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人質生活49日目

「よし!これを削ってくれ!」


文句タラタラの庭師を説得し、レジナルドは白い巨石をエントランス内に運び入れた。

3階の吹き抜けの天井まで届きそうな巨石を見つめて、使用人のサイモンは呆れた声を出す。

「私は素人です…素人が…ここから転生させ女神を彫り出すなんて…無茶ですよ!!!!いやそれ以前に、どうやって屋敷内にこの石を入れたんですか?」

「玄関の扉を開け、巨石を入れ、玄関の扉を閉じた」

「そんな冷蔵庫にゾウを入れるみたいに簡単に言わないでくださいよ」

「冷蔵庫にゾウを入れるのが簡単だって!?じゃあキリンはどうやって入れるんだ?」

「まず冷蔵庫の扉を開けて…ゾウを出してからキリンを入れて…冷蔵庫の扉を閉じるんです」

「もういい!とにかく、ちゃんと方法は考えてある!」

「はぁ…」


いつの間にか乗馬インストラクターのセーラも屋敷の中に入ってきた。

「この巨石は庭の端にあった巨石ではありませんか。雄大さが気に入っておりましたのに、底を切って運び入れたのですね。オブジェとして室内に飾るおつもりで?」

「フフ…聞いて驚け、転生させ女神像を作ってもらうんだ!」

「素人にいきなりこのサイズの彫刻は無理でございましょう。石工の中でも、記念碑や彫刻を専門にやっている職人を見つけてこなくてはなりません」

「ほら、セーラ様もそうおっしゃっているではありませんか!」

「だから、方法は考えてある!彫像と言っても”丸々”彫り出さなくていい。つまり、レリーフにするんだ」

「!」

「オホホ、考えましたねレジナルド様」


レジナルドはゴールドを見せた。

モルリヴァール近隣の国々で流通している共通の硬貨だ。

そのゴールドには、古都モルリヴァールの巨大湖が立体的に浮き出ている。

もちろん貨幣はプレス、圧印で模様をつけられているので彫刻ではないのだが、レジナルドの言いたいことを具体的なモデルとして形にしてくれていた。

「レリーフ、つまり浮き彫りなら簡単だ。下絵さえしっかりと描けていれば、最低、そのラインをなぞるだけでも彫刻と言えるからな!」

「確かにそうですね…」

「さらに言えば、失敗してしまったとしても一面を削ってしまえば、また真っさらなキャンバスに元通り、再び彫刻にチャレンジできる。これがひとつの石を削っていたのなら修正は難しいが、要は平面に絵を描いているのと同じだからな。間違ったらやり直せるんだ…石が消失するまでは」


セーラは満足気に頷いた。

「教会ならともかく屋敷内に、この大きさの転生させ女神像があるのは見たことがありません。挑戦してみる価値があるのでは?」

「う、う~ん…!」


サイモンは悩んでいるようだ。

「もちろんすぐに取り掛かって欲しいが…強要はしない」

そう言いつつ、レジナルドは自分の頭ぐらいの大きさがある石をサイモンに渡した。

運び入れた巨石のかけらで、材質は同じだ。

「試しに、これで練習してみてくれ。小さいから手持ちのノミとハンマーで削れるだろう」

「…わかりました。部屋に飾ってある陶器の転生させ女神像を参考に、ちょっとチャレンジしてみます」

「おお!!!!聞きたかった返事だ!頼んだぞ!」


――――――――――


小雨だったので乗馬はそこそこにして、レジナルドとセーラは屋内へ戻ってきた。

「少し早いけど茶の時間にしよう…モグラも来い!」


2階へと繋がる階段の隅で、謎の虫をクッチャクッチャと咀嚼していたモグラを抱きかかえる。

「気のせいだろうか、最近カントリーハウスで虫を見なくなったな」

「モグラを飼うと虫を食べてくれるんですね。でも別の活用方法があるとは思いませんか?密に生えた上質なファーは、動物であろうとモンスターであろうと高値で取引されていますし…」


