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人質生活84日目

前日の深夜。

フィリップは自室でボーっとしていた。

祖父のぬいぐるみの足をまくらに、横になると脳に血流が戻ってくる。

「(…クローイ叔母さまはどうなるんだろうか?)」


今までも何度か爆発物騒ぎを起こしてきた叔母だ。

周囲の寛容も限界に近いのだろう。

何となく思い立ち、従者を呼んで母親の部屋に向かった。

「まだ起きていたの?たくさん食べたなら早く眠りなさい」

「叔母さまについてお話が…」

「…入って。私から話さなくちゃならない」


茶を持ってくるように、と従者と侍女を下がらせた。

国王はテーブルいっぱいにスミレのパズルを広げていた王配を呼び、親子3人でソファーに座る。

「今日の収穫祭は楽しかった?昨日はレジナルド様との知識比べで勝利したそうだし、丁度いい宴になったじゃない。普段から真面目に勉強していれば、いざという時に役立つとわかったでしょ?」

「はい。お母さまとお父さまが、私に教師をつけ熱心に教育してくれたおかげです。感謝してもしきれません。しかし、そんな風に感謝できるのも生きているからです。今日の感謝祭で熱々に熱された液状のゼラチンが会場に飛び散り、火傷を負って死ぬ運命だったのかもしれないと考えると」


真夜中の部屋にノックの音が響く。

侍女が茶を入れに来た。

国王が不意に、侍女に質問をする。

「あなたはクローイに関してどう思う?」

「…」

「何か答えて?」

「どの一族にも、ひとりはああいう人間が生まれてしまうんです」

「その場合はどうするの?」

「身勝手なタイプなら放置で大丈夫です。勝手に家を出て行きますから。無駄に行動力だけあって、他人との関わり合いを避ける人間性なら尚更」

「クローイみたいに、とにかく誰彼構わず仲良くしたいタイプなら?」

「そういう場合は旅に出してもすぐに帰ってきてしまいますからね。究極、こちらがどこかへ引っ越せればいいんですが」

「どう対処する?」

「…お言葉ですが。貴族と王族ではわけが違います。クローイ様は高貴な人間でいらっしゃいますので…このような会話は…気が引けます」

「教えなさい」

「いえ、どうすることもできないんです。追放しても、追放の意味を理解せずに帰ってきてしまうし。それにあまりにも頭が悪いと、結局遠い所まで移動できず、家の恥になるだけで」

「…クローイを追放なんて無理。王族なんだから」

「ですからおっしゃったではありませんか」

「部屋に閉じ込めておいても逃げてしまうし。監視の侍女や兵士を説得してしまうのが問題だ」


クローイのユニークスキルは”説得”。

侍女は頭を下げて部屋から出て行った。

母は息子に言う。

「…ここだけの話だから、口外しないと約束して。彼女の夫たちは、彼女に説得されて死んでいったの」

「どうやって」

「”私を愛しているなら行動で示して。命を懸けられる事より誠心誠意な愛の証はないでしょう”と」

「…命を懸けるとは、一生をかけて共に過ごすという意味では?確かに危険な場面においては自らの命を差し出す…という状況に陥る可能性もございますが…それは愛する相手を守りたいからです。自殺をはかるのは真逆の行為でしょう」

「そう。でも、”説得”されてしまうの」

「牢屋は魔法石で作られています。多少のユニークスキルも吸収してくれるはずですが」

「でないと困る。隙あらば囁き声で説得してくるんだから」

「…おじいさまも説得されていたんですか?」

「いくらユニークスキルとはいえ、家族には効きが悪いみたいで。お父さまがクローイに優しかったのは、単純に娘だし…同情と、それに………”責任”を感じていたのかも。そうそう、家族には効かないから、もう亡くなられてしまったけど、おばあさまはクローイを強く叱っていた。覚えてる?」

