宝探し
「これもダメか…。」
手に持った服はボロボロと崩れていった。
僕は、数十分間服を探し回った。しかし、まともな服が全然見つからない。
どの服も長い年月放置されていた為、埃や、砂にまみれており、風化して使い物にならないのだ。
「けほっ。もう埃っぽいなぁ。本当にこんなボロデパートに使えるものがあるのかな。
次の店に行こ…。」
廃墟の中を探し回るのは思ったよりも大変だ。なんせ数十年も人の手が入っていない場所だ。汚いし、ものが散乱している。
歩き回るだけもかなり体力を使う。
「次はここにするか。」
ショーケースに飾られていた立派なドレスを見て興味を惹かれた僕は、少し高級感のある店の中へと入っていった。
キィと軋む音を鳴らして扉が開く。
「お。ここは割と埃っぽくないな。」
1つ店の前に扉があったのが良かったのか、この店は割と綺麗な状態で残っていた。
店名はBridal TaNaKaと書いてある。
「ブライダル田中?なんか田中のスペルにこだわりを感じるな…。そういえばブライダルってなんの事だっけ?」
何となく聞いたことがあるような気がするが、思い出せない。
まぁ、いいか。そう思い直し、物色の作業に取り掛かる。
この店で3件目。もうこ慣れたものだ。
外に置いてあるものは基本的にもうダメになってるものが多い。よって、探すのは箱や倉庫とかに置いてあるまだ外に出していない商品だ。
展示してある立派なドレスには目もくれず、お店ごとにある小さなバックヤードへと歩を進める。
僕はそこで大きな箱を見つけた。埃を払ってみると、かすれた文字で予約品との記載がある。
僕はその箱を開けてみた。
…僕はこれを見たことがある気がする。
服を取り出して少し眺める。とても大きくて真っ白な服だ。
「綺麗…。」
無意識に言葉を発していた。
「お、ウェディングドレスじゃないか。ミチ。それにするのか?」
唐突に後ろから聞こえる声。
「うわっ!!なっ!カイ!脅かさないでよ!」
「ははっ!ごめんごめん。店の外からなんかうっとりしてるミチが見えたからさ。」
「それなら声掛けてよ!びっくりしたじゃん!」
「まぁ、驚かせるのが目的だったからな。」
ケラケラと笑うカイ。
「ところで、それ着ないの?」
「え?なんで?」
「いやぁ。すごくキラキラした目で見てたからさ。なんか興味あるのかなー。とか思って。」
「まぁ、そりゃあ興味はあるよ。だって凄く綺麗だったから。これを着た人はさぞかし幸せなんだろうなぁ。とか思ってさ。」
「女性の憧れって言うらしいからな。着ることができる人でも一生に一度しか着ることのない服だ。」
「へぇ。そうなんだ。」
「え?ミチ知らないの?」
「うん。初めて聞いたよ。」
「それは驚いた。一度くらい見たことあるだろ?」
カイは本当に意外そうな顔をしていった。
「うーん。どうなんだろ。僕は自分の性別すら覚えていなかったから、わからないな。」
「まぁ、確かにそうだな。
ところで、いい服は見つかったか?
俺はもう三着ほど、ミチに合いそうな服を見つけたぞ。」
カイはドヤ顔で言う。
「え?本当に!僕まだ全然見つけられてないのに!」
「へぇ。まだ全然見つけてないのか。
この勝負貰ったな。」
「ま、まだだよ!取り敢えず1つは見つけたし!」
「廃墟にそんなドレスを着て歩けるのならそれでも良いけどな。」
ニヤニヤしながらカイが煽ってくる。
「じゃあ、あと10分したらエレベーターの前に集合な。俺は時計を持ってるから時間になったら合図するよ。」
カイが見せてきた大きめな文字盤の腕時計は17時15分を指している。
「え!あと十分だけ?もう少し時間ちょうだいよ!」
「もう充分探したろ?あんまり時間を掛けると夜になっちまうからな。この辺りの街灯は殆ど壊れてるから暗くなる前に家まで戻れが鉄則だ。
明かりのない夜道を歩いて怪我するのはごめんだからな。」
「うー。わかったよ。…カイのケチ。
カイの癖に正論言うなんて…。」
「ふふ。言い負かせる物ならやってみたまえ!
