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ラストリモート〜失われし読書魔法(リーディング・マジック)と金髪幼女で挑む迷宮配信〜  作者: 神崎 ライ
第二十章 狭まる包囲網

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第9話 カウントダウン

「あ、ルリ様。今思い出したのですが、謎の少年と遭遇した時に奇妙なことを言っていまして……」

「なんじゃ? カリスマであるわらわに話してみるがよい!」


 ルリが問いかけると男性が腕を組み、顔を傾げながら話し始める。


「謎の少年を見つけた時に呟いていたことなんです。よく聞こえなかったのですが……迷宮内に何かを仕掛けるとか言っていた気がするんです」


 言葉を聞き、瑛士と音羽の表情が一気に険しくなる。


「瑛士くん、聞いた?」

「ああ、もしかしたら……彼が閉じ込められた理由も説明がつくな」


 険しい顔をした二人が顔を見合わせ、呟く瑛士と音羽。二人の様子を見た男性が、不思議そうな顔で問いかける。


「ど、どうされたのでしょう? 自分が閉じ込められた理由が何か関係しているのですか?」

「ええ、あまり大きな声では言えませんが……おそらく聞かれたらまずい内容であったのは、間違いなさそうですね」

「聞かれたらまずいことですか?」


 瑛士の言っている意味がわからず、男性が首を傾げていると、真剣な表情をした音羽が話しかける。


「何のことかさっぱりわからないと思いますが……これ以上踏み込まないほうが良いと言っておきます。おそらく想像しているより、もっと深い闇が待ち受けてますし……」

「なるほど……わかりました。自分はこれ以上は踏み込みません……」


 あまりの迫力に圧され、小さく頷くと絞り出すように声を上げる男性。そして、なんとも言えない沈黙が室内に流れ始めた時だった。


「あーもう、この話は終わりなのじゃ。四人で話していても埒が明かぬし、何を仕掛けられておろうともわらわにとっては関係ないのじゃ!」

「ルリの言う通りだな。机上の空論を話し合っていたとして、何が起こるか予測できないのが迷宮だ。たとえ罠が仕掛けられたとしても、上手く作動するような保証はどこにもない」


 沈黙を破るようにルリが声を上げると、瑛士が同意するように言葉を続ける。二人の言葉を聞いていた音羽が小さく息を吐き、左右に顔を振ると話し出す。


「もう、いいところを二人に持っていかれちゃったわ……そうね、私たちならなんとでもなるわね。たとえ罠であったとしても」

「そうなのじゃ! わらわたちに不可能など無いのじゃ!」


 胸を張って声高々にルリが宣言すると、瑛士と音羽の表情も少し優しいものに変わる。二人の様子を見た彼女は、豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして固まっている男性に声を掛ける。


「ま、そういうことじゃ。お主はいつも通りわらわの配信を楽しみに待っておるのじゃな」

「え、あ、はい! たとえ業務中であろうとリアルタイムで拝聴いたします!」

「うむ! いい心がけなのじゃ!」

「いや、そこは業務に専念しろっていうところだろうが……」


 迷いなくサボりを推奨するルリと男性に対し、思わずツッコミを入れる瑛士。額に手を当てて呆れていると、音羽が右肩に手を添えながら話しかけて来る。


「瑛士くん、気持ちはわかるわ……だけど、時には仕事なんかより優先しなければいけないこともあるのよ」

「……それは社会人としていいのか」

「そもそも、瑛士くんは学生でしょ? 彼に言える立場じゃないと思うわ」

「いや、それはお前も同じだろうが……」


 深く頷きながら語りかける音羽に対し、思わず心の声が漏れてしまう瑛士。すると彼女から突き刺さるような視線が向けられる。


「そうね……だけど、瑛士くんも()()()()()()()()()だっけ?」

「どういう意味だ? 別にやましいことなんて……」

「え? この間、モリライブという二次元にドハマりしていたのは、どこのどなたでしたっけ?」

「……」


 鋭い一言が突き刺さり、額から汗が流れ落ちる瑛士。そんな彼の様子を気に留めること無く、音羽は話を続ける。

「私が頼んでいた用事もすっぽかされたし、コソコソ課金もしていたもんね。それになぜか見覚えのない荷物が届くようになるし……」

「いや、それは、その……すっぽかしたのはたまたまで……」

「たまたまですって? 推しの配信は忘れないのにね~」


 どんどん墓穴を掘る状況に陥り、助けを求めようとルリの方を見た時だった。


「ん? どうしたのじゃ? ずいぶん顔色が悪いぞ」

「いや、いろいろあってだな……ちょっと助けて……」


「そんなことはどうでもいいのじゃ。二人とも取り込み中のところ申し訳ないのじゃが、もうそろそろここから出なければならぬそうじゃ。なんでも時間が決まっておるみたいでな」

「そ、そうなのか! それは一大事だ!」

(た、助かった……ルリ、ナイスアシスト!)


 ルリの話を聞いて、瑛士の表情が一気に明るくなる。そして、鋭い視線を向けている音羽に対し、声を掛ける。


「音羽、時間切れのようだから、またあとでゆっくり話そうじゃないか」

「……まあ、仕方ないわね」


 言葉を聞いた音羽があっさり引き下がった事に対し、わけがわからなくなる瑛士。


(あれ……素直に引き下がるなんてどういう風の吹き回しなんだ? まあ、このまま有耶無耶にしてしまえば……)

「……有耶無耶にしようなんて考えてないわよね? まあ、時間はたくさんあるから……じっくり話し合いましょうね」


 瑛士の耳に彼女の囁きが聞こえると、背中に冷たい汗が流れ落ちる。慌てて周囲を確認すると、いつの間にか部屋の外に出た音羽とルリが手を振りながら呼んでいた。


「おーい、ご主人。何をしておるのじゃ? 早くするのじゃ!」

「いつの間に? ちょっとまってくれ」


 瑛士が返事を返すと、まだ部屋の中にいた男性に声を掛ける。


「ルリも呼んでますし、一緒に行きませんか?」

「いえ、自分は戸締まりと確認がありますので……お気遣いありがとうございます」

「そうですか。それでは先に失礼します」


 頭を下げると、外で待つ二人のもとに駆け寄っていく瑛士。そして、扉が閉まる音が聞こえ、静寂が訪れると不気味な声が室内に響き渡る。


「……対象と接触完了しました。これより録音データの確認を行います」


 静まり返る室内に何かを操作する機械音が聞こえ始める。そして数分が経過した頃、突然甲高い金属音が室内に響く。


「ろ、録音データの転送失敗とデータ破損を確認……し、深刻なダメージにより修復不可能……自己防衛反応により本体の消去を実行……」


 壊れた機械音声が響くと同時に室内が閃光に包まれた。そして、爆発音とともに熱風が吹き荒れ、跡形もなくなるほど激しい爆発が起こる。迷宮や地面を揺らすほどの衝撃が走り、気がついた人々が徐々に集まり始めた時だった。その様子を少し離れた位置から見つめる人影が一人……


 この件はニュースや新聞でも大きく取り上げられたが、後に起こる大事件の始まりだったと――気がつく者は誰もいなかった。

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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