セーラは手を伸ばしてモグラを撫でていたが、モグラは慌ててバシッとその手をはねのけた。

「オホホ、冗談ですよ。我が国にはクリスタル・ミンクのような毛皮動物が多く生息しておりますから、わざわざモグラを捕まえてコートにするほど困窮しておりません」

「確かにこの毛皮は素晴らしいものだ。水を弾き、土ぼこりを寄せ付けず、保温性に優れ、ピカピカと輝いている。しかしな、モグラは寿命が短いそうだ。つまり、わざわざ殺さなくてもそのうち死ぬだろう。自然死してからでも毛皮の事を考えるのは遅くはない」

「!!」

モグラは頭を抱えた。

「怖がるな、今さっきの毛皮の話は冗談だ!、もうお前は家族みたいなものだからな。セーラも冗談で言ったのだろう?」

「…国によっては本当にモグラの毛皮を取るそうで…」

「冗談って言え!」


――――――――――


「おはよう。どう、疲れは取れた?」


高齢の母親が息子に尋ねた。

息子は元、アリディンバリスの使者だ。

王家の紋章をつける封蠟スタンプの偽装がバレたのか、人質のレジナルドへの手紙を開封し、中から指輪を抜き取ったことがバレたのか。

彼はアリディンバリスの兵士に追われ、そのまま国境を越え、律儀に手紙を渡して仕事を終えた後…両親が住むモルリヴァールに逃げてきたのだ。


「ああ、お母さんのおかげで元気になったよ。まったく、アリディンバリスとモルリヴァール、あるいはアリディンバリスとトーラティカのように行き来が簡単だったら良かったのに。なぜトーラティカとモルリヴァールの間には大きな山脈が無いんだろう?」


父親がコーヒーを持ってきた。

「まあそう愚痴るな。一週間弱で移動できて良かったじゃないか。仕事をクビになって、旅行ついでにトーラティカを大回りしてきたんだろう?」

「あ、ああ、そうだよ…コーヒーをありがとう」


両親には、自分が犯した罪については話していない。

財産はそれなりに蓄え、また両親も裕福なたため、彼には余裕があった。

「今日は銀行に行ってくるよ」


少し馬を走らせれば小さな町に出る。

いかにも田舎の役所という建物の中に、郵便物の配送センターや、小さな銀行の支店があった。

ちなみに問答無用で隣に教会がくっついており、壁の建設費節約と冷暖房の節約に一役買っている。

「世界銀行のアリディンバリス支店からカネを引き出したいのだが」


窓口の男性はクリスタルの塊を見つめた。

「…口座が凍結されています」

「そ、そうだよな、ああそうだった、忘れていたんだ。うっかりしていた!」


本人は動揺を隠すつもりで演技をしているが、バレバレである。

そして窓口で業務を担当している職員はこういった事態に慣れていたので親切に、そうなんですか、そういう事もありますよね、と礼儀正しく相手に言葉を返した。

「な、なら!アリディンバリスのローカル銀行の××という口座を調べてくれ、このスクロールを」


職員がスクロールを水晶でスキャンすると、そちらの口座は生きていた。

「引き出せます。いくらにしましょう?」

「全部だ」


――――――――――


「動きがありました」


国家安全部隊の隊長から、アリディンバリスの第一王子に報告が上がる。

「世界銀行の集合情報に接続がありました。モルリヴァールの田舎からです。しかし事前に口座は凍結してありましたから、引き出すことを諦めたようです」

「おお!」

「同じモルリヴァールの銀行支店で時間を空けず、アリディンバリスのローカル銀行のスクロールが読み込まれ、集合情報に接続がありました。そこに預けてあるゴールドを全額引き出そうとしたようですが、実際に置いてあるカネが300万ゴールドだけだったので、とりあえず300万ゴールドを引き出したようです」

「えっ!?田舎の支店ってそれだけしかゴールドを置いていないのか!?それじゃ困るだろ?」

「はい。でもそんなもんですよ。もっと引き出したければ、別の支店に行ってくれとか都会に行ってくれとか数日後に来いって言われて終わりです。銀行って預けてある分のゴールドを実際に金庫に入れてあるわけじゃないですからね。貸し出しとかで使ってますから」

