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人質生活64日目

「おお!清々しい秋の晴れ空だな!」


ウキウキで着替えてダイニングルームへ向かった。

晴れたことに喜んでいるレジナルドを見て、マシューが喋る。

「残念ですが、今日はセーラ様はいらっしゃらないでしょう」

「地面が緩んでいるからだろ」

「お判りになりますか?」

「2日も雨が続けば土はたっぷり水を吸うからな、流石にそのぐらいの知識はついてきたぞ!」

「かわりと言っては何ですが、午前中は秋服が体に合うか確認しましょう」

「ああ、直しが必要になるほど俺は痩せたんだ。冬が来る前に冬服も確認しないとな」


その判断は少し間違っていた。

いつもの時間にセーラがやって来たのだ。

執事のハインリヒが驚く。

「ここまでの道、大変だったでしょう!」

「馬車なら苦労したでしょうが、単騎でスピードを出さずぼちぼち来ましたから。ところで、良い知らせを持ってきました」


ハインリヒはメモを受け取る。

「!」

「朝一番にノットサスピシャスバードが届けてくれました」

「こんなに早く、直接宰相と面会できる日取りを決めてくださったのですね。13日の夕方、ですから明後日ですか」

「返事が早いという事は、向こうも”思うところ”があるのかも知れませんね。オービター牧場は関与いたしませんから、マシュー様とハインリヒさんのお2人で王城まで出向いてください」

「この”夕方”は夜の方ですね?」

「ええ、多分そうでしょう。昼食後からの出発で充分間に合います。というか、その日に帰れるかどうかまで保障いたしません」

「ご配慮くださりありがとうございます、この機会に…王子様の振る舞いについて上申できたらと思っております」

「国のためになりますように。あなた達に罰が無い事を願ってはいますが」


あらかた話し終わったタイミングで馬係が来て、厩舎の火事についてセーラに説明した。

それを聞いたセーラは顔をしかめながら厩舎に小走りで向かう。

馬係と執事も後を追った。

「馬は大丈夫だったのですか!?」

「ええ、驚いて倒れた馬も何頭かいたのですが、レジナルド様が回復してくださいました」

「驚いただけではなく、落雷は地面を伝うものですから肉体へのダメージがあった可能性があります」

「えっ!」

「歩行や走行に支障が出ることもあり、もっと長期的に様子を見ていく必要があるでしょう」


セーラは首や鼻先や足を撫でながら一頭一頭の様子を見ていく。

「引退した軍馬を置いているとはいえ、このカントリーハウスも国防の一端を担っている事を否定できません」

「ええ、馬は大切にしようと思っているのですが…自然災害は避けがたく」

「直接の落雷で藁に火がついたのですか?」

「それがどうも屋敷の避雷針から雷が飛んだようなのです。私は風魔法しか使えませんからわからないのですが、火魔法を使えるレジナルド様が、避雷針から熱が移動したとおっしゃっていて」

「こういう不幸な事故に限って2度目3度目がございますから、何とか対策を立てませんと」

「ええ。早急に厩舎を屋敷から離れた場所に立て替える工事を始めたいと思っております」


3人で厩舎の中を見て回ったり、馬の様子を確認して話し合ったりした。

が、その落雷が直撃して焦げ焦げになっているエピオルニスを心配している者は誰も居ない。


――――――――――


「なんだ、来ていたのか!」


マシュー、レジナルドはセーラと共に茶の時間を迎えた。

「こんないい天気なのに乗馬しないなんてもったいないからな!今からでも少し乗ろう!!」

「いいえ。今日の足場は超最悪なコンディションでございます。馬が滑る可能性を考慮いたしますと、こんな日に乗馬をすべきではございませんよ」

「………お前は数時間かけて馬を走らせてきただろう?」

「オホホ!年季の入り方が違いますので。さて、私が今日来たのは、明日の転生させ女神像のお披露目…もうみな知っているのでお披露目会と言っていいのか疑問ですが。それについてです」

「完成パーティには美味しい食事を出してもらうんだ!」

「食事も大切ですが、なにか捧げませんと」

「お前の牧場から?」

「ええ、革職人に作らせた珍しいパズルのピース模様の乗馬ブーツがございますので、それをお捧げしようかと考えております。実際にパズルのように色の違う革を用意し、縫い合わせました」

