人質生活83日目
「マシューは?」
朝、レジナルドがダイニングルームに顔を出すと、そこにマシューの姿は無かった。
執事のハインリヒが答える。
「体調がすぐれないので、朝食は部屋で食べると」
「貴族ぶりやがって…!傷ついたのは俺の方なんだぞ!?」
ズタボロのテスト結果から回復したレジナルドが、腕を組みながら話す。
「…謝罪したほうがいいだろうか?」
「謝罪とは何を?」
「算数のテストが全然できなかったことを、だ」
「いえ。もっといい方法がございますよ。行動で示すんです」
――――――――――
「私の先読み力をお褒めください」
セーラは子供用のドリルをレジナルドに手渡した。
「ふん、昨日の騒ぎに同席していれば、俺に勉強が必要だと誰でも予測がつくだろう。どれどれ…って、2冊あるじゃないか!?」
「オホホ。私も基礎的な勉強をやり直そうかと。計算がダメダメで、いつも得意な人間に任せてしまいますから。牧場には経理専門の人間もおりますしね」
「確かにな。どれだけ頭のいい人間でも訓練を怠れば衰えていくだろう。よし!一緒にやるぞ!」
みっちりとドリルに取り組み、桁数の多い足し算、引き算が出来るようになった。
「ふふっ…もう完全にマスターしてしまった。7+8は15!………15だよな?ええと、7は5と2。8は5と3。5+5で10。残りの2+3で5。合わせて15。ああ、多分合ってるな!」
「私は引き算にひっ算のミスが多くてガッカリしました。でも一冊終えられて良かったです。では、これをお渡ししましょう」
「ぐえ~っ、掛け算と割り算のドリルじゃないか…」
「昼食を終えたらそれに取り組んでください。私も家で頑張りますよ」
「仕方ない。またフィリップと戦うこともあるだろうからな」
「…対等に戦えるようになるまでは、かなり長い道のりでしょう。私もコツコツと頑張ります」
「サボってきた18年を一度に取り戻せる道理はない。ハァ…とにかく…昼飯だ!」
――――――――――
ランチに誘おうと、レジナルドは通訳の部屋を訪れた。
部屋から出てきた彼は、明らかに目に生気が無い。
「レジナルド様、ご機嫌いかがですか」
「俺の機嫌よりもお前の体調はどうした????」
マシューはよろめきながら、部屋の中に案内する。
「それが…私もよく理解できていなかったんです。自分の事を」
「ご、ごめんな?」
「あまりに頭の悪い人間と接していると体調が悪くなってくるようで」
「酷すぎて草」
笑いながら部屋を見回すと、大きなレザートランクが目に入った。
「え!?ま、まさか俺がクソアホだから愛想をつかして通訳を辞め、出て行くつもりなのか!?そんな!!これを見てくれ!!」
「…おや、足し算と引き算のワークじゃございませんか」
「セーラが買ってきてくれたんだ…頑張って勉強するから…出て行かないでくれ…ハインリヒは頼りがいのある男だが2回に1回は狂気を感じるから困ってるんだ…俺は自分を指導してくれるまともな大人を求めている…執事は裏と表の表情が違い、それらは互いを見る事無く生涯を終える一枚のコインのようなヤツなんだ…一緒に居すぎると精神的に混乱してしまう…!!」
マシューは笑った。
「それにしても流石セーラさんですね。ハインリヒさんとビルに頼もうと思っていたのですが、先回りしてくださって」
「勉強を頑張るから、出て行かないでくれぇ~~~!!」
「いえ、出て行きますよ」
「!?」
開けっ放しの扉からビルが入ってきた。
「何ショックを受けてらっしゃるんですか。エロイーズさんの卒業式に出席されるんですよ」
「あああ!!!!そうだった!!!!」
今日は爽夜の月の最終日だ。
「ええ。収穫祭のテーブルに着けないのは残念ですが、心配事は減りました」
マシューはドリルをめくりながら答える。
「一冊終わっているじゃございませんか。私が居ない間も、勉強に励むとお約束ください」
「や、約束する!」
「では。安心していってまいります」
――――――――――
エントランス前には1頭立ての馬車が用意されていた。
幌付きの小さな荷車にレザートランクが放り込まれる。