「ひいおばあさま、懐かしいなぁ。”説得”はお母さまにも効いていませんものね」

「あなたにも効いていないでしょ?」

「確かに」


国王は斜め横に座る王配を見た。

長いソファーに座っている国王と王子とは違い、お誕生席のひとり用のソファーに座っている。

上半身を前に倒し、ヒザを大きく開き、片方の手は腰に当て、もう片方の手と肘は、アゴとヒザを繋いでいる。

険しい表情で眉と目が近く、賢そうな広い額には、癖っ毛の前髪がはらりとかかっていた。

まるで真剣に会話を聞いているように見えるが、頭の中はスミレのパズルの事でいっぱいだ。

「あなたはどう思う?」

「………その事に関してだけど………」


全然話を聞いていなかった。

ガチで焦ったが返せる言葉が見つからない。

ただ、侍女に何かを聞いていたやりとりの部分だけは目で追っていた。

崖に何とか片手でつかまっている状態である。

「ちょっと話を戻していいかな?なぜ侍女に聞いたんだ?」


国王は目を伏せた。

「…やっぱり聞くべきじゃなかった?」


最悪のパターンの回答だ。

相手の回答は何のヒントにもならず、回答の広がりも無く、むしろ責め立てるような質問をしてしまった雰囲気になっている。

しかし諦めるわけにはいかない。

話をまるっと聞いていなかった場合でも、挽回する手はある。

「まさか、非難したいわけじゃないんだ。フィリップはどう思う?」

「…私は」


父親の命が助かった。

「私は、侍女に”あなたならどうする”と質問したことを恥とは思いません。色々な人に意見を聞くことが罪でしょうか?個人的には…やはり追放などは危険すぎます。民間に被害が出るでしょう。叔母さまを閉じ込めておくべきかと」

「民間に被害が出るのと、王家が舐められるのと、どっちがいい?貴族からの信頼を得られない国王一族の辿る末路は?」


母親から思いのほか厳しい口調で返答が戻ってきて、フィリップは焦る。

「し、親族を牢に閉じ込めておくというのは外聞も悪く、王家のイメージを損なう行為で、最悪笑い者になるわけです。しかし、野放しにすればその責任は結局、お母さまが負う事になります。それに、自分の領地で王族が暴れる貴族や市民の身にもなってみてください。その怒りは国王に向きます。当然でしょう」

「…そうだな」


何の話をしているのかやっと理解できた父親がそれっぽく話に参加する。

「クローイは制御できないドラゴンのようなものだ」

「ああ」

「森の中で暮らしてくれと頼んでも、人里に降りてきて騒ぎを起こす」

「正にモンスター」


フィリップは考える。

「船旅や…旅行に出かけたことにして…牢屋に入れておけばよいのでは?」


母親は首を振った。

「いや、国王の妹が旅行をすれば、新聞社は喜んで追いかけるだろう。実態が無ければすぐにウソはバレる。出しゃばりのクローイは新聞記者とも交流があるし、影武者と入れ替えるのも不可能だ」

