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コーヒー

 笑われ少し恥ずかしく思ったのと同時にすごく綺麗な人だな、なんて思って見惚れてしまった。

 陶器のような美しい白い肌、それに対比するような、しなやかで艶めく黒い髪。

 凍りそうなほど冷たかった身体を溶かすような柔らかく優しい声。


「あの…?」


「あ、ああ!すみません。はは、ですね。外寒すぎて。えっと、ホットコーヒー2つとホットカフェオレ2つください」


「はい、かしこまりました。4点で1,200円になります。お会計はそちらのパネルでお願いしますね」


 俺のオーダーを聞くなりニッコリと笑って手際よくレジを操作する彼女。

 雪のように白い肌、束ねた艶のある長い黒髪、少し大人っぽい目元が印象的だが、反面子供のような愛嬌のある笑顔と話し方に親近感が湧く。


 「げ、アサヒの1,000円じゃ足りないじゃん」


 言われた通りパネルで会計を済まそうとすると、先程アサヒに握らされたお金では少し足りない。

 そりゃそうだ、いくら安いからってカフェでコーヒー4つで1,000円は無理があるよな。缶コーヒーじゃないんだから。

 仕方なく自分の財布から200円を取り出そうと鞄を開けようとする。が、鞄がない。


 「あ、やべ…鞄スタジオだ」


 あたふたとする俺に「どうかしました?」と彼女が声をかけてきた。


 「あ、ああ…いや、それがコレだけ持ってきて財布を忘れてきちゃったみたいで。すみません、コーヒーひとつキャンセルできます?」


 そう言いながら、握られて少しシワになった情けない千円札を見せた。


 すると彼女は自身のポケットからチャリっと音を立てて握ったソレを俺に差し出す。


 「え?」

 「どうぞ」


 握られた小さな拳が開くと、そこには200円が乗っている。


 「ほら、これ使って」

 「や、で…でも」

 「いいからいいから。その代わり、またコーヒー買いに来てくださいね」


 そう言いながら、またニッコリと笑った。


 「ほら、早くしないと次のお客さん並んじゃってる」


 なかなか受け取らない俺を見て、口を尖らせる彼女は俺の後ろでメニューを見ている客をチラリと見た。


 「あ、ああ……えっと、ありがとう」

 「ふふ、どういたしまして」


 焦りながら受け取る俺を少し笑いながら見る彼女に若干恥ずかしく思いながらも、俺の後ろにでき始めた列の圧を感じ、急いで会計を済ませた。


 「あ、あの……!」


 会計が終わり、もう一度彼女に話しかけようとしたが「お受け取りはあちらのカウンターになります」なんて列から追い出されてしまう。


 「次のお客様、お決まりでしたらどうぞ」


 もはや俺の事は気にも留めていない様子で次の客の注文を聞き始めている。


 本当に良かったのか?なんて思ったのもつかの間「コーヒー2点、カフェラテ2点でお待ちのお客様」と隣のカウンターから声が聞こえた。


 「ありがとうございました」


 何事も無く受け取ってしまったコーヒー4つ。

 帰り際に彼女に一言お礼を言おうと思ったが、忙しそうにしていて話しかけられそうにない。


 「…まあ、また返しに来ればいいか」


 お持ち帰り用のコーヒーを片手に店を出ると、また寒さが襲いかかってくる。

 これは早いところスタジオに戻らないとせっかくのコーヒーが覚めてしまいそうだ。

 そう思い足を早めたが、どこか心は温かく足取りは軽かった。

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