「ハインリヒさんやベヴァリーの言うことをよく聞き、ビルやサイモン、シェフやコックに迷惑をかけないように」
「まかせておけ」
「お土産は何が良いですか?」
「いらんいらん!キャサリンとエロイーズによろしく伝えておいてくれ。慎み深く、多くを求めない良い人質だと!」
「たしかにそう伝えるためにはお土産を断るのが必須ですね。まぁ、期待して待っていてください。それでは失礼します」
庭に集まった使用人たちは手を振った。
レジナルドもモグラを抱きかかえながら手を振る。
「ああ…ポータルに入ってしまった」
「寂しいですか?」
「寂しくなんか…ない………」
「元気を出してください。今日は秋のお祭り、収穫祭ですよ!」
「…それは…最高だぁ!!!!」
喜びの表現で空中に投げられたモグラは3回転した。
「もう少し寂しがってもらわないと、マシューさんも悲しみますね?」
――――――――――
「ようこそ、スカーレット様。ワーグマン様に来ていただけるとは。とんでもない光栄です」
アリディンバリス、ワーグマン家の領地。
そこそこ栄えている中央都市、ゴブルミドルににある大教会。
一般市民の奉仕も受け付けてはいるが、希望者が多すぎて数年の順番待ちが普通の場所だ。
そこにいきなり割り込めるのだから、領主という立場は小さな国王なのだろう。
スカーレットは目の前の老婆に強い口調で話した。
「ねぇ見て…私、自分の荷物を自分で持ってる」
「偉いですね」
「あなたが持ちなさいって意味。それで、私の部屋は?」
「こちらへ」
結局荷物を持ってくれなかった高齢の聖職者長に案内されたその部屋は、質素ながらも全ての機能が集約されており、問題がなさそうに見える。
しかし実際に問題がないわけではない。
「…ハァ。どうして侍女は付けられないの?」
「”そういう施設”でございますので。3日間の御辛抱です」
「どうしても人の手を借りたいときもあるの」
「その場合はどうぞ、他人を頼ってください。ひとりで生きられる人間はおりませんからね。私はこんな年寄りですからお役には立てませんが、教会内に女性は大勢おります」
「わかった」
聖職者長が部屋から出て行くのを見送ると、スカーレットは長椅子に寝転がった。
天井を見上げながらウトウトし始めたその時、部屋の扉がノックされる。
「お祈りの時間です」
「…」
「スカーレット様?」
「…体調が悪いの。休ませて」
「サボりですか?」
血圧が一気に上昇したスカーレットはバッ!と飛び起き、ドアを思いっきり開ける。
快活そうなピンク髪の女性が立っていた。
「体調が!悪いの!休ませて!!!!」
「めちゃくちゃ元気じゃないですか。嘘つき」
「…は?」
「体調が悪い時はそんなに怒れないでしょう」
「あなた、何様なの?知らないみたいだから教えてあげるけど、私は領主の孫。わかる?この教会にどれだけワーグマン一族が寄付をしてきたと思っているの?親戚には調停官もいるし、引退しちゃったけど王城に仕えてた大魔法使いの叔母さまもいるし、ほとんどの職人ギルドや冒険者ギルドはワーグマン家の親戚で運営されてるんだから、私に逆らえばゴブルミドルにあなたの居場所は無くなるんだけど?聖職者って本当に身分を勘違いしていて嫌になっちゃう。教会内ではその態度で通じるかもしれないけど、社会に出たら恥をかくだけだから。弁えなさいね?ま、私のことを知らなかったようだから失礼な物言いを謝罪する機会を与えてあげるけど。でも許すかどうかは私の心情次第。それで?ごめんなさいは?いつまで待たせるの?」
「待たせるって、そんな矢継ぎ早に自慢されたらどのタイミングでも謝れませんよ?他人のブレスの隙間を縫っての謝罪スキルなんて誰も有していませんが?」
スカーレットのこめかみがピクピクと痙攣する。
「…お、おっもしろ~~~~い!」
「ありがとうございます♡」
「あなたって私の妹に似てる」
「クリスティーナ様に?」
「…知ってるじゃない」
「お2人とも憧れの存在でしたから。実際に会うまでは。こんな高飛車ノンストップ自慢サボり女だと知っていたら憧れたりなんかしなかったですよ」
「…っ!」
スカーレットは相手の肩に手のひらを置き、ぐいっと押した。