「そうですよね…」


王配は立ち上がり、国王の隣に座って肩を抱き寄せた。

「国の統治のためだ、死んでもらおう」

「………!」


国王は顔を手で覆う。

「でも、い、妹なの…!!」

「仕方がない」


フィリップは慌てる。

「まさか…でも、そこまでしなくても」


父親は真摯な目で息子を見つめる。

「昔は恥知らずな王族を殺すことが当たり前だった。それとも、外部からそれをされたいのか?」


――――――――――


翌朝。

牢の中のクローイに、食事が運ばれる。

「…誰?誰か来てくれたの?」


兵士の足音が聞こえたその瞬間、クローイは高速詠唱のように”お願い”をはじめた。

彼女のユニークスキルの説得が発動されている。

しかし。

「どうして私のお願いが効かないの…?あなた、もしかして耳が聞こえない?」


伝説によると、精神操作系の魔法使いと戦い、打ち勝った勇者は、聞こえに不自由を抱えていたという。

メドゥーサを討伐した盲目の剣士なども同じように数百年、数千年単位で語り継がれている。

ハンデは時に世界を救うのだ。

「顔を見て…私の目を…お願い…お願い…お願い…お願い…お願い…お願い」


目を合わせると、目で説得されてしまうとあらかじめ伝えられているので、顔も合わせようとしない。

食事だけを置いて、兵士は去っていった。


――――――――――


「食べたか?」

「いえ。観察にジャッカロープを向かわせましたが、食事は減っていなかったようです。このまま食べずに餓死される可能性もあるかと」

「それならそれでいい。とにかく、病気だと触れて回れ」

「かしこまりました。ところで、ジャッカロープが説得されてしまい、棒やすりを奪って牢屋へ戻ろうとしたので殺しました」

「…ハァ」


――――――――――


カントリーハウス。

レジナルドは午前の乗馬を楽しみ、午後からは算数の問題を解いていた。

お供はビルだ。

「…おお、あまりのある割り算と仲良くなれたぞ?」

「そいつすぐ裏切ってきますよ?」

「同レベルの学力の人間同士で勉強してると、やはりレベルの低さを実感してみじめに思えてくるなぁ」

「小数点を信じられますか?」

「俺はもう小数点を受け入れた。観念したからな。お前も早く諦めて”こっち側”へ来い?」

「0と1の間に数字があるといわれて、それを素直にヨシとすることはできません。自分の目で見たわけでもないのに」

「数直線を作れ。数直線を作れば見ることができる」

「やめてください!可視化すれば私の疑念が晴れ、真実があらわになってしまいます!!!!」


ビルの願い空しく、レジナルドは紙に大きく0、0.1、0.2、0.3………0.8、0.9、そして1と書いた。

「小数は存在するんだ!小数は存在するんだ!!」

「嫌ですよおおおぉぉ…!」


確かな一歩ではあるが、余りにも歩幅が小さすぎる。


――――――――――


アリディンバリス、ゴブルミドルの大教会。

「どうでしょう。きちんとお祈りをされましたか?」

「…うん」


スカーレットは午前と午後からの祈りに参加していた。

叩かれた顔も、引っかかれた傷もキレイに治っている。

前日の戦いのあとが酷いものだったので、回復魔法を使える聖職者にアザやかさぶたを治してもらったのだ。

しかし祈りに集中できたのは、何より教会側の配慮があってのもの。

憎きゴールディは離れた場所に座らされ、絶対にケンカが始まらないように見張りを付けられるなど調整されていたのだ。

もっとも、そのような気配りもケンカの星の下に生まれてきたご令嬢の前では野の花のごとく散らされてしまう。

「お部屋に戻りましょう」


スカーレットはゴールディの居る方をチラッと見た。

相手も自分を睨んでいたらしく、目が合う。

「!?」


ダッシュで彼女のもとへ向かう。

「いけません!スカーレット様!!」


引き留めようとする聖職者の手を払いのけ、タックルで突き飛ばす。

ふてぶてしく腕を組んで立っているかたきは、ボロボロの服と肉体のままだった。

「ちょっと!酷い有様じゃない!?治してもらえなかったのねぇ?」


ゴールディはアザも引っかかれたかさぶたも、すべてそのままだ。

スカーレットの爪の先が目に入ったことで雑菌が増殖し、目もパンパンに腫れていた。

「ご機嫌いかがですかスカーレット様。あら、申し上げにくいのですが、スカーレット様はツルツルのお顔でございますね?」

「はぁ?何が申し上げげにくいの?ああ、私に暴力を振るった罰で、治療してもらえなかったと申し上げにくいって意味?比較して後悔しているの?残念だったね、天罰でしょ、ここはまさしく教会なんだから!」

「いえいえ。貴重な回復魔法を使える人間の魔力を、ゴミみたいな女とのケンカの傷の回復に使うほど、私は同胞である市民に冷たく出来ないので。”申し上げにくい”、のですが、スカーレット様は不幸にも病気にかかって苦しんでいたり、不慮の事故で怪我を負ってしまった平民への治療の順番を押しのけ、ご自身のお顔をツルツルにすることに魔法を使わせたわけでございましょう?それってビックリするほど貴族貴族しぃでございますわね?私も説明不足で。どこかのご令嬢のように立て板に水でベラベラと説明できればよかったのですがぁ?」


