第14話 異世界に転生した俺、勇者になる(ISTP / 巨匠 ver)
佐藤悠、二十八歳。
元・メカニック兼エンジニア。口数は少なく、理屈や説教よりも「今、目の前の問題をどう手際よく解決するか」だけを考えて生きてきた。
トラックに跳ねられ、白い空間で女神から「勇者として魔王を討伐してほしい」と泣きつかれた時も、俺の反応は淡淡としたものだった。
「条件は分かった。要は魔王を消せばいいんだな。能力の説明は省いてくれ、使えば分かる」
「えっ……!? あ、はい! 勇者様、いってらっしゃいませ……!」
無駄な会話を嫌い、授与されたチート能力の『構造理解』と『物理干渉』の感覚だけを手元で確かめると、俺はさっさと異世界の森へ降り立った。
森で突進してきた巨大な狼。
「踏み込みが甘い」
俺は半身でかわすと同時に、チート能力で強化したナイフの柄で狼の首筋の神経を一突きした。
ドスン、と狼が崩れ落ちる。所要時間、わずか二秒。
「よし、動くな。殺しはしない」
ペンダントは邪魔なのでポケットの奥へ突っ込み、一人の流れ者として街に入った。ギルドの壊れた魔導具をサクッと修理して日銭を稼いでいたが、その規格外の技術と無駄のない動きが目立ち、結局王城に連れていかれた。
玉座の間。演説を始めようとする国王を無視し、俺は隣に立つ金髪の王女エレナのドレスの装飾――古くなっていた魔導具の刻印をじっと見つめた。
「悠様……? 私の顔に何か……」
「……いや。その胸元の魔導具、出力軸がズレてる。貸してみろ」
俺は即座にナイフの先で刻印を調整し、魔力を流し込んだ。
瞬時に温かな光がエレナを包み、彼女の長年の疲労が吹き飛ぶ。
「え……身体が、軽い……!? 触っただけで治したのですか!?」
「ただのチューニングだ。……それと、王様。前置きはいい、ターゲットの場所とマップだけくれ。仲間はいらん、俺一人で十分だ」
だが、剣士レオン、忍者ミア、魔法使いリリア、そしてエレナは「その腕前、ついていかせてくれ!」と引かなかった。
断るのも面倒なので、俺は「勝手についてこい、手は貸さん」とだけ言った。
俺たちの旅は、徹底した「道具の工夫と即興の戦術」だった。
「悠! 隣の村が魔物に襲われてる!」
「騒ぐな。リリア、その杖の先を少し削れ。集魔効率が上がって詠唱速度が半分になる」
俺は現地にある素材をその場で加工し、仲間の武器をカスタマイズして戦力を数倍に跳ね上げた。
口で教えるより「モノ」で解決する。口数は少ないが、誰よりも的確に現場の状況を把握し、クールに敵の弱点を見抜いて対処した。
野営の夜。俺がナイフで木を削って新しい魔導具を作っていると、エレナが温かい飲み物を持って隣に腰かけた。
「悠様は……本当に口数が少ないですが、誰よりもみんなの道具や動きを見ていてくださるのですね」
「道具が壊れると面倒なだけだ」
「ふふ、素直じゃないですね。……この旅が終わったら、何をするのですか?」
「どこかに工房でも作って、好きな機械や道具でもいじって静かに暮らす」
「……その工房に、私の席はありますか?」
「……道具のメンテくらいなら手伝わせてやる」
エレナは嬉しそうに目を細めて微笑んだ。
魔王城、玉座の間。
「よく来たな、勇者よ――」
「ここか」
魔王が長台詞を喋り出す前に、俺は投げナイフ一閃、城の魔力供給ラインとなっている壁の核を正確に破壊した。
「な……!? 貴様、何をした!?」
「お前の耐久力は城の結界と同期してる。ラインを切ればただのデカい標的だ」
動揺する魔王に対し、俺はチート能力で限界までカスタマイズした大剣を担ぎ、一瞬で間合いを詰めた。
「終わりだ」
ズバァァァン!!
無駄な叫び声も、大袈裟な大技もない。
ただ最も効率的な角度と威力で振り下ろされた一撃が、魔王のコアを正確に一刀両断した。
「馬鹿な……こんな、あっけなく……ッ!?」
魔王討伐完了。静かな幕切れだった。
それから一年。
王国の郊外、静かな森の近くに作った俺の工房。
「悠」
王族の服を脱ぎ、作業しやすい服を着たエレナが工房のドアを開けて入ってきた。
「私は……あなたが好きです」
彼女は照れくさそうに、でもハッキリと俺の目を見て言った。
「口下手で、照れ屋で、でも誰よりも頼もしくて器用な……佐藤悠という職人さんが大好きです」
俺は作業の手を止め、工具を置くと、深く息を吐いた。
「……手際が悪いな。告白のタイミングくらい、もう少し計算しろ」
「え?」
俺はエレナの手を引っ張り、自分の膝の上に座らせて固く抱きしめた。
「……断る理由がない。ずっとここにいろ」
「悠様……ッ! はい!」
こうして俺は――。
抜群の観察力と技術でクールに問題を解決し。
圧倒的な即興センスと無駄のない一撃で魔王を倒し。
そして――静かな工房で、最愛の相棒と暮らす未来を手に入れた。
ISTP(巨匠)
・特徴:寡黙、観察力、職人肌
・活躍スタイル:現場での即興と道具のカスタマイズ。弱点を一瞬で見抜き、最小限の一撃で討伐。