「…右足か左足かのどちらかでいいから、俺にこっそり譲ってくれ?」


マシューが”なりません!”と声を荒げて注意した。

「チッ」

「オホホ。別の乗馬ブーツならお売りできますよ。小花やモノグラムのモチーフが、焼き印によりリズミカルなパターンで押されていて、それはそれは高級感溢れる…」

「セーラさんも、隙あらば商品を売りつけようとしないでください!」


レジナルドは大切な事を思い出した。

「ところで上級使者の御機嫌はどうなんだ?」

「明日の完成会にはいらっしゃってくださるそうですから、まあ…転生させ女神様ご本人に会われましたし、もう二度と”像の設置は認めない”という主張はなさらないでしょう」

「それは一安心だ。で、上級使者は何を持ってくるんだろうなぁ…食べ物だったら供えた後にみんなで分けて食べねば…」

「天高く馬肥ゆる秋と言いますが、王族の方も食欲のコントロールに悩んでいらっしゃるのでしょうか?」

「そ、そんな事実はない!!ただまあ、ホールケーキを持ってきたきたなら皆で協力して消費しないとな????」


モグラは笑うようにシッポをプルプル震わせた。


――――――――――


「私は天才だ」


アリディンバリスでは第一王子のブレンダンが手紙を書き上げていた。

「呪われたアイテムを保管する施設を作ろう」

「…誰が管理するので?」

「以前、魔法使いを養成する施設…教育機関、学校、みたいな場所を作ろうという計画が議題に上がったんだ。その魔法学園にくっつけて作ってしまえばいい。上位の光魔法を使える人間が集まって来るだろうし、そいつらに浄化させればいいんだ」

「なるほど。謎のユニークスキルでエンチャントされたアイテムもそこで一緒に保管させればいいのですね」

「今日、午後からの議会で提案してみよう。まあその前にお父さまに話して絶対に計画が許可されるようにしておくが。主要な大臣たちにも根回ししておいてくれ」


ブレンダンは計画に賛同してほしい、という手紙を持たせた従者3人を部屋から出した。

「頼んだぞ。ああ、普通の美術品も”第二王子のコレクション”として飾ってしまえばいいわけだ。ついでに王城にある呪いのアイテムも押し付ければ、この城はより清らかで神聖な場所になる!」


――――――――――


午後。

レジナルドはエピオルニスに頭絡をつけ、庭を散歩していた。

と言ってもサドルには跨らず、手綱を引いて隣を歩いているだけだ。

「まったく、お前の乗り心地は最低だからな。まあ、観察していればわかる事だが。頭部のみを固定し、首から下は縦横無尽に動かすのがお前たち鳥類の体の仕組みなんだろう?背に鞍を乗せたところで…人間が揺れに合わせて正反動どころか、軽速歩の立ったり座ったりをしなきゃならないしなぁ」

エピオルニスはうんうん、というように首を動かした。

「というか、2足歩行では体が大きく沈む瞬間がある。4足歩行では沈み込みが小さいのかもしれないな。それなら6本足のモンスターは最高の乗り心地なんだろうか?とにかく…えっと…」