スカーレットはゴールディに掴みかかった。

ゴールディも負けじとスカーレットの手を取り、噛みつく。

「キャーーーッ!!!!」

「やめなさい!」


聖職者長の声が響いた。

「やめなさい!2人とも、反省室行きです!!!」


――――――――――


「ちょっと、なんなのこの部屋は!?」


窓もなく暗い部屋に連れてこられ、魔法道具のランプだけが、ひとりにひとつ渡された。

「失礼ですが」

「失礼なことはやめてよね」

「…おっほん。スカーレット様。まったく失礼ではないので、ただ事実を申し上げますと」

「何?」

「わざわざゴールディに向かって走っていって、ケンカを売りましたね?」

「そ、それは…」

「どちらが悪いですか?」

「待ってよ!このクソバカは私の手を噛んだの!!まずはそっちを叱ってよ!」

「なら、ゴールディ」

「はい…」

「あなたも犬じゃあるまいし。スカーレット様の手を噛みましたね?」

「でも、先にそっちが私を掴もうと手を伸ばしてきたんです。たまたま口が?歯が?当たっただけで…」


聖職者長はため息をついた。

「ここに、小さな転生させ女神様の像がございますね?私も一緒にお祈りしますから、自分たちの行為を反省してください」

「…はい」

「では、退席いたします」

「ちょっと、聖職者長も一緒に祈ってくれるんじゃないの?」

「ここは”反省室”ですから。私は廊下に置いてあるチェアに座って祈ります。あなた達は、立ったままか、疲れたなら床に座ってお祈りするように」

「何分ぐらい?」

「1時間です」

「ええ~~~~~~~~~~~っっっ!?!?!?」

「反省を女神様と、そして何より自分の心にお示しください。理解できましたか?」

「はい」

「私をこんな小部屋に閉じ込めたことを後悔させてやるんだから。年寄りだからって、なんでも従ってもらえると考えてるなら、そっちこそ反省しなさいね!?」


無情にも扉は閉められた。

外から鍵のかかる音が聞こえる。

「し、し、信じられない…私のおじいさまは領主なのに…私は…スカーレット・ワーグマンなのに!!!こんな、こんな…子供向けの寓話の愚か者が入れられるような場所に!?絵にかいたような反省室に閉じ込められて…!?」

「…」

「1時間も!?何の権限があって私を閉じ込めてるわけ!?恥をかかせておいてただじゃ済まないんだから!!ここから出してよ!!」

「…」

「あんたは反省室に入れられて不服じゃないの!?」

「………足音、遠のきました?」

「え?」

「ここからチェアまでは結構遠いんですよ。聖職者長は行ってしまわれましたか?」

「…もう足音は聞こえないけど」


ゴールディは、部屋の隅にランプを置いた。

濁った眼でスカーレットを見つめながら、スゥッ…とファイティングポーズを取る。

「声を出せば人が来てしまいますから。無言で…」

「あ、あなた…」

「つけましょうよぉ…”決着ケリ”を…ドブ女ぁ…!!!!」


薄笑いを浮かべたスカーレットも部屋の隅にランプを置く。

部屋の対角に置かれたランプは、四角いボックス、反省部屋を照らした。

スカーレットは緩く腕を前に出し、拳は握らずに指も軽く曲げ、前傾姿勢を取って足を肩幅より少し開いた。

その両足は左を後ろ、右を前に出し、相手の急な動きに対応できるよう、細かいステップを踏む。

「ハッ…そっちこそ…いつまで悲鳴を出さずに耐えられるか…」


相手がゆっくり前に出たので、スカーレットは右側に足を移動させつつ後退する。

背後に壁の気配を感じ前進に転じると、今度はゴールディが警戒気味にバックステップを踏んだ。

そして、あるタイミングで…互いの右手が相手に向かって高速で飛ぶ。


――――――――――


ワーーーーッ!ゥワーーーーッ!オオーーッ!!

歓声が沸いているのは広い室内だ。

天井は高く、闇に包まれているが、スカーレットの立っている場所は眩いばかりに照らされている。

「!?」


スカーレットは辺りを見回した。

あの小部屋に居たはずが、いつの間にか高い金網の中にいる。

格好もワンピースではなく、スポーティなファイトコスチュームだ。

「いいぞ~~~~!」

「殴れぇ!!」

「詰めて押さえろ!上を取るんだ!!」


金網の向こうには大勢の”何か”が居た。

人間らしい形の者も見えるが、モンスターのような変わったシルエットも見える。

「どっちが勝つだろう?」


転生させ女神はポップコーンを食べながら観戦している。

席は金網のすぐ目の前の特等席だ。

ゴールディは笑い出した。

「…おあつらえ向きの会場じゃないですかぁ…さっさと”ツけ”ましょう…」

「…っ!?」


ゴールディは手に炎のアトモスフィアを集めている。

「教会じゃなければ自由に戦えますからねぇ…感謝しますよぉ転生させ女神様…一度もちゃんとお祈りなんてしたことが無いのに、こんなステージを用意してくだすってぇ………死ねぇ!!」

