陽光(ようこう)デパート
カイに連れられて少し不気味なデパート内部を進んでいく。先程カイが言っていた通り、二階の電気系統は生きているようで、動かないエスカレーターの上の方から光が差している。
動かないエスカレーターを登り始めると冷んやりした空気が漂って来た。
「あっ!ほんとに電気がついてる。しかも、冷房も効いてるじゃん!」
「いいだろ!ここもこの近くの休憩スポットの1つなんだ!今の季節はやたらと暑いからこう言う場所は覚えていて損はないぞ。」
「え?どうして?」
「何かが原因で俺とはぐれてしまう事もあるかもしれないだろ?そんな時のために逃げ場所はいくつあっても困らないからな」
「そっか。そうだよね。ありがと。覚えとくよ。」
僕は素直にカイに礼を言った。
エスカレーターを登り終えるとカイが振り向いて話しかけてくる。
「なんかやけに素直だな。」
「僕はいつも素直だよ。」
「そうか?俺は「偉そうなこと言うなよ」とかそんな言葉が返ってくるかと思ってたんだけどな。」
そう言って彼はぷくくと含み笑いをした。
「カイ。君は僕のことをどう思ってるの?」
少し怒気を強めて言う。
「ん?そうだなー。強いて言うなら少しお転婆で高飛車な僕っ子かなー。あと世間知らず。」
なんだか妙な答えに怒る気が無くなってしまった。
「なんだよそれ。しかも僕っ子って…。
…そう言えば。」
「どうした?ミチ」
カイの言葉を聞いて、ふと疑問に思う。どうして今まで疑問に思わなかったのか不思議だ。
「なんで僕は自分の事を僕って言ってるんだろ。」
「まぁ、確かに女の子にしては珍しい一人称だよな。普通は男が使うもんだ。」
「僕って女だよね?」
そう言ってカイに両手を広げて見せてみる。
カイはニヤッと笑った。
「まずはその服を脱いでみなさい。おじさんが確認してあげよう。」
カイが手をワキワキさせながら近づいてくる。
「触るな変態。」
僕反射的に胸を手で隠して冷たく言った。
「傷つくわー。
まぁ、ミチは間違いなく女の子だよ。
俺が言うんだから間違いない。」
「そう…。だよね?」
なぜか僕は自分の性別に自信がない。理由はわからないけど。
「あの小さな膨らみはただの脂肪ではない…。男の夢と希望が詰まった偉大な膨らみなのさ…。」
「なんでカイはいちいちキモいの?」
「俺は正直者だからな。自分に嘘はつけないのさ。」
「こんなに不埒な正直者は初めて見たよ。」
「ははっ。褒めるなよ!」
「褒めてない!」
◆
「さぁ。とりあえず女物の服を探すかぁ。
ミチ。スリーサイズ教えて!」
息を吐くようにセクハラをしてくるカイの肩をパシンと叩くと「黙れ変態。」と罵ってやった。
「ふう。容赦ないなぁ。」
「どう考えてもそっちが悪いでしょ。」
「まあな。」
そう楽しそうに言うカイ。
…悪気がなさそうなのがたち悪いなぁ。
エスカレートする前にどこかで釘を刺しとかないと。
「よし。じゃあゲームでもしよう!このフロアで一番ミチが気に入りそうな服を見つけた方が勝ちだ!」
「僕に似合いそうって…。それって僕のさじ加減じゃない?」
「そうだな。でも、俺が見つけた服の方がミチが気にいるかもしれないし、また、逆も然りだ。 」
「まあ、そうだけどさ。
ちなみにゲームって言うなら何か景品とかあるの?」
「じゃあ負けた方が勝った方の言う事を1つ聞く。
これでどうだ?」
この勝負の勝敗は僕が決めることができる。僕が負けることはまずないだろう。
これならカイのセクハラをやめさせる事が出来そうだ!僕はゲームを受けることにした。
「いいね。乗った!負けても後悔するなよ!」
「それはこっちのセリフだぜ!負けてすっぽんぽんにされても泣くんじゃないぞ!」
そう言ってカイは走っていった。
「え?ちょっ!カイ!勝ったら僕に何する気なの!?」
僕の言葉を聞く前にカイは服を探しにいなくなってしまった。
…そうだった。奴はエロ大魔神だった。カイが勝った暁にはどんな事を望まれるか想像に難くない。どんな辱めを受けさせられるか…。
「早く服を見つけないと…。」
僕は焦りながら自分が気にいる服を探し始めた。