レジナルドはまだ黒いエピオルニスの体を、頭からつま先まで見た。

「えっと………感電して、その後、大丈夫か?」

「クエッ!」

「何なら以前より健康そうだな…?」


――――――――――


アリディンバリス第二王女イザベラは、ゾーフ国境沿いにあるムーア家の屋敷で、愛しのジェフを見送った。

「ああ。行ってしまった」

「王女様、そろそろわたくし共も王城へ戻りませんと」

「砂嵐の向こうへ…」

「王女様っ!!」

「ハッ!」

「浸っていないで。帰りましょう」

「…は~い」


イザベラは渋々帰り支度を始めた。

しかし、渡りに船が来ることもある。

兵士がノックもそこそこに部屋に飛び込んで来た。

「王女様!良いニュースです!!」

「悲しみに暮れる今の私に、良いニュースなんてないんだけど?」

「ちょうどドラゴンが回ってきて、ホテルの庭に着地しているそうで。荷物は後から我々が運びますから、先に城へお帰り下さい」

「そ、そんなっ!!まったりと道々で食べたり飲んだり宿屋で遊んだりするのが旅の楽しみなのに…!?」


侍女がババっ!とイザベラの装身具などをトランクに詰め、秒で身支度を済ませた。

「さぁ~帰りましょう!どうせまた終年の月にはゾーフへ避寒しに来るのですし!」

「まだ居たい!!まだ居たい!!」

「ムーア様の一族をあまり困らせないでください、お父さまに叱られますよ?それともジェフ様に嫌われたいのですか????」

「…」


ドラゴンの背に括りつけられた座椅子を思い出してイザベラは憂鬱な気分になった。

ひとりの使用人が近寄る。

領主の第一侍女で、だいぶ高齢だ。

「イザベラ様、失礼いたします。本来ならば主人自らお送りするべきなのですが、砂漠へ向かいましたので、我々使用人だけでのお見送りをお許しください」

「…ま、国境の警備以上に大切な仕事は無いからね。仕方がない、許して差し上げます」

「寛大なお心に助けられております。道中、目を保護するための風魔法の使い手は充分でしょうか?」


イザベラの侍女が胸を張った。

「中位の風魔法を使えますので、目と口鼻のシールドはご心配なく」

「それは素晴らしい、やはり王女様のお傍で働かれる侍女さんともなれば、超一流の人材が選ばれるのですね。ところでこれをブランケット代わりにヒザに乗せていってください、他のお別れのお土産は馬車で運ばせます」


イザベラは興味を示した。

「これは…茶色いデブ犬のぬいぐるみ?センスいいじゃない!フカフカで暖かいし、触り心地もなかなかで。ゾーフの町で作らせているの?」

「いえ、王都で大流行しているミュージカルに登場するモグラだそうで。王都で購入したものです」

「モ…グラ?」

「はい」

「モグラ?」

「そう聞きました」

「…モグラのぬいぐるみって初めて見たけど」


――――――――――


トーラティカのカントリーハウス。

使用人たちが台風一過の荒れ果てた庭を片付けたり、大急ぎでタフタフリッチに買い出しに出かけている間、マシューとレジナルドは語学を学んでいた。

「なるほど、転生させ女神様に話しかける言葉はモルリヴァール語なのだな」

「明日の完成会で聖職者長のルイスさんが口にするでしょう。モルリヴァール語も覚えておいて損はありません。ただ、古い言葉なので男性名詞と女性名詞がございます」

「任せろ!それってもちろん文法的なルールに基づいて男女が分けられているんだよな?」

「いえ、分類に何の脈絡もないので、丸暗記だけが解決策です」

「任せないでくれ」

「ニンミィアには中性名詞もございます」

「あんな小国には行かないから大丈夫」

「レジナルド様が向かわなくても、ニンミィアは海洋国家ですから向こうから出向いてきますよ」

「アイツらが養殖してるドレスフィッシュの革の品質だけは認める。あと、焼き物と織り物と巨大彫刻の技術も認める。あと建築もめっちゃ凄い」

「全認めならちょっとぐらい言語を学んだっていいじゃないですか」


明日の儀式に向けての準備は万端だ。


――――――――――


「…以上が私の提案です!」


アリディンバリスの議会に第一王子の声が響き渡る。

議員数名が立て続けに賛同の意見を発言した。

全員が拍手を送る中、国王が満を持して命令する。

「魔法使いを養成する学園については以前から議論が繰り返されていた。皆ももう充分納得ができている事業だろう。財源の確保だが、国債を発行して調達するように」


大臣たちから拍手が上がる。

ひとりだけ悔しそうにしている議員がいた。

「クソっ…私や仲間が何十回と議題に上げ続けてきたのに、第一王子様が発言した途端に予算付きで可決とは…どうなっているんだ」


隣りにいた初老の女性議員が慰める。

「まあまあ…内容が価値を持っているなんて初心者じみた思い入れは捨てたほうがいい。”何を言うか”ではなく”誰が言うか”なんだから」

「うぐぐっ…!」

「それに第一王子様はしっかり根回しされていらっしゃったようですし、まあ、良い踏み台経験という事で、ね?」

「…っ!!!!」


真反対の王族席で王子は笑いながら、良いアイディアとは複数の問題を一気に解決するものだ!と妹のアデレートに話しかけていた。


――――――――――


「魔法学校に付属した”資料保存館”か」


資料を見ながら国王がボヤく。

「ちょうどいい、宝物庫にぶち込まれている骨やらトーテムやらもそこに収めればいいだろう」


従者が首をかしげる。

「レジナルド様からの許可は、手紙を通じて取るんですか?」

「許可を取る前に建設を決定したっていいだろ?」

「良くは無いかと…」

「あいつの稼いだゴールドで買い集めた物じゃない。個人の財産という建前ではあるが実際は国の所有物なんだから、手紙で知らせてもらえるだけ有難く思えばいい」

「しかし、勝手にレジナルド様の所有物を移動させても大丈夫でしょうか?第二王子様がトーラティカで横暴に振舞えば、アリディンバリスへ身柄が送り返されてしまうんですよ?帰って来た時に自分の部屋へ再びコレクションを戻させるおつもりで?」