シンプルに感じが悪い。
「着いたばかりだし、ちょっとぐらい休ませてくれたっていいじゃないの!」
「ならそう言ってくだされば私は去りましたよ。なぜ体調が悪いだなんて嘘をついたんですか?本当に体調が悪ければ何らかの対応が必要になるじゃないですか。最悪お医者様を呼ばなければなりません。社会に出たことが無いのはスカーレット様のほうなのでは?嘘をついた事実についてはどう言い訳してくださるんですか?」
「私が嘘をついた?おもしろ~~~~い!お祈りなんかする気になれないと直接言葉にするのは失礼に当たるから、遠回しに体調が悪いと断った、この大人の対応を嘘って受け取ったの?こういう言い回しが通じないのは社会不適合者によくあるパターンみたいだけど?大丈夫そ????もしかして美人って言われたら全部美人って意味で受け取ってる?あなたに皮肉をかける人は楽しくて楽しくて仕方なかったでしょうね~~~~!」
「スカーレット様ってとっても美人でございますね♡それに頭も性格もよろしくって♡」
スカーレットは相手の足を蹴った。
――――――――――
「ケンカ両成敗です」
「…この女が一方的に叩いてきたの!髪まで掴んできて、こんなにぐちゃぐちゃにされたんだから!!コイツを追い出すまで、二度と教会に寄付なんか送らせない!!」
「いいえ、スカーレット様が先に私の肩を叩き、足を蹴りました。ムカついてそれをやり返しただけです。そしたら…」
「ううん、先にあなたが髪を掴んできたの!」
「スカーレット様が先に掴んできました!あと引っ掻かれました!!」
「手を振り回しただけ!爪が皮膚に当たったの!!」
「ハァ?うちのネコでももっとマシな言い訳しますよ!?」
「…私をネコと比べた?本気で?犬猫と比較したわけぇ????領主の孫と?」
「キィーッ!今までの憧れを返してください!」
「何なのアンタ!このっ!」
「先に!蹴っ!て!!」
「ち!!!がうで!!!!しょ!!!!!あんた!が!!!!」
「スカァ!!ァレット!様!!!!が!!!!先にっ!」
「ギャッ!見た?聖職者長!?今の見ていた!?」
「はぁ」
「この女、モンスター以下の最低な人間!!私の事を叩いたの!!見たでしょ?!?!」
「スカーレット様も手をブン回してゴールディを叩いておりました」
「やり返しただけ!」
「ちょっと!!こっちのセリフなんだけど!!スカーレット様が先に…」
「あなたがっ!先に叩いたでしょっ!」
「キャーッ!!!!このっ!!バカ!!勘違い女!!暴力人間!!」
「あなた!牢屋行き!!!!信じられない!絶対に!!!!ゆる!さ!ないんだから!!」
「痛い!!!!クズ!!何するの!このっ!」
「キャーッ!!!!」
「キィーッ!!」
いつの間にか聖職者長は退席していた。
――――――――――
「おお~っ!!!!」
トーラティカのカントリーハウスでは、使用人用のダイニングルームにレジナルドも招かれ、大勢で食事を取ることになった。
テーブルの上にはパンプキンパイや焼きアンダーヒル蟹、ピラミッド状に積まれた茹でキラキラコーン、クラーケンのフワフワスープなど、秋らしい豪華な食事が並んでいる。
「秋の収穫に乾杯!農家のみなさん漁師のみなさん畜産精肉に携わるみなさんありがとう~!!!!」
大喜びするレジナルドの目の前に、グレースケールグラデーションパンプキンパイの一切れが置かれた。
「チタニウムホワイトパンプキン、ホワイトパンプキン、ナチュラルホワイトパンプキン、ライトライトグレーパンプキン、ライトグレーパンプキン、グレーパンプキン、ダークグレーパンプキン、ダークダークグレーパンプキン、グレーブラックパンプキン、ブラックパンプキン、アイボリーブラックパンプキン、ピーチブラックパンプキンを並べて作りました」
「白だけで200色あると聞くし、無彩色のパンプキンパイは本当に美しいなぁ~!」
「一切れ一食分のカロリーがございますから、食べきれなければ残してください。朝食に温め直してお出しします」
ハインリヒがそう言い終わらないうちに、レジナルドはペロリと平らげてしまう。
