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旅の始まり


しばらく待合室で会話しながら涼んだ後、ワクワクした表情で椅子から立ち上がると、カイはこう言った。


「よし、じゃあ、そろそろ行こう!新たな旅の始まりだ!」


「なんだか嬉しそうだね。」


「ああ。勿論そうさ。ここに来てからずっと一人だったからな。」


カイは本当に嬉しそうな顔をしている。なんだか小さな子供みたい。

そんな彼をみて、僕も少しだけ嬉しくなった。


「そう。よかったじゃん。」


僕も笑みを浮かべ彼に言う。



カイはとりあえず僕の怪我の手当てと、新しい服を探す事を提案してきた。


足の怪我は大したものではないが、この得体の知れない場所に医者なんているはずもない。


小さな怪我でも手当てを怠れば取り返しがつかなくなるかもしれない。


僕の怪我は大した傷では無かった為、怪我の手当てに関してはカイが持っていた救急セットで事足りたが、流石にエロ大魔神のカイも、女性の服は持っていなかったようで、探しに行くことにした。


「僕ちょっと安心したよ。」


「え?なんで?」


「カイが女性用の下着なんて持ってたらどうしようかと思ってたんだ。」


「そっちかよ…。てっきり俺は「君がいてくれて安心したよ」とか言ってくれる展開かと思ったのに…。ミチ。お前は俺をなんだと思ってるんだ?」


「エロ大魔神。」


「それ好きだなお前。」


そんな会話をしながら歩みを進めていく。


長い年月使われていなかったであろう改札を抜けると、開けた広場に出た。


正面は道路になっており、タクシーなんか止まってそうな停留所なんかもある。


奥の方にある小さめのビルの上には、「ようこそ!海と温泉の町。唯ヶ浜へ!この旅を最期までお楽しみくださいませ。」と書いてある看板が立っていた。


やはりここも駅のホームと同じくらい年月が経過しているようで、全体的ボロボロだった。


廃墟と言っても差し支えないと思う。


「ここは観光地とかだったのかな?」


「たぶんそうだろうな。この近くに温泉旅館や、海水浴場なんかもあるし。」


「へぇ。そうなんだ。」


「この場所は俺にとっても得体が知れない場所だけど、何故だか懐かしさを感じるんだ。」


「僕はそんな感じしないけどなぁ。でも、なんだか新鮮な感じがするよ!」


「そっか。まぁ、ミチはそうかもな。」


何故かカイは少し寂しそうに言った。


「じゃ、ミチの服を探しにいくか。」


「うん!早く着替えないとカイの目も気になるしね。」


疑いの目でカイを見ながら諌めるように僕は言った。


「もう勘弁してくれよ。もう見ないからさ。」


「いや、嘘だね。絶対また繰り返すよこの男は。」


「信用ないなぁ。」


「カイには前科があるからね!しかも二回も!」


「大丈夫大丈夫。」そう言ってカイは少し歩を早めた。


「あっ!待ってよ!どこ行くの?」


「ん?あそこ。」


そう言ってカイは奥に見える建物を指差した。


建物の看板には陽光ようこうデパートと表示されており、太陽をモチーフにしたマークが描かれていた。


「あそこの二階には冷房も効いてるし、割と状態が良いものが多いんだ。たぶんミチが着れる服も沢山あると思うよ。」


「へぇ、そうなんだ。頼りになるね。さすが先輩。」


「せ、先輩?なんかいいなそれ。うん。なんかいいわ。」


「その反応なんかキモい。」


「あんまりキモいって言うなよ。泣くぞ。」


「だってほんとだもん。」



今、僕たちは、陽光デパートの少し前あたりにいる。


長い年月放置されていた道は隆起していたり、草木が生えていたりと非常に歩きづらい。こんなに荒れた道なのに案外普通に歩けるもんだな。


そんなこと考えていていたが、どうやらそれは違ったようだ。少し前を向いて歩いているカイをよく見ると、自然な動作で邪魔な草や石をどけながら歩いてくれている。僕が苦労せず歩けているのは彼が手助けしてくれているからだった。


慣れた手つきでどんどん進んでいく彼を見て、僕はカイを少し見直した。



デパート入り口のガラス扉は割れていて、一階はものが散乱しておりひどい有様だった。


正面の柱には色あせたポスターが掛かっており、薄い女性がにこやかに口紅を塗っている。


「ちょっと不気味だね。」


僕は少し身震いした。


少し怖い。


なんだか上の方から冷たい空気が流れてきている気がする。


「一階は出入り口が台風で壊れたからな。仕方ないさ。でも、二階は電気系統も生きてるし、ちゃんとしてるから安心しなよ。」


「う、うん。わかったよ」


「あ、因みにこのフロアには化粧品の容器とか丸っこいものがよく落ちてるから踏んで転ばないように気をつけろよ。」


「うん。」


「あと、怖かったらいつでも俺の胸に飛び込んできてもいいんだよ。」


ここぞとばかりにキメ顔で言うカイ。


「それはやだ。」


僕は端的に言い放った。

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