国王は茶を啜った。

「よくそこに思い至ったなぁ?」

「………まさか」

「愚かな息子の顔なんか二度と見たくない。その魔法学校の資料保存館の館長にでもすれば、外面も保たれつつ、王城から追い出せるだろう?余りにも無様に振舞うのなら毒殺すればいい」

「ブレンダン様とアデレート様、それにイザベラ様もいらっしゃいますから、確かに後継者の心配はございませんが…国王様のご子息ではございませんか」

「変わり者のアイツの事だ、案外喜んでその境遇を受け入れるかもしれないぞ?ふっ、想像するだけで笑えてくるな。ま、そろそろ化けの皮が剝がれて、トーラティカから戻って来る頃合いだろう」

「しかし想像とは違い、未だしおらしく過ごしておられるようですね」

「こちらには漏れ伝わってこないだけかもしれんぞ。密偵をもっと増やせればいいのだがな。トーラティカばかりにスパイのリソースを割くわけにはいかないし」


別の従者が国王のティーカップに茶のお代わりを注いだ。


――――――――――


アリディンバリスの郊外。

焼け落ちた木材や、黒くなった石の塊を見て近くに住む犯罪者たちはぼやいた。

「呪いのアトモスフィアを感じるなぁ」

「騒ぎが続いたからな。しばらくは建物を建てられないだろう」

「ここらのヤードも店じまいが続くけど、俺たちの商売は設備もあるし簡単に移動できないからな」

「ボスの甲斐性無しっぷりにはうんざりだ、もっとも、能力のある悪党は何年も前に別の領地に拠点を移しちまっただろうからな」

「ああ、こっちの動きが遅かっただけだ…兵士に目をつけられてやってける自信なんて無いよ」


その予想は当たっていた。

王城では兵隊長がブレンダンに、郊外の治安維持計画の書類を見せている。

「いいじゃないか」

「アデレート様と国王様にも目を通していただき、その後は大臣たちの許可を取って進めてまいります」

「頼んだぞ。ああいういかがわしい場所は更地にしてしまえ」

「牢屋がいくらあっても足りませんね」

「あそこを牢屋にすればいいだろ」

「…しかし、罪人を捕えておくためには王城の地下のように、魔法返しのための魔法石だけで牢を作らねばなりません」

「魔法返しじゃなく魔法封じな????????????魔法の力を封じ込めておくために魔法石で作っているんだから魔法封じだろ????全然違うぞ!!!!!!兵隊長の身分でそんな適当な言葉遣いをしているだなんて部下である兵士達に示しがつくのか!?!?!?」

「第一王子様」

「何だ!?」

「昔、教師に魔法返しと魔法封じという用語を適当に使っている事を怒られて、それがトラウマになっているからといって私の些細な言葉遣いの間違いに全力で突っかかってくるのはおやめください」