「it's a piece of pie、ってな!」
隣りを見ると、ベヴァリーが名前クッキーを作って食べていた。
名前クッキーとは、板チョコぐらいの大きめの素焼きクッキーの上に、自分の名前をチョコレートやジャムなどで書いて、飾りつけをして食べるパーティ向けメニューだ。
「俺も作る!」
「先客がおりますから、その後で」
そう言うベヴァリーのヒザからひょこっとモグラが顔を出した。
「おおっ、モグラも名前クッキーを作るのか」
「ええ。シェフがラージ・カマドウマの身を乾燥させて、クッキーのようにしてくださったんです」
「いいなぁ、俺も乾燥昆虫を食べたい」
「コオロギパンをどうぞ。この板は特別にモグラのために作ってくださった品なのであげません」
モグラは大きな手でチョコペンを持ち、”Taupe”と堂々たる名前を書いた。
「トープか。そういえばモルリヴァール語ではモールではなくトープと言うのだな」
「ま、どちらもモグラに変わりはございませんが」
「いいや、俺は今日からモグラをトープと呼ぼう。なぜなら、モグラモグラと呼んでいては他のモグラと区別がつかないからな!………ちょっと待て、なら、今までは犬を”犬!”と呼んでいたようなものだぞ!?なぜもっと早くに名前を付けなかったんだ!?!?」
「盲腸知らずとか、カビの生えたジャガイモとか、ホコリとか、雷雲とか、たわしとか、やがて毛皮になるものとか、ふわふわの小石とか、ナチュラルボーン・スカルプネイルちゃんとか、そういう下らない二つ名で呼んでいたからでは?」
「最後の名前で呼んでいるのはお前だけだぞ?」
トープはサッ!と手の甲側をレジナルドに見せた。
秋らしい紅葉カラーのネイルは中でホロ箔が光り輝いている。
「おおっ!磁性を利用し、ラメ箔を寝かせることにより光の反射を最大にするマグネットジェルは美しいな!」
「それだけではございません。ゴールドの幾何学ラインを加えることでラグジュアリーさ、スマートさを表現し、渋くなり過ぎないように大きめのストーンをアクセントとして配置しております。ドヤ!」
「ドヤるな?」
トープも鼻をフンスフンスと揺らして自慢気だ。
――――――――――
「爆弾?何の話!?」
「計画書です」
同じくトーラティカ、王城。
国王の元に衝撃の知らせが走る。
「クローイ妃のお部屋にございました」
「…そんな…!」
「ニトロアナグマの血管をジャッカロープなど他の生物の血管とつなぎ合わせることにより、一定時間の経過後、血液の発熱により爆発を起こさせる仕組みになっていて…」
複数の動物とモンスターを生きたままつなぎ合わせるという最低の設計図…オペ図?が書かれていた。
「まったく手が焼ける!あの子、自分の夫だけじゃなく動物の命を奪うことにまでためらいがないなんて…ハァ、信じられない」
「さ、3人目までの配偶者様の死は偶然でした。クローイ様に落ち度はございません」
「3人とも結婚初夜に死んだのに?」
「世の中には信じられないほど低確率で起こる事故もございますし…」
「爆弾はどこにある?」
「さぁ。しかし予想はつきます。クローイ様は派手好きなので、パーティの目玉に仕掛けるのでは?」
「収穫祭で一番大きいものといえば…ローポリ・ターキー!?」
国王と侍女はまだパーティーの準備中のホールへ飛び込んだ。
「皆!ここから出ろ!!爆弾が仕組まれている!!」
「!?」
「キャー!!」
「こ、国王様!?」
「早く避難しろ!廊下は混雑するからガラスを破って出ろ!早くっ!!」
ものの3分でホールを空にし、国王と侍女は会場の中央にある長方形のローポリ・ターキーを見つめた。
実物を見たことが無い人に向けて説明すると、ライトブラウンの羊羹が柱のように立っている外見と説明しておこう。
ターキーをすり潰して液状にし、他の動物のゼラチンと混ぜて作る巨大な秋のシンボルだ。
面が少なければ少ないほど尊いとされ、伝説によれば転生させ女神は秋に完全平面ターキーを食べているという。
制作に挑戦した料理人は多いが、その度に夢の中に転生させ女神が現れ、二次元世界の点&線ファームでしか完全平面ターキーを育てることは不可能だから諦めろと忠告してくるらしい。