「じゃあ、額面分のゴールドをみんなが引き出そうとしたらどうなるんだ?」

「取り付け騒ぎ、つまりバンク・ランが起きて、実際に銀行が経営危機に陥るんですよ」

「…あ、ああ~!!習ったぞ!!」

「王子様、いずれ国家の運営をしなければならないのですから、しっかりしてください」

「う、うむ…ってそうじゃないだろう!!!!その地方に兵士を向かわせろ!」

「すでにモルリヴァール国内に数名送り込んであります。今から連絡を取り、元・使者の身柄の拘束に向かいたいと思います」

「頼んだぞ」


部屋から出ようと反対方向を向いた隊長は、何か言いたげな顔で王子に向かって振り向いた。

「何だ、どうした?」

「田舎の銀行で本当に怖いのは、金庫に入っているゴールドが300万な事ではないんです…」

「な、何…!?」

「田舎の銀行で本当に怖いのは、大金を預け入れたり引き出したりした後、町民全体にそのことが伝わっていて”大金引き出して何に使うんだよ~新しい馬車でも買うのかよ~???”って茶化される事なんです。絶対守秘義務契約があるだろお前って職員が情報を漏らしているとしか考えられなくて、人間不信になります」

「わ、わかった…お前の過去にあった辛い話はカウンセラーか占い師にしてくれ。とにかく、頼んだぞ!」


――――――――――


ロジャーは初出演&初主演の劇の評判がすこぶる良いことに感動し、より一層、舞台への愛を深めていた。

「もっと良い演技をするには、どうすればいいでしょうか?」


支配人はヒゲを撫でる。

「まずは今のままでいい。ケガをせず、無理に声を張り上げてノドを痛める事無く、公演終了まで安全無事に演じてくれたらそれが一番助かるぞ」

「…でも、もっと演劇に真っ直ぐな自分でありたいんです!アドバイスをください!」

「そ、そうか…ううむ、あまりにも無我夢中になっていると役者はケガをしやすいものだ。足をくじいたり転んだりしないように集中力を切らさず、セリフを間違えないように…」

「そんな基本的な事はわかっているんです!もっと高みを目指したいんです!!」


若者のあまりに熱心な姿に支配人はたじろぐ。

「じゃ、じゃあ、これはやり過ぎかなと思うのだが…」

「芸にやり過ぎなんて言葉はありません!なんでもします!!歯を抜きますか?」

「歯は抜かなくていい!歯は抜かなくていい!!!!そうじゃなくて、茶髪にしてみたらどうだ?」

「あっ、それって…」

「名前は”ドナルド”にしてあるが、主人公のモデルはレジナルド様だ。よりレジナルド様に近づくためには姿から入ってみるという手段も悪くない!」

「もちろん!!!喜んでやります!!!」

「いやしかし、やりすぎな気も…」

「芸にやり過ぎなんて言葉はありません!なんでもします!!歯を抜きますか?」

「歯は抜かなくていい!歯は抜かなくていい!!!!レジナルド様だって歯並びは良かったぞ!?なぜ歯を抜こうとするんだ、怖いだろ!?発想が怖いぞ!?そんな事するぐらいなら髪を茶色にしてくれ!」