できるものならな!」
勝ち誇った顔がやたらと腹立つな。
「うう。わかったよ。危険なのは避けたいし…。」
僕はカイの正論に巻かれ、しぶしぶ了承した。
「わかったらよし!」
浮かない顔でお店から出る。
急いで次のお店を探さないと!
◆
そして、運命の十分後。
「もうダメだ!ミチ諦めろ!」
「待って!もう少し…。」
「ぶーっ!時間切れです。ほら。時計見てみ」
時計の針はすでに17時35分を指していた。
「10分も猶予をあげたんだから諦めろよ。」
「うう…。わかったよ。」
僕は落胆の表情を浮かべてカイの方へと歩いて行った。
その後僕は必死で服を探して見つけることができたのは自分の理想とは程遠いものだった。
見つけた服はドレスを除くと全部で二セット。
1つはヤンキーチックなスカジャンとダメージジーンズのセット。背中で睨みをきかしている龍が厳つい。ジーンズの方も中々のダメージっぷりだ。
すでに元からの傷なのか狙ってつけているのかわからない。
一応サイズ感はぴったりだが、僕の心が叫んでいる。うん。これ、きっと僕の趣味じゃ無い。
そして、もう一つは寝間着だった。所謂パジャマというやつだ。しかし、僕が見つけてしまったのは普通のパジャマでは無かった。
なんだこのスケスケのパジャマ…。こんなのカイに見せたら変な気を起こしそうで怖い。
見た感じ寝間着で間違いなさそうだが、透けており今の僕がそのままきたらとんでもない事になってしまう。
カイには見つけなかった事にしよう…。
「じゃあ結果発表といこうじゃ無いか。」
そう言ったカイの前には試着室があった。
既にカーテンはボロボロで役割を果たしていなかったが、カイが代わりの布で応急処置を施したようだ。
雑だがちゃんと見えないようにしてくれている。
「じゃあ取り敢えずミチが先行な。
見つけた服の中で一番気に入った服を着てみてくれ。」
「わかったよ。」
カイにそう告げ、試着室の中に入る。
試着室の正面には鏡があった。
何故か埃にまみれておらず、とても綺麗な状態だ。
そこには初めて見る自分の姿があった。
髪の毛は長すぎず短すぎない。しかし、一目で女とわかるくらいの髪の長さだ。
服装はもちろんカイにもらった男物のシャツ…。だけを着ているように見える。
「うわ…。これは思ったより無いな…。
殆ど痴女じゃないか…。」
自分の格好に衝撃を受けた僕は、すぐさま袋の中に入れていたスカジャンとダメージジーンズを袋から出し、今着ている服を着替え始めた。
男物のシャツを脱ぐと、冷房効いたフロアにいたおかげで既に汗が引いていたようでもう服は避けていなかった。
また着ていたティーシャツの上からスカジャンを羽織り短パンを脱ぐ。
そこである事に気がつく。
「…なんで僕パンツ履いてないの?」
鏡越しに見た僕は下に何も履いてなかった。
まさか昔の僕はノーパン主義者だったとでも言うのか…。いや、まさかね。
そんな事を考えながらダメージジーンズを履く。
…なんだかチクチクするな…。記憶が無くなる以前の自分がどうだったのかは不明だが、今の僕にはこの服は合わない。着替えてすぐそう思った。
なんだかこれでは無い感が凄い。
「まぁ、無いよりましか…。でも外に出ると暑いんだろうなぁ。」
カーテン越しにカイに話しかける。
「カイー着替えたよー。」
「おう。それじゃあ!出てきてくれ。」
「はいはい。」
シャッとカーテンを開くと、カイがニヤニヤしながら立っていた。
「どう?」
「ははっ!柄悪いな。」
カイは少し吹き出して言った。
「悪かったな!これしか見つけられなかったんだよ!」
「まぁ、でも悪くは無いと思うよ。ミチの大人しそうな顔にそのスカジャンはなかなかギャップがある。
俗に言うギャップ萌えってやつだな。しかも、それを選んだのが本人だというのがなかなかポイント高いな。」
「またカイが変なこと言ってる…。」
「ふふ。紳士な発言をしていると言ってくれ。」
「そんな紳士がいてたまるか。」
カイはケラケラと笑っている。カイは一通り笑い終えると、話し出した。
「じゃあ次は俺の番な!ミチ。これを着てくれ。」
そう言ってカイが取り出したものは…。