自慢しいな女神だ。
「あなたも離れなさい」
「お供いたします」
「…」
国王は剣を抜き、ローポリ・ターキーをザクっと切りつける。
反対の向きから侍女も剣を刺した。
何とも言えない気味の悪い弾力のゼラチンが剣をはじき返してくる。
「ああ…人を切っているような背徳感がたまらないなぁ!?」
「”収穫祭”の起源をご存じですか?なぜ秋の収穫を祝うようになったのか…古代に大飢饉が発生し、冬を越すことが難しくなった時期があるそうで。”これは収穫祭だ”と自分達に言い訳をしながら…」
その時、ゼラチンがガボッ!!!!と不快な音をさせて真っ二つに割れた。
血しぶきが辺りを汚す。
ぶよぶよで茶色いローポリターキーの中に爆発物代わりのニトロアナグマが見えた。
「国王様!赤の動脈を切ってください!」
「わかった!」
間一髪、爆発は阻止された。
――――――――――
「じゃあ、くじ引きやりま~~~~す!!!!」
ビルが大声で叫ぶと、レジナルド達は一列に並んだ。
サイモンが笑いながら話す。
「カット役をやったことが無いんです、当たった人交換してください!」
「ダメダメ!」
「ハハハ、私もですよ~いつも被カット役ばかりで!」
全員くじを引き終わり、くじの紙を広げる。
半分ずつカット役と被カット役に分かれた。
「じゃあ、カット役の人はローポリターキーを切り分けてください~!」
残念ながらレジナルドのくじには”被カット役”と書かれていた。
「いつも思うんだが、くじ引きで決めるのはカット役だけで良くないか?」
「うふふ、確かにそうですね。モルリヴァールの習慣をそのまま受け継いでいるだけですから文句は言えませんが、なぜ切り分けてもらう側までくじで決めるんでしょうか。カットする側だけ”あたり”にすればいいのに」
サイモンが首を振る。
「いえいえ、無意味なことにこそ伝統と歴史と先人の願いが息づいているんですよ!」
カットされたローポリターキーをみんなで食べる。
「カロリーの味がします!ただカロリーを得るためだけの食品の味です!油って美味しい!」
「これを食べると秋が終わるんだなぁって思いますよね。カロリーをとって冬を越さないと…」
「元が何だったのかわからないレベルに抽象化された長方形のフォルムが良いですよね。趣があって」
「ええ。すり潰された生き物の肉なので実際にはターキー以外の何かなのかもしれませんが、そんな事を疑うのがバカバカしくなるぐらい動物性油脂だなぁって味がして最高です!」
「どうして誰もウニ葡萄のワインを飲まないんだ?」
「泣かないでくださいレジナルド様。お酒を運んでいた馬車が横転して、全て川に流れてしまったんです」
「俺だけ先に寝かしつけて、使用人たちでこっそり飲むつもりだろ?」
「どうして知ってるんですか?」
「こんな雑なカマかけに引っかかる人間が今までよく生きてこられたな?」
――――――――――
「クローイを牢屋へ!」
国王の命令により、妹は捉えられた。
あっという間に鉄格子の向こう側だ。
「どうして?みんな喜んでくれると思ったのに…爆発で砕け散ったローポリターキーが笑顔のみんなの口に放り込まれるシーンを想像して…?凄くいいでしょ?どうして実現させてくれなかったの?」
「見張りの兵士も交代で収穫祭へ顔を出すように。決してクローイの傍には寄るな。話しかけてきたら逃げろ」
はっ!と兵士は気合いの入った返事をした。
そのままクローイの姉である国王は牢屋から出て行く。
「せめて部屋に!部屋での謹慎にして!!」
「今回のトラブルは議会で話し合う」
「お願い…2人だけの姉妹なのに…どうしてそんなに厳しいの…?」
姉の足音が遠ざかると、クローイはワンワン泣きだした。
「グスッ、ああ…そんな…」
兵士を説得しようにも、かなり離れた場所に立っている。
さらに、イヤーマフまでつけているように見えた。
力なくクローイは石の床に倒れる。
「お父さまに言いつけてやるんだから…だってそうでしょ…お姉さまは王様に向いてないの…お父さまが国王の頃は良かったのに…私をこんなにひどい目にあわせて…絶対に許さない………」