こうしてロジャーは床屋へ行き、緑色の髪をブラウンに変えてきた。


――――――――――


「う~ん!気持ちのいい日光!」


長い馬車の旅を終え、第二王女イザベラとその侍女、護衛たちはゾーフへ着いた。

護衛の兵士といっても姿は甲冑ではなく、従者服を着て帯剣している。

兵士たちが馬車を先に降り、侍女と第二王女に手を貸した。

「本当に砂漠のそばは湿気が少なくて快適ですね」

「これで緑も豊かなんだから、王都をここへ変遷してしまえばいいのに」


イザベラの言葉に侍女たちは笑う。

「今日はゆっくりと休んで、明日サメの歯拾いに行きませんか?」

「…もう子供じゃないんだから、サメの歯ぐらいじゃ喜ばないけど?」

「そんな事おっしゃらないで、旅行先に来たら観光客らしいことをやるのが一番楽しいんですよ。ほら、カントリーハウスへ向かいましょう」


砂の山でできた地平線に、木の棒のようなものが刺さっているのが見えた。

国境だ。

「ああ、あそこを越えて盗賊がやってくるわけね?」

「そう考えると恐ろしいですね…」

「大丈夫、ユージェニー様の一族が見張っていて下さるから。この辺りの貴族は働き者で助かるよね。議会で毎日喋ってばかりの貴族たちと交換してあげたいな」

「そんなこと仰らないでください、国の問題への対応もご立派なお仕事ですよ」


喋りながら屋敷へと入った。

エントランスに置かれたメガロドンのアゴの化石が出迎えてくれる。

使用人たちが出てきた。

「いらっしゃいませ!サメの歯をどうぞ!」

「「「「サメの歯をどうぞ!」」」」


砂漠に落ちているサメの歯に糸を通した首飾りが揺れる。

使用人たちの手により、その長いネックレスはイザベラの首にかけられた。

「ああ、これは大好きなの!何本持っていてもまだ集めたくなるし!」


ジャラジャラと小気味良い音がする長いネックレスが、2本、3本と首を飾っていく。


――――――――――


小雨が続いてる窓の外を眺めながら、レジナルドは夜会服を着て、最後の確認をしていた。

「いよいよ、3日後には夜会ですね」


ビルの言葉にレジナルドはうなずく。

「ああ。ま、出しゃばらないようにすれば問題は無いはずだ。だろ?」


小さく作り直させたシャツはレジナルドの体にピッタリだ。

マシューは除湿冷房魔法道具を触りながら答える。

「ええ、何事も起こらないと…お約束はできませんが、そう務めましょう。自分から話すことなく、静かにしていればトラブルは起きないはずです」

「もし問題が起きたら俺の自由はさらに取り上げられるのか?まさか、オブジェを没収してこれ以上何も所有していないのに、どうなるっていうんだ?」

「さあ?レジナルド様を不快にさせるやり方はいくらでもあるはずです。しかし、そんな事を想像して気分を盛り下げる必要はありませんよ。少し前に観劇に行ったことを思い出してください。アクシデントも無く、スムーズに王城へ行き、劇を見て、帰って来られたでしょう?」


