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人質生活94日目

トーラティカのカントリーハウス。

朝には霜が降り、世界が薄っすらと白ばむ。

浅い水たまりは凍り、踏むと薄氷が紙のようにペリペリと散らばる。

庭木には冬囲いが施され、薪小屋にはすぐに使えるように割られた薪が山のように積まれていた。

暖炉には火が入る。


クローイの霊はモルリヴァールにたどり着き、フワフワと地上に降りていた。

「(ねえ、強いゴーストを探しているんだけど。できればドラゴンの悪霊がいいの。誰か、浮かばれないドラゴンの魂を知らない?)」


街中で囚われている幽霊たちは、自分たちの自己紹介を始める。

「(そんなことより金貸しへの復讐を手伝ってくれ!)」

「(借金をしたあなたが悪いんでしょ?ドラゴンじゃなくてもいいから、強いモンスターの霊をご存じない?)」

別のゴーストがクローイに縋り付く。

「(助けて!両親のことが心配で死んでも死にきれないの…勝手にトーラティカ王国を名乗る海側の成金貴族ども…蜂起を治めに行った両親が帰って来なくて…私ももう80代なんだけど、両親はどうなったの!?モルリヴァール国王は何をやっているの!?両親はどうなったの?)」

「(あらごめんなさい、私はそのトーラティカの王族なの)」

「(海側の田舎には商売貴族しか居ない!!!!王族なんていない!!!!貿易路を独占しないで!!!!せめてアリディンバリス半島だけでも返還して!!!!)」

「(あら、そこは同意見)」


クローイの霊はため息をついた。

人間の悪霊に聞いても無駄なようだ。

再びフワフワと高度を上げて上空から国を見下ろすと、何か青白い線のようなものが見えた。

ひと気のない山奥にそれはある。

「(?)」


高度を下げて8本、いや、交差しているだけで実際には4本の線に近づいてみると、霊的物質で造られた超巨大なチェーンだと理解できた。

「(なんて大きな鎖なの!?)」


その鎖を辿ってみると………中央に、大きなドラゴンが縛り付けられていた。

クローイはすぐそばに寄っていく。

「…誰だ?」

「(幽霊が見えるの?光魔法が使えるってこと?浄化しないで!)」

「そんな気力は無い。ここに封印されてもう1000年だ…」

「(どうしてこんな事に?)」

「魔法を使う人間と戦い、封じられてしまった。まだ敗北したわけではないが、身動きが取れずにいる」

「(魔法でこんな事が…可能なの?)」


クローイはドラゴンの昔話を聞いた。

どうやら、現代では失われてしまった魔術によって封印されているらしい。

クローイのようなゴーストが存在する魂の世界の物質で縛り付けられているため、実体を持つドラゴンには対処のしようもないそうだ。

「霊的世界の存在でも、この鎖を壊せるほど大きな力を持った幽霊は存在しないだろう。無念だ。寿命を迎えるまでここから動けないとは」

「(沢山の霊ならどうにかできる?)」

「どういう意味だ?」

「(私にまかせて!)」


クローイの霊は再びモルリヴァールの街中に戻り、悪霊という悪霊を”説得”して、ドラゴンの鎖へ向かわせた。

鎖を壊そうと各自努力はしてくれたものの、ゴーストの一体一体の力は弱く、それは山火事にかかる一滴の水のようだ。

「(モンスターの浮かばれない魂も呼んで来るね!そっちの方が破壊行為に長けているでしょ?…でも、約束してくれない?」

「約束?」

「(もし、あなたを開放することに成功したら、私の願いを叶えてほしいの。母国のトーラティカをぶっ壊して!まずは王城、それから王都、次に向かう都市は………!)」

「おお、娘よ。お前は人間ではなくドラゴンとして生まれてくるべき魂だったな」


ドラゴンとクローイの霊は合意を交わし、クローイは仕事に励んだ。

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