「死ぬのはそっちでしょ!!」


さすが貴族、魔法を練り上げる集中の時間が1秒あったか無かったかの土壇場で、ゴールディと同じだけの火を作り出し、それをぶつけて相殺した。

「ぐっ…!?」

「fighting fire with fire!火には火をもって戦え、ってね!」

「まだまだぁ!!!!食らえぇ!」


火が矢のように真っすぐ飛んでくる。

ファイアボールより見えずらいので、回避は困難だ。

「ハァっ!!」


スカーレットは火の盾を回転させ、ゴールディに向かって押し出した。

散った火花は金網に当たり、また線香花火のようにパチパチとギャラリー側に飛び散って跳ねる。

歓声がひときわ大きくなった。

「どれだけ遅い攻撃なんですかァ!?貴族ってこんなモンだったんですねぇ!?」

「まったくちょこまかとうざったいんだから…逃げてばっかりで、あなたの前世ってネズミだったんじゃない!?次の魔法で焼き殺してあげる!ファイアボール!!」


スリリングな攻防が続き、会場は賑わう一方だ。

スカーレットもゴールディもハァハァと息を切らしはじめる。

「ぐっ…魔力が…」

「所詮は平民ね!…ハァ、つ、次の攻撃で最後だから!」


スカーレットは渾身の連続攻撃でファイアボールを次々と繰り出す。

「焼け死ねぇ~~ブスがぁ~~!」

「クソっ…こんな…こんなバカ女に負けたくないっ…!!」


ゴールディは最後の力を振り絞り、自分の体に炎をまとわらせてファイアボールを金網に流した。

金網が地獄の青い炎に燃える。

「いいぞ~~~~!」

「凄い!やっぱりスカーレットが強いな!」

「いやいや、平民なのにゴールディの潜在能力は大したものだ!」


急にフッ…と会場が暗くなる。

金網だけが青白く宙に浮いた。

「!?」


暗転から明転、スカーレットは控室のような場所で座っている。

「こ、ここは…!?ゴールディは!?」

「イヤぁ!素晴らしい戦いだったな!」


メガネをかけたゴブリンが手を叩いている。

「残念だったな。さっきの戦いはお互い魔力切れで決着がつかなかった。しかしどうだ対戦相手のゴールディは!平民で魔法の練習もそれほど積んでないというのに、彼女の能力はなかなかのものじゃないか!」

スカーレットは頭に来た。

「ちょっと、私のほうが優勢だったんだけど?っていうか、あなたはどなた?」

「私はスカーレット様のマネージャーだよ。もしよかったら、今日はゆっくり休んで明日また再戦しないか?」

「再戦…!?」


息を呑む。

明日こそ決着をつけられるのだ。

「…ここってどこなの?」

「どちらかが諦めるまで戦い続けられる場所だ」

「!!」


絶対に勝ちたい。

相手への憎しみが、互いの判断を誤らせる。


――――――――――


「は?」


教会の馬車が屋敷に着いたかと思えば、スカーレットが忽然と姿を消してしまったと告げられる。

「転生させ女神様の御業でしょう」

「…つまり?」

「これをご覧ください」


”反省室in金網タイトルマッチ アマチュア・キャットファイト地方大会 転生させ女神主催 会場ゴブルミドル大教会 落黄の月の1日~どちらかが敗北を認めるまで 協賛・魔法石製作&埋蔵委員会 貴族VS平民の奇跡の一戦を見逃すな!アマチュアキャットファイトの王者に輝くのは果たして…!?”と書かれた紙のチケットが手渡された。

「は????????」

「2枚ございましたので、相手も一緒にどこかへ連れていかれたのでしょう」

「どこかとは????????」

「心ゆくまでケンカができる場所かと」


スカーレットの母親は気絶した。

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