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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
幕間⑳

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閑話⑳ー4 資料室と謎の唸り声

 従業員控室から姿を消した雫は、迷宮内にある薄暗い廊下を歩いていた。


「ふぅ……こんな辛気臭い場所に、博士の()()()が本当にあるのかしら?」


 小さくため息を吐くと、辺りを見渡して呟く雫。視界に映るのは岩を削りだしたような壁が広がり、壁には松明のような照明が等間隔に配置された廊下だった。お世辞にも明るいとはいえず、数メートル先には闇が広がっている。


「こんな設備を作る暇があるなら、もうちょっと照明とかにもお金をかければいいものを……ほんと前の管理団体って銭ゲバだったのね」


 薄暗い廊下を歩き始めた雫だが、よほど気に入らないのか文句が止まらなくなる。


「だいたい今でこそ見れるようになった一階層だって、ろくに整備もされてないってどういうこと? たしかに観光客を入れるような場所じゃないのはわかるけど、働く人のことを何も考えてないし。トイレだって数も少なければ、掃除も適当だったし……ほんとありえない! 休憩コーナーだって自販機があるだけとか意味が分からなかったわ。あんな状態でアピールしろって方が無理だっての」


 頬を膨らませながら呟く彼女の怒りが、次第に紀元へも向かい始める。


「そもそも責任者でもある悟兄さんもよ! 忙しいかもしれないけど、もうちょっと広報の重要さを理解してほしいわ。せっかく非日常の空間を体験できるんだから、大々的にアピールすべき……っと、たしかこの辺りじゃなかったっけ?」


 通路を歩いていた雫が立ち止まったのは、重厚な鉄でできた扉の前だった。岩に囲まれた壁の中に現れた扉は、薄暗い照明のせいもあり、異様なオーラを醸し出していた。


「えっと……たしかロックを解除しないといけなかったのよね」


 扉の前に立った彼女はスマホを取り出すと、いくつかのアプリを立ち上げ始める。


「ちょっと面倒なのよね……無駄にセキュリティーを何重にもかけやがったから。まあ、私にかかれば数分で突破できるけど」


 不敵な笑みを浮かべた彼女が操作しはじめて数分が経過した時、扉の中から鍵が開くような音が響く。


「ふう……これでよしっと。まったく変に素人がプログラムをいじるから、ちょっと面倒くさかったわ」


 文句を言いながら扉に手をかざすと、音を立てながら勝手に動き始める。そして、暗闇が広がる空間が現れると、手前から奥に向かって順に明かりが灯り始める。


「……いや、そんな機能は誰も求めてないし!」


 無駄に凝った演出に思わずツッコミを入れる雫。ここに来たのが紀元のような男性であれば、テンションが爆上がりして歓喜していたのかもしれないが……


「ほんと意味が分からないわ……たかだか資料室ごときに演出なんて必要ないし、むしろ探索者が歩くほうに使えっての! あーもう、頭が痛くなってきた……さっさと頼まれた資料を探して帰らないと」


 額に左手を当てて大きくため息を吐き、左右に軽く頭を振って顔を上げる。そして、資料室の中に一歩踏み入れると、かび臭い匂いが鼻を突く。


「……くっさ……ほんと最悪だわ。掃除くらいしておきなさいよ……ほんと博士のお願いだから来たけど、悟兄さんを連れてこればよかったわ」


 ブツブツ文句を言いながらも足を進める雫。室内はどこにでもあるような資料棚が等間隔で並び、段ボールや書類が乱雑に置かれていた。そして、少し奥に進んだところに積まれていたファイルの前で足を止める。


「えっと、たしかこのファイルよね?」


 スマホをタップし、飯島から送られてきた画像と照らし合わせる。そして、彼女がファイルを手に取って立ち去ろうとした時だった。


「グルルルル……」


 突然、部屋の奥の方から唸るような声が聞こえてきた。


「え? 何かいるの?」


 驚いた彼女が辺りを見渡しながら声を上げるが、何かがいるような姿や気配は感じ取れない。


「き、気のせいよね? こんな薄気味悪いところ、さっさと抜け出した方が……」

「……グルルル、グァ!」

「ひっ!」


 再びうめき声のような叫びが響き渡ると、真っ青な顔をした雫はファイルを抱えたまま部屋を飛び出していった。恐怖でパニックになっており、通路の奥から彼女を呼ぶ声がしていたことに全く気が付いていなかった。


「あーあ、行っちゃった……伝え忘れたことがあったから待っていたのに。仕方ないわね」


 この人物は暗闇に消えていく姿を見ながら、ため息を吐くと、雫が飛び出していった資料室の前に立って呟く。


「さてと、彼女のおかげでセキュリティも破れたみたいだわ。ほんとアイツ等は……いなくなる前に解除しておけって話よね。まあ、頼んでいた資料は回収してもらえたし、あとは本来の目的を果たすだけね」


 不敵な笑みを浮かべると、煌々と明かりが灯る資料室の中に入っていく。

 雫の後を追うように現れた人物の目的とは――?

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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