エリザベスの勘違い
なぜフェルネスを女だと信じ切る?
カイレスと同じ年齢?と思えないほどの幼さ・・・
フェルネスは、取っていた宿へ戻った。
「もう一部屋、この女性用に取ってくれ」
フェルネスが宿の主人に言うが、
「あいにく満室です」
その答えに、フェルネスの肩が落ちた。
だが、仕方がない。
エリザベスを自分の部屋へ連れて行く。
「私は床で寝るから、そなたはベッドで寝なさい。先に風呂へ入ってくれ。寝間着は、そこにあるものを着ればよい」
「大きいよ、これ」
エリザベスが、ベッドの上に置いてある寝間着を広げて言った。
「私のだ。仕方あるまい。洗濯はしてある」
フェルネスは溜息をつく。
「なんでフェルネスは、そんなに背が高いの? いいなあ……僕もそれくらいになりたかった」
「私は高すぎる。普通がよい。さっさと風呂に入れ。私が入れぬ」
「え? 一緒に入ろうよ。男の格好をした女同士、いいじゃん。裸の付き合いだ」
エリザベスが嬉しそうに言う。
フェルネスの顔が激しく歪んだ。
放り出したい。
だが、夜の街は若い女性には危険すぎる。
「もうよい! 私は寝る!」
そう言って、フェルネスはそのまま床へ転がった。
ソファーでは窮屈なので、床に寝転がるしかない。
野宿にも慣れているため、別に何とも思わなかった。
「えー、もっとおしゃべりしようよ! 『仲間』なんだから」
エリザベスがベッドから離れ、馴れ馴れしくフェルネスの胸を押した。
「やめぬか!」
フェルネスがエリザベスの手を払う。
「あれ? フェルネスって、胸が全然ないんだね。かわいそう……」
フェルネスは寝転んだまま、無言で魔法を使い、明かりを消した。
『寝ろ』
という合図のつもりだったのだが、
「一緒にベッドで寝ようよ。『仲間』じゃん」
暗闇の中から、エリザベスの声が聞こえてくる。
「フェルネスは好きな人いないの? 婚約者はどんな人だったの? やっぱりじじい?」
フェルネスは返事をせず、黙っていた。
そのうち、ベッドの上から寝息が聞こえてきた。
フェルネスは胸をなで下ろし、自分も眠りについた。
念のため、「身の保全」のバリアを張ることも忘れなかった。
また体を触られたら、たまったものではない。
◇
フェルネスが目を覚ますと、エリザベスはまだ眠っていた。
フェルネスは風呂に入りたくなった。
魔法で体を清めることもできるのだが、本物の湯で洗い流したかった。
長い髪が鬱陶しい。
べたべたと顔に張り付く。
脱衣所へ入ると、しっかり鍵をかけた。
鏡の前には、髭を剃るのにちょうどよさそうなカミソリが置いてあった。
「おや? ずっと置いてなかったのに?」
あまり深く考えず、それを手に取る。
「これで髭が剃れる」
「髭剃り」を買おうとしたのだが、なぜか、どこにも売っていなかったのだ。
「まったく、これのどこが『付け髭』なのだ」
そう言って石鹸を泡立て、全身を洗う。
その後、指先から小さな炎を出し、カミソリの刃を念入りにあぶる。
それから全裸のまま、髭を剃り始めた。
きれいに髭を剃り終え、すっかり爽快な気分になったフェルネスは、腰にタオルだけを巻き、そのまま脱衣所を出た。
エリザベスは、ちょうど起き上がり、着替えをしているところだった。
何だかんだ言いつつ、昨夜はきちんと寝間着に着替えていたらしい。
エリザベスの顔が、思い切り引き攣った。
「あ、そういえば、いたな」
髭が剃れた爽快感のあまり、フェルネスはエリザベスの存在を忘れていた。
「ああ、着替え中か。失礼した」
そう言って、再び脱衣所へ戻る。
服を着て、しばらく待った後、脱衣所から顔だけを出した。
「着替えは終わったか?」
エリザベスは真っ青な顔で、コクコクとうなずいた。
「そなた、家に帰る気はあるのか?」
フェルネスが尋ねる。
だが、エリザベスは硬直したままである。
「お、男……なのか……」
かろうじて声を絞り出した。
フェルネスは無視した。
チャッピーに「ここで切った方がいい」と言われたのでそうします
続きを同時公開にします
他人が使ったカミソリをそのまま使うのは危険です
注意しましょう(使うなよ!というツッコミはなしでお願いしますw)




