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ニュース

 ペコペコと何度も頭を下げて手を振る彼女に背を向けてイルミネーションの光る街へと足早に進んでいく。

 こんなことならヤス兄のタクシーに乗るべきだったかな、なんて思いながらどんどんスピードを上げて歩く。

 さながら競歩だ。


 人混みに紛れて消えてしまいたい気持ちを抑え、無心で歩き続けるとすぐに街へ出た。


 イルミネーションが先ほどよりも明るく、ガヤガヤとした都会の雑音に少しだけ安堵した。

 ビルの大きなスクリーンにはニュース番組が流れている。


『先日のミューチューブアイドルグループ殺害事件について、犯人は未だ否認を…』


 物騒な世の中だ。

 なんでも動画配信者グループの1人がゲーム中、ファンの女に腹を刺されて死んだらしい。

 数年前から急速に流行り出したフルダイブ型VRゲーム。


 昔からフルダイブ型ゲームはあったし、俺もやったことがある。

 だけど最近のは現実世界と区別がつかないレベルでリアリティを楽しめるらしい。

 そんな中、現実世界に置き去りになった無防備な本体が刺されちゃ世話ないよな。


 フルダイブ中は部屋の鍵を閉めましょう、なんて注意書きもあるらしいが…


「あ、あの…もしかして、sevensの、」


 やばい、立ち止まってニュースなんて見ていたら今度は正面から声をかけられた。


「あ、ああ…ごめんな、街中だし騒ぎになっちゃうと大変だから」


 そう言い、声をかけてきた女の子が話し終える前に避けるようにその場を去った。

 俺のイメージが悪くなろうが正直どうでもいい。



 それよりも気持ち悪いからもう俺の目の前に現れないでくれ。

 いちいち声をかけてこないでくれ。

 吐き気がする。


 そんな言葉を喉の奥に押し込めるようにゴクンと唾を飲み込んだ。


 交差点近くを通ったタクシーを急いで拾い、飛び乗るように身体を車内に押し込む。


「お客さん、大丈夫ですか?顔色悪いですが…」

「あ、ああ、大丈夫です」


 そう一言交わすと、自宅マンション近くの住所を伝え車を発進させた。



 自宅へ着くなり靴を脱ぎ捨て、倒れるようにベッドに横たわった。


「疲れた…」


 シーンと静まり返った真っ暗な部屋。


 2年前まではこの部屋で出迎えてくれる彼女がいた。

 だが、今はもういない。


 俺の彼女はファンに殺された。


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