「お前は私を知り過ぎている!殴られたくなかったら部屋から出ていけ!!明日まで顔を見せるな!!」


――――――――――


アリディンバリス、ワーグマン家が治める領地。

クリスティーナに付けられていた兵士は、領主への面会を済ませた。

これでやっと城へ戻ることができる。

両親は兵士に頭を下げた。

「娘をここまで送り届けてくださって本当にありがとうございます。よろしければ屋敷に泊っていっていただけませんか」

「感謝します、そうさせてください」

「………」


兵士は使用人に案内され、客用の部屋へ。

そしてクリスティーナは両親の部屋に残された。

公式文章用のスクロールが父と母の間で少し揺れる。

「…年季途中で退職だなんて聞いたことが無いけど?」


トラブルがあったのだろうと察している母親が、問いつめるような口調で尋ねた。

「お勤め中に”なにか”あったんでしょ?」

「…王族のひとりと…」

「何っ!?!?!?!?!?!?!?」


慌てすぎてイスから転げそうになった父親を母親が掴む。

責めるような口調を崩さず、母親が聞く。

「王族のひとりと?」

「そ、そういう感じになってしまって…でも、王族の結婚相手は政治で決まるでしょう?あなたの家はまだ順番じゃないから、と言われて…故郷に戻されたの」


バランスを崩して父親が結局イスから転がり落ちた。

「どなたと?」

「それは絶対に言えない約束で」

「国王様の弟さまのお子さま?それとも妹さまの?」

「絶対に言えないんだって!!」

「…フゥ」

母親が頭を押さえた。

父親はイスによじ登る。

「クリスティーナ…なんとかもう少し頑張れなかったの…?」

「無理だった」

「お姉さまを紹介するとか」

「…っ!!!!」


瞬間的に血液が沸騰する。

「お姉さまを紹介すべきだった!?」

「そうでしょ?そのほうがまだ可能性はあったのに」

「~~~~~~~っっっ!!!!」

「何を怒っているの!?もういいから、お部屋に戻りなさい。夕食は兵士さんと食べるから、あなたは侍女と食べなさいね。ああ待って、お兄さまとサラにも帰って来たと挨拶をするのを忘れないで」


クリスティーナは脳内で1000回目の家出のシミュレーションをした。

家出の前にクソムカつく兄嫁のサラのドレスを全部引き裂いていく妄想も付け加える。


――――――――――


サイモンは木を削って小さな小屋を組み立てていた。

「どうでしょう?」

「…見事だ!ミニチュアハウスほど心が躍るものは無い!しかし、自分で組み立てようとするとしちめんどくさくてなぁ。こういうのは他人が時間をかけて作ったものを見るのが一番だ!」

「場所をもう少しだけ離すわけですが、一応、見本があったほうが良いかと思いまして」

「ふむふむ。ところで、厩舎がある場所とはまた離して、エピオルニスの厩舎を作ってやれないだろうか?厩舎?いや、鳥小屋か…?」

「予算的に無理でしょう。セーラ様が連れてこられたんですよね?オービター牧場に戻してやっては?」

「いや、馬が苦手らしくてな」

「なら森へ逃がしてやりましょうよ」

「人の心が無いやつめ」


――――――――――


レジナルドはハインリヒに相談した。

「鳥小屋ですか、いいでしょう」

「さすが執事!主人の心に寄り添うなぁ~!素晴らしい姿勢だ」

「昔から”誰が鳥小屋を調べるのか”と言いますし、危険物を隠すのにはもってこいの場所ですよ」

「素晴らしくない姿勢やめろ?」

「ですが、爆発物を屋敷に隠すのはちょっと」

「ちょっともたっぷりも困りすぎて言葉が見つからないなぁ。何がお前をそこまで暴力へと駆り立てるんだ?」

「…ここだけの話ですが、私の主人は小国の王女でした」

「おお」

「悪い魔法使いに魔法をかけられてしまったのです」

「どんな魔法をだ?」

「悪い魔法をです」

「そうじゃないだろ」

「姿を変える魔法です」

「それはおぞましいな。どんな格好にされてしまったんだ…?」

「何に姿を変えたのかは判りません」

「じゃあ、アリとかになってる可能性も?」

「アリます」

「それが言いたかっただけだろ?」

「カエルになっている可能性も」

「姿をカエル、いやちょっと待て、話のオチが弱いぞ!!」

「私は王女様を探し回っているわけです」

「…そうか。必死になって主人を探し回っているうちに犯罪に巻き込まれ、投獄されたり、脱獄したりのアクシデントがあったんだな」

「いいえ、それは王女様の捜索とは全く別の話で、シンプルに自分がどこまでやれるかへの挑戦でした」

「怖いなぁ」

「自分、まだまだ伸びると思っております」

「危険物を鳥小屋に隠そうとしているのは、もちろん消えた主人を探すための手段なんだよな?」

「いえ、限界への挑戦です」

「無謀と勇気は違うんだ、大人しく祖国へ帰ってくれないか?」

「庭師が使っている物置がボロボロなことをご存じですね?その物置を、厩舎と同時に改修したいと予算申請を出し、実際には、物置の半分を鳥小屋にしてしまうんです。二重の建築計画を提出するソリューションで乗り越えてみます」

「大人って怖いなぁ」

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