カイレス王太子登場
「妻に1番付き添いたい時に来るな!」とめちゃくちゃ内心では怒っているカイレス
「立ってくれ。私はすぐに戻る。フェルネスから話を聞いて、少しの間だけ皇后陛下と付き添いを代わっていただいた」
カイレスを見た瞬間、エリザベスの顔が赤くなった。
「え? 僕に会うために、わざわざ来てくれたの? あの時のこと、許してくれるの?」
エリザベスの顔は、喜びに満ちていた。
「変わらぬな。そなたは……」
カイレスは静かに目を閉じた。
「そなたの親御とは、すでに連絡を取った。そなたには、城で下働きをしてもらう」
カイレスが合図すると、二人の騎士がエリザベスの両肩を掴んだ。
「レオンだったな。だが、『男性が苦手だ』とフェルネスに言ったそうだな。働く場所は女性だけだ。安心しろ」
そしてカイレスは、公爵家の一同へ頭を下げた。
「お手間を取らせて、申し訳ありませんでした。この者が私の名前を出したため、叔父上も見捨てられず、拾ってしまったようです。
留学先で、顔を知っている程度の間柄です。公爵家で面倒を見ていただくほどの付き合いではありません。
今は『罪人』です」
カイレスは、やれやれという顔をした。
「では、私は戻る。お産までは、まだ時間がかかりそうだ。わざわざここまで来たのは、この者が私の名前を出したからにすぎない」
そう言って、エリザベスへ冷たい目を向ける。
「公爵家や王室で雇う価値のある人間ではない。
何が『男性が怖い』だ。
相手が女性には手を出せないとわかっていて、散々、下級生の男子をいたぶっていたくせに」
カイレスの目は、恐ろしく冷たかった。
「『男性が怖い』ですって?」
エリアスが呆れたように声を上げた。
「ああ、それでフェルネスが見捨てられなくなってしまったのね」
そして溜息をつく。
「おかしいと思ったわ。フェルネスは、困っている人間を放っておけない性分だから」
皆がうなずいた。
それを見届けると、カイレスは飛竜へ乗り、護衛の騎士と共にさっさと飛び立っていった。
「そなたは徒歩だ」
二人の騎士が、エリザベスを連れて行こうとする。
「嫌だ! 下働きなんて!」
エリザベスは抵抗した。
「あきらめなさい。王太子殿下の命令に逆らえる者は、この場にはいないわ」
エリアスが言う。
「なんでカイレスが王太子なんだよ! 一緒の学校にいたくせに!」
エリザベスが叫んだ。
そして、エリアスを指さす。
「お前は男のくせに女の格好をして! 僕とどう違うんだ!! みっともない!」
騎士の一人が、無言でエリザベスの腕をひねり上げた。
エリザベスの顔が痛みで歪む。
「乱暴はおよしなさい」
エリアスは静かに言った。
そして、エリザベスをまっすぐ見つめる。
「私が、あなたから見てみっともないように、私から見れば、あなたの男装もとてもみっともないわ。
特に――『中身』がね」
エリザベスは目を丸くした。
「あなたみたいなのがいるから……私たちまで、誤解されるのよ……」
エリアスが小さくつぶやいた。
「早く連れて行ってちょうだい。もう、公爵家とこの娘には何の関係もありません」
夫人が騎士たちへ告げた。
そして皆、それぞれの場所へ戻っていった。
こうしてエリザベスは、城の下働き見習いとして過ごすことになった。
下働きで改心・・・するかな?




