帰国
髪の毛を切るために帰国を決意・・・(笑)
フェルネス、ひげと髪のために、とんでもない「拾い物」をしてしまいます
「侍従たちはさっさと逃げて行ったし、昨夜の話を聞く限り、ご実家もあまりよいところではなさそうだな。
何なら、就職先を紹介してやる。
髭は剃れたが、髪は次の行き先で切ってもらうことにした。ついてくるか?」
エリザベスは、まだ真っ青な顔をしていた。
「大丈夫か?」
あまりの態度の豹変に、フェルネスは目を見張る。
「近寄らないで!」
エリザベスの声が震えていた。
「髭を剃らなければよかったな。そなた、男性が苦手なのだな?」
フェルネスはようやく察した。
「私も女性が苦手だ。何もしない。安心しなさい。その気だったなら、昨夜……。しかし、何もしなかったであろう?」
フェルネスが穏やかな口調で言う。
「そ、それもそうだ」
エリザベスは少し気が抜けたようだった。
「男性が苦手なのに、なぜ私が男だとわからなかったのだ?」
フェルネスが不思議そうに尋ねる。
「本当に女性だと思った。その顔と体形、反則だ」
エリザベスが涙ぐんだ。
「髭を剃った方が『おじさん』に見える……。でも、髭がない方が似合っている」
泣き笑いのような顔で言う。
「ちょうど、なぜか風呂場に『髭剃り』があったので、使わせてもらった」
フェルネスが言う。
「あれを使ったのか。皮肉だ。僕の『護身用』だよ。夜中に着替えた時、脱衣所に置き忘れた」
「そうだったのか。勝手に使って済まなかった。なぜか、この周辺の国には髭剃りが売っていない」
フェルネスが苦笑した。
「この辺りの国の貴族の成人男性には、髪を短くしたり、髭を剃ったりする習慣がないんだ。髭は男性の象徴だから。僕も付け髭が欲しかったけど、それは許されなかった」
エリザベスが悔しそうに言う。
「そうか。納得した。民の言葉は訛りが強くて、よくわからなかったのだ」
フェルネスは苦笑した
「では、朝食を食べたら出発だ。家へ送るか? それとも、私と他国へ行くか? どちらでもよいが」
フェルネスが尋ねる。
「フェルネスの国? 僕は国境を越えることはできない」
エリザベスが唇を噛む。
「では、素直に家へ帰るか?」
「嫌だ! 帰りたくない!!」
「そなた、貴族の家の侍女はやれそうか? 侍女の制服はスカートだ。侍従は力仕事が多いから、そなたには無理だぞ」
「いいよ。侍女になる。勉強ができなかったから、家庭教師は無理だけど」
「わかった。では、一緒に国境を越えよう。その前に、少し『細工』をしてくる。その上着を脱いでくれ」
エリザベスは素直に自分の上着をフェルネスへ差し出した。
フェルネスは手から魔力を放ち、上着をぼろぼろにする。
さらに、血のような赤い色を付けた。
「では、少し待っていてくれ。戻ってきたら、すぐ旅立てるようにしておいてくれよ」
そう言って、フェルネスは部屋を出て行った。
エリザベスの唇の端が、かすかに上がった。
フェルネスは、ほどなくして戻ってきた。
そして、エリザベスの服を魔法でドレスのように見える姿へ変えた。
「えっ?」
エリザベスが驚く。
「一時的な目くらましだ。さあ、行くぞ」
フェルネスは宿の主人に礼を言い、多めのチップを渡した。
「あんなに払っていいの?」
エリザベスが不思議そうな顔をする。
「口止め料だ。私が男だとわかった上で、若い女性を同じ部屋に泊めたとなると、この国の法律では宿の主人が罰せられるらしい」
二人は馬車に乗り、街外れまで向かった。
そして昨日、飛行魔獣と共に降りた、広場のような場所へやって来る。
フェルネスが手を上げると、昨日の大型の飛行魔獣が降りてきた。
フェルネスはエリザベスを抱き上げて、その背に乗せる。
さらに固定の魔法をかけ、自分もその後ろに乗り込んだ。
「昨日みたいに、二羽で行くんじゃないんだ」
エリザベスが目を見張る。
「二羽では、国境を越えることはできない。さあ、飛ぶぞ」
「どこへ飛ぶの?」
「とりあえず、アストリア王国だ」
フェルネスが答える。
すると、なぜかエリザベスの顔が赤くなった。
「カイレスという、公爵家のご子息がいたと思うのだけど」
どこか懐かしそうに言う。
「ほう。カイレスの知り合いか。留学していた時の?」
フェルネスが尋ねる。
「えっ? カイレス様を知っているのですか?」
エリザベスの目が輝いた。
「私の甥だよ。姉上の子供だ。彼が幼い頃からよく知っている」
フェルネスが事もなげに言う。
「えっ!? フェルネス様って、カイレス様のおじ様なの!?」
エリザベスの口調が、一気に焦ったものへ変わった。
「もうすぐ国境だ。そのままじっとしておけ」
そう言うと、フェルネスは国境付近に張り巡らされたバリアへ、自分の手から発した魔力の光を当てた。
飛行魔獣が通り抜けられるだけの隙間が、バリアに開く。
そこを通過した。
飛行魔獣が通り抜けると、バリアは再び元の姿へ戻った。
なんでお前がフェルネスと飛行魔獣にいっしょに乗るんじゃあ!!
と作者の怒り爆発中
フェルネス、優しいのです。
というか、外伝2の後書きにも書いたけど「保護者気質」が抜けない
実年齢より精神年齢で判断しちゃっています・・・
追記
エリザベスは嘘つきです
>この辺りの国の貴族の成人男性には、髪を短くしたり、髭を剃ったりする習慣がないんだ
自分は髪を短くしているじゃん・・・突っ込んでくださいw