ビルがレジナルドの着替えを助けながら話した。

「そうですよ、ポジティブな気分なら、幸運は後から付いて来るんです!」

マシューは魔法道具を持ち上げる。

「…レジナルド様、それにしてもこの除湿の魔法道具は良いですね。窓から水を捨てても良いですか?」


マシューは部屋の湿気が水分になって溜められているカートリッジを外し、中に溜まっていた水を3階の窓から捨てた。

「便利なので私の家にも一台贈りたいですね」

ビルが首を振る。

「今は町の魔法道具屋も予約でいっぱいだそうです。除湿も便利ですが、やはりヒヤッとするのが好評みたいで。生産が落ち着くまでしばらく待ったほうがいいですよ」

「へえ!そんなに人気だとは知らなかったな」


レジナルドは少しだけ笑顔になった。

不安がある時は気を逸らすに限る。

マシューは彼を励ました。

「とにかく、トーラティカ語の勉強は毎日続けましょう。一言も喋らないゲストだったとしても、周りが何を言っているのか理解できるだけで助かることもありますよ」

「そんな控えめな動機で勉強ができるか!悪口を言われたらその国の言葉で言い返してやる、ぐらいの気合いを持って俺は勉強に臨んでいるんだぞ!!」

「不純な動機ですが、机に付くなら何でも良しとしましょう」


――――――――――


犯罪集団のボスはロジャーと祖母の家を再び拠点にすることにし、仲間を集めていた。

ベッドも追加で置き、井戸は土魔法を使って自分で塞いだ。

そんな彼に嬉しい知らせがあった。

「帳簿の暗号が解読できたそうです」

「本当か!よくやった!」


以前この店の主人だった老婆が付けていた裏帳簿は、暗号で書かれていた。

古代の言語や暗号文の解読に長けた悪人に、解読の依頼を頼んでいたのだ。

「どれどれ………おお、これだ、こういう情報が欲しかったんだ!!!!」


何を買取、販売したのか、そして誰から誰へ渡したのか。

仲間も解読された帳簿をのぞき込む。

「…へえ!こりゃ凄いですね、”王城で働く兵士”が”城からの盗み”とは!」

「大胆なヤツが居たもんだ。王族が持っていた品の売買ともなれば、金額は………うん?それほどでもないな」

「ここが仲介業者の稼ぎどころだ。安く買い叩いて、高く売る」


ボスの言葉に仲間が大笑いした。

「こりゃいい情報だ!脅しには持ってこい…でもないか?」

肝心の誰が、という名前は書かれていない。

「流石になぁ、名前が判らなきゃ脅しにはならないぞ」

頭を掻く仲間に、ボスが言う。

「名前を知る必要は無い。兵士本人を見つけて脅しても、安月給からいくら取れると思うんだ?逆に俺らみたいな小悪党は捕まえられて、兵士の功績になって終わりってのがオチだ。王城の魔法使いや兵士はそれなりに強いからな」

「じゃあどうやってカネを巻き上げるんだよ」

「責任者に直接聞けばいい。事態をうやむやにしたがるはずだ。事件の隠ぺいのためになら、兵士から巻き上げる小銭なんか目じゃない程の大金を何度も支払ってもらえるだろ?」

「なるほどなぁ…」


――――――――――


ボスが身なりを整えて、王城に務める兵士や従者も来る価格帯の飲み屋に行くと、さっそく情報が入った。

「へえ、今の侍従長はエイデンさんに変わったんですか」


兵士がぐいっと酒をあおる。

「ああ、つい最近の事だな」

ボスも兵士と同じように酒を飲む。

「前の侍従長はかなり高齢だったじゃないですか。ですから、城下町の店ともあまり関わり合いがありませんでしたが、エイデン様ならお名前をお聞きしたことがありますよ。ええっと、確か…おっと、アルコールが入っているせいか歳のせいか、ド忘れしてしまいました。侍従長の前の役職はどなたの従者だったでしょうか…?」


城内の事情を知っている職人か商人が話し相手だとすっかり信じている兵士は、ベラベラと内情を喋る。

「ほら、レジナルド様の第一従者だよ」

「ああ~!レジナルド様が街で騒ぎを起こしていた頃、よくお見かけしました…そうそう、思い出しましたよ」

「思い出すって、忘れたくても忘れられないだろ。しかし、困難な仕事に長年ついていれば、それだけ出世できるって手本でもあるよな。繰り上がって侍従長とは!」


兵士はノドを鳴らしながらゴクゴクとビールを飲む。

ボスは脳内でありったけの情報にアクセスして、なんとか話を続けた。

「エイデン様と取引した装身具店を知っていますよ。レジナルド様がかなりの派手好きなので、アクセサリーを作らせたとかで。我々市民からすれば羨ましい話ですが、予算を通したり、職人とレジナルド様、双方に頭を下げる従者のお仕事は大変だったでしょうね」

「そうらしいな。ま、俺はただの兵士なので伝え聞きだが…」


小一時間話を続けたが、ボスはこれ以上この兵士から侍従長の話を聞き出せなさそうだと察し、最後のビールを奢って店から出た。

「装身具店は見込みがありそうだな…いくつか当たってみるかな」


――――――――――


「はい!」

第一王女アデレートから手渡されたそれは、数ページある脚本だった。

「拝見させていただきます」


王宮お抱えの演者がそれを読む。

「…うっ…つまらna…」

「ふふ、どう?悲劇は喜劇!下のお兄さま…じゃなかった、架空の第二王子が隣国へ人質として渡り、冷遇される話なの。面白いでしょ?」

「………こ、これは…」

「これは?」

「最高のお話です!!!!是非、我々に演じさせていただきたい!」


処世術である。

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