が揺れているだけで姿は見えなかった。
「……ほう、俺に気が付かれずに近づいて、後頭部を蹴り飛ばすとはな……いい度胸しているじゃねーか! 畜生の分際で!」
怒りで肩を震わせた瑛士が顔を上げると、一筋の光が円状に走る。そして、彼を中心に数メートルほどの草が一気に舞い上がる。その様子を見たリスナーが驚きの声を上げる。
《チャットコメント》
『え? いったい何が起こった?』
『一瞬で草が刈り取られた? そんなことある?』
『ご主人がすごいってほんとだったんだ……』
『これだけの実力があるのに、背後を取ったヤツ……何者だ?』
次々と流れるコメントを見て、怒り狂う瑛士と見比べたルリが思わず呟く。
「配信的にはありがたいのじゃが……もうちょっと冷静に物事を見れんもんかのう」
「そうね……でも、あの感じだともしかして気がついているかも?」
呆れたように話すルリの言葉を聞いて、音羽が意味深な言葉を投げかける。そんな二人の言葉など聞こえていない瑛士は、辺りを見渡して血眼で標的を探し続ける。
「クソッ……こんなに早くいなくなるわけがない。落ち着け……きっとヤツはまだ近くに潜んでいるはずだ」
自分に言い聞かせるように呟くと、瑛士は大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻し始める。そしてゆっくり目を閉じて、意識を集中させた時だった。わずかに前方から草がこすれるような音が聞こえた。
「見つけたぞ! そこだ!」
声を上げると同時に目を開き、音のした草むらに向かって短剣を投げつける。すると、金属がぶつかり合う音が響いた次の瞬間、瑛士に向かって何者かが飛び出してきた。
「おっと、あぶねぇ……」
瑛士の喉元を狙って飛び出した影を紙一重で避けると、首筋にうっすらと赤い線が走る。そして襲撃してきたヤツは、その勢いのまま反対側の草むらに飛び込んで姿を消す。
「すばしっこいヤツだ……でも、同じ攻撃は二度と喰らわない!」
飛び込んだ先の草むらを睨みつけながら、瑛士が声を上げる。
未だ姿を見せぬ、謎の襲撃者との決着の行方はいかに?
最後に――【神崎からのお願い】
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