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フェルネスの受難――皇女さまはあきらめない――孤独な抵抗  作者: 鶴見 日向子


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13/22

フェルネスの冤罪

また、エリザベスです。

懲りないですねえ(苦笑)

アストリア王国の国王は、顔をしかめていた。


カイレスも、怒りが収まらない様子である。


「まったく! なんて女だ!!」


エリザベスは母国へ強制送還された。


ところが今度は、腹の子について、


「フェルネスの子だ」


と言い張っているという。


さらに、その国の宿の主人まで、


「確かに、背が高く、細身で、整った顔立ちの男と同じ部屋に泊まっていた」


と証言しているらしい。


「仮にフェルネス叔父上と何かあったとしても、魔力が違いすぎます。子はできません」


カイレスの目が遠くなる。


「ああ。相手国の使者には、『巨大魔獣の首を一撃で刎ねた者だ』と伝えたら、すぐに帰っていったよ」


国王は溜息をついた。


「フェルネスは、不幸の星の下に生まれてきたのだろうか?」


「親切が仇となる。困ったものです」


カイレスも溜息をつく。


そこへ、シャローヌが面会を求めてきた。


「義姉上、どうなさいました?」


カイレスが笑って出迎える。


「国王陛下、王太子殿下。成功です!」


シャローヌの笑顔は、はちきれそうだった。


「フェルネス様が、娘との婚約を了承してくださいました!」


その言葉に、国王とカイレスも喜びの表情を浮かべた。


だが国王は、ふと首を傾げる。


「皇太子妃殿下は、自分より年上の男と娘が一緒になることに抵抗はないのか?」


「ございません」


シャローヌは即答した。


「お相手はフェルネス様ですから。


私は、とても信頼しております。


若いだけで頼りにならない男性より、はるかによろしいです」


そして、懐かしそうに微笑んだ。


「それにロザリアは、幼い頃からフェルネス様を慕っていました。


『早く大人になって、フェルネス様にプロポーズしたい』


そればかり言っていたのです」


「そんなに前から?」


カイレスが驚く。


「はい。


だから勉強も、魔力の訓練も、何もかも必死で頑張ったのですよ。


『フェルネス様にふさわしい女性になるのだ』と」


シャローヌは目を細めた。


「これも、ご縁なのだと思います。


カイレス様とクラリスちゃんも、立場が変わって、互いが誰なのかもわからないまま再び出会い、それでも惹かれ合ったでしょう?


きっと、そういう運命なのです」


「こちらは、一方的に思っていただけだがな。元の妹だとも知らず」


カイレスが頭をかいた。


「でも、カイレス様は見事にクラリスちゃんの心を射止めました」


シャローヌが笑う。


「あとは、ロザリアがフェルネス様の心を射止めるべく頑張ればよいのです」


その目は温かかった。


「妃殿下は、クラリスと私との結婚を強く後押ししてくださったそうですね」


カイレスが笑う。


「はい。猛プッシュさせていただきました」


シャローヌも笑った。


「義母上も、フェルネス叔父上も、見えないところで必死に手を尽くしてくれていた。


我々も、叔父上には幸せになっていただきたい」


カイレスが言った。


◇


その後、カイレスとシャローヌは一緒にクラリスの部屋へ向かった。


「えっ? 叔父様とロザリアちゃん??」


クラリスが目を丸くする。


その声に驚いたのか、腕の中の王子が泣き出した。


「それは、びっくりするよな~~」


カイレスは笑いながら王子を受け取り、あやし始めた。


「我が息子はかわいいな。早く次の子も欲しい」


カイレスが微笑む。


「駄目ですよ」


シャローヌが、すぐに厳しい顔になった。


「帝王切開だったのですから。傷が十分に治るまで、次の妊娠は間を空けるように言われたでしょう?」


その言葉を聞いた瞬間――。


クラリスの顔が青ざめた。


「クラリスちゃん?」


シャローヌが顔を覗き込む。


「駄目ですね、私……」


クラリスの声が震えた。


「次の出産も、またあんなことになるのかと思ったら……」


その体が、がたがたと震え始める。


シャローヌは、すぐにクラリスを抱きしめた。


「あの時、カイレス様を産室から出したのは失敗だったかもしれませんね」


そして、カイレスを鋭く睨む。


「クラリスちゃんが、どれほど大変な思いをしたのか、あなたにはわかっていないのです」


「義姉上……」


「たまたま、あのお医者様が間に合ったから、クラリスちゃんも王子様も助かったのですよ。


どちらかを――いえ、両方を失っていた可能性だってあったのです。


軽々しく『次』などと言わないでください!」


いつも穏やかに微笑んでいるシャローヌから放たれる怒気に、カイレスは息を飲んだ。


「いえ……」


クラリスが、小さく笑った。


「カイレス様があの場にいたら、きっと、あのお医者様を全力で止めていたと思います」


「……」


「そうしたら、間に合わなかったかもしれません。


産室から追い出したのは、英断だったと思います」


「クラリス……」


「よかった。笑顔が戻った」


シャローヌは、ほっと息をついた。


だが、クラリスは静かに言った。


「でも……もう二度と、同じ思いはしたくありません」


「それはそうよ」


シャローヌはクラリスの肩を抱く。


「私だって、同じことになったらそう思うわ」


そして再び、きっとカイレスを睨んだ。


「クラリスちゃんを無理に妊娠させたりしたら、承知しませんからね!!」


「絶対にしません! 誓います!!」


カイレスは、かつてシャローヌが別邸をほぼ破壊した時のことを思い出していた。


(この義姉上には、絶対に逆らえない!)


◇


そして後日。


カイレスはアルフレッドのもとを訪れ、「避妊」について相談した。


「いい心がけだ」


アルフレッドは満足そうに笑った。


そして、その足でフェルネスのもとへ向かう。


「例の薬の仕上げを急ぐぞ」


「急にどうした?」


「必要としている者がいる。それだけだ」


そう言って、アルフレッドは研究を再開した。


フェルネスもまた、何も聞かずに頷いた。


二人は、痛みを少しでも減らすための薬を完成させるべく、さらに研究を重ねていくのだった。


「魔力が違いすぎます。子はできません」

と世界設定で一刀両断するのが気持ちいいです。

そして、

「巨大魔獣の首を一撃で刎ねた者だ」

で使者が即帰国。

DNA鑑定より早い(笑)。

例によってチャッピーの感想


「DNA鑑定より早い」に爆笑しました。たしかに。

タイトルにしようかと思いましたが、世界観がくずれるのでやめました


どうでもいいけど「性病」という単語はダメで「避妊」はスルーでした。

チャッピーの校正基準が未だにわかりません(苦笑)

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