第8話 謎の生物の正体とは?
「ちょっと信じられない話ですが……動物の鳴き声を聞いて飛び起きたんです。低く唸るような声で……暗かったのと影しか見えなかったのですが、長い耳をしたような姿でした。鳴き声がギュアァァァって感じで」
「長い耳にその低い唸り声……なんか聞き覚えがあるような……」
返答を聞いた瑛士が考えを巡らすと、何か思い当たる節があるのか男性に聞き返す。
「あなたが見たのは長い耳の影だけでしょうか? 他にはいませんでした?」
「良く見えていなかったのですが……振り返った時に猫のようなシルエットを見たような気がしますね……」
「ま、まさか……」
瑛士の脳裏にある存在が浮かび上がる。嫌な予感がして、男性に問いかけようとした時だった。
「話は聞かせてもらったのじゃ」
静かに話を聞いていたルリが、腕を組みながら話に割って入る。
「長い耳をした猫のような動物とは……迷宮にはわらわが知らないモンスターが、潜んでおるようじゃな」
大きく頷きながら話すルリを見て、少し困ったような表情で話しかける男性。
「ルリ様、すいません……何か大変な誤解をさせてしまったようでして」
「何の話じゃ? お主も大変じゃったのう……未知の生物に遭遇して怖かったと思うのじゃ」
「ええ、まあ……でも言われてみればそうなのかもですね」
「そうじゃぞ。常識が通用しない迷宮なのじゃ。わらわたちもいつ遭遇するかわからん……一層気を引き締めていかねば……」
もっともらしい言葉でルリが会話を締めようとした時、黙っていた瑛士が口を開く。
「お前はアホか! 勝手に割り込んで来やがって!」
「む? アホとはなんじゃ! せっかくわらわが良き話をしておるというのに」
「だーかーら、ちゃんと人の話を聞けよ! 長い耳をした生物と猫のようなシルエットは別の動物だろうが」
瑛士の絶叫を聞き、ルリが目を見開いて驚きの声を上げる。
「な、なんじゃと! 別々の生き物が存在するとは……」
「当たり前だろうが! なんで二匹を一緒にするんだよ」
「言われてみればそうなのじゃ……」
落ち着きを取り戻し始めたルリが、真剣な表情で瑛士に語りかける。
「しかし、ご主人よ。ここは迷宮じゃぞ? 何が起こってもおかしくないのじゃ」
「まあそうだな。だけど、今回の件はお前も良く知っていると思うぞ」
「良く知っているじゃと? いやいや、何を言っておるのじゃ。いくらわらわが博識でも、耳が長くて唸り声を上げるような猫は見たことがないのじゃ。しかも二匹もいるとなると……」
「なんでそうなるんだよ!」
腕を組んだルリが真剣な表情で呟くと、思わず大声でツッコむ瑛士。
「どう考えたらごちゃ混ぜにしたのが、二匹いることになるんだよ! そんな物騒な鳴き声を上げる奴なんてルナ以外にいないだろうが!」
「な、なんじゃと! あんなかわいいルナが、そんな恐ろしい鳴き声を出すはずがないのじゃ!」
「アイツのどこがかわいいんだ? ホーンラビットより凶暴だと思うぞ……」
ショックを受けたような表情を浮かべるルリに対し、額に手を当てて大きなため息を吐く瑛士。すると、黙って話を聞いていた音羽が口を開く。
「瑛士くんがいう説も一理あるわね。言われてみればルナちゃんと翠ちゃんの姿が見えないし」
「おお、そういえばそうじゃった。二匹が退屈そうにしておったから、近くで遊ばせておったのを忘れていたのじゃ」
「そうだったのね。まあ、あの二匹なら何の心配もいらないわね」
ルリの話を聞いて納得したような表情を浮かべ、大きく頷く音羽。すると、瑛士のほうへ向き直り、声をかける。
「たぶん瑛士くんが立てた仮説が正しいと私も思うわ。でも……ルナちゃんがそんな凶暴な声を上げるのはちょっと考えられないわね」
「……いや、翠はともかくルナは凶暴だぞ……」
「そんなことないと思うけど? 瑛士くんの接し方とか、普段の行いが招いたことじゃないの?」
「どういう意味だよ……」
音羽の話を聞いた瑛士が苛立ったように聞き返す。すると彼女は大きく息を吐き、呆れたように答える。
「そりゃ普段から敵対するようなことばかりしてるからじゃない? もっと寛大な心で優しく撫でてあげるとかしてみたら?」
「あのな……以前、餌をやろうとしたら思いっきり噛みつかれたんだぞ……」
「それは瑛士くんがなかなかあげなかったからでしょ? あのね、わかってると思うけど、ルナちゃんはすごく頭が良いのよ? それに食べ物の恨みは……怖いってわかってるでしょ」
「……」
思い当たる節が多すぎて何も言い返せない瑛士。そんな彼を無視してルリに向き直り、声をかける。
「ルリちゃん、彼を助けたのはルナちゃんたちだと思うわ。どうやったのかはわからないけど……」
「ふむ、それなら納得じゃ」
音羽の言葉を聞いたルリは、すっきりしたような顔で答える。三人の会話を聞いていた男性が不思議そうな顔で話しかける。
「えーっと、何が何だかわからないのですが……ルリ様たちのお仲間が助けて下さったということで、間違いないのでしょうか?」
「うむ。わらわの大切なパートナーがお主を助けたのじゃ!」
「な、なんと……ルリ様に心も体も助けられるとは……」
ルリの返答を聞いて感激した男性が、涙を流して声を上げる。
この直後、再び瑛士たちに緊張が走ることになるとは――誰も予想していなかった。
最後に――【神崎からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想やレビューもお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




