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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑳

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閑話⑳ー5 隠されていた個体

 資料室から飛び出し、悲鳴を上げて廊下を駆け抜けていった雫。そんな様子を見ていた人物が声をかけるが、パニックを起こした彼女に届くことはなかった。


「あ、ちょっと待って……って、聞こえてないか」


 薄暗い廊下の奥から姿を現したのは、白衣に身を包んだ飯島だった。


「一体どうしたのかしら? 資料室の解錠と書類の回収を頼んだだけなのに、そんな驚くようなことでもあったかしら?」


 彼女の走り去った方へ視線を向けるが、奥の方は暗闇に包まれて姿を確認することはできない。しばらく見つめていた飯島だが、顔を小さく左右に振ると、ゆっくり目を閉じて語りかけるように口を開く。


「この部屋だけやけに厳重なセキュリティをかけていたようだし、何か変なものが隠されていたとしても不思議じゃないわね。本当は何が起こったのかじっくり聞きたかったのだけど……本人がいなくなっちゃったら仕方ないわね」


 小さく息を吐くと、ゆっくり目を開け、資料室の中に目を向けた時だった。


「……グルルル、グァ!」


 部屋の中から獣のうめき声のような叫びが響いてきた。その声を聞いた飯島は不敵な笑みを浮かべ、目を細めながら呟く。


「あら? ずいぶん()()()()()()()がいるみたいね。ちょうど良かったわ……使い物になればいいんだけど」


 はやる気持ちを押さえながら資料室に足を踏み入れると、声の主を探して歩きはじめる。そして、しばらく奥に進んだところで、厳重に梱包された木箱を見つける。


「資料室には似合わない代物ね……いったい何が入っているのかしら?」


 飯島が不思議そうに木箱を覗き込んだ時だった。


「……グルルル、グァ!」

「わ、ビックリした! 中に何かいるみたいね?」


 突然木箱が揺れ、中から威嚇するような鳴き声が響く。その様子を見て、ますます興味を持った飯島が箱に手をかけようとした時だった。周囲に水色のオーラが出現すると、まるで彼女を閉じ込めるように包み込んでいく。そして、何かが砕けるような音が響き、箱の中から何かが勢いよく飛び出す。


「あらあら、ずいぶん威勢がいいみたいね。何が飛び出してきたのかしら?」


 笑みを浮かべた飯島が飛び出していった先に視線を向ける。すると、棚の上から見下ろしていたのは、ワシと犬を掛け合わせたようなモンスターだった。


「へえ、ずいぶん珍しい個体を隠していたのね。でも、どうやってこんなモンスターを捕まえたのかしら?」

「グルルル……」


 唸り声を上げながら威嚇してくる様子を見て、感心したように声を上げる。その様子がよほど気に入らなかったのか、咆哮のような鳴き声を響かせるモンスター。


「ギャアアアアア」

「はいはい、わかったわ。鳴き喚くことしかできないなんて、ずいぶん低俗な個体みたいね」

「グルアアア!」


 飯島の呟きが理解できたのか、さらに大きな鳴き声を上げて威嚇し始めるモンスター。そして、狙いを定めると、棚の上から彼女めがけて急降下し始める。


「やれやれ……もうちょっということを聞きそうなら、私の実験コレクションに加えてあげても良かったけど……」


 腕を組んだ飯島が大きなため息を吐くと同時に、モンスターが頭を目がけて突っ込む。その勢いのまま彼女の頭部を貫いた時だった。たしかに仕留めたはずの相手の姿が揺らぎ、霧散していったのだ。その様子を見たモンスターが困惑していると、室内に声が響く。


「はぁ……やっぱり使えないわ。目障りだから早く消えて頂戴」

「グルアア……」


 モンスターが声の主を探そうとした時だった。鳴き声を上げる暇なく、全身が十字に切り刻まれてその場に崩れ落ちる。そして、水色のオーラが消え始めると、室内に血生臭い匂いが漂い始める。すると、棚の影から呆れた顔をした飯島が姿を現す。


「どうしてモンスターって低能なヤツしかいないのかしら? まったく実験体にもならないし、ほんと使い物にならないわね。やっぱり()()()じゃダメなのかしら……」


 床に広がる血だまりを見つめながら呟いた時だった。彼女のスマホに通知音が鳴り響くと同時に地震のような振動が襲いかかる。


「ちょっと! いったい何が起こったのよ? 地震?」


 慌ててスマホを取り出して画面を見ると、彼女の目が大きく見開かれる。そして、顔を天井に向けると大声で笑い始める。


「あはは! さっきの振動はそういうことだったのね! 出来損ないを処分する手間が省けたわ……」


 画面に表示されていたのは、呪われた(ツイステッド)子供たち(・チルドレン)の一人に起こった異常信号を知らせる通知と、反応が途絶えた警告だった。


「まだまだ改良が必要なようね……でも、私の自信作を破壊するなんてやるじゃない。まあ……次は無いと思うけど」


 不敵な笑みを浮かべると、資料室の出口に向かって歩き始める飯島。


「さてと……破壊された個体のデータ解析もしないといけないけど、まずは現状確認かしら。紀元に見つからないように見に行かないとね。ちょっと予定も狂ったけど、まあ大丈夫でしょ」


 笑い声を上げ、満足げな表情で資料室を後にする飯島。

 しかし、彼女は気が付いていなかった――わずかに狂い始めたほころびが、後に首を絞めることになろうとは……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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