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人質生活25日目

「…誰も、全然しっぽを出さないじゃない!」


レジナルドの下の妹、第二王女のイザベラは朝から文句を言っていた。

「誰かがアイツの宝石箱からこの指輪…じゃなかった。この指輪の元になった指輪を盗んだってことは分かってるのに!」

侍女達は好き勝手会話する。

「もしかしたら、本当に泥棒が侵入して、たまたまその指輪を盗んでいっただけなのかも知れませんね」

「…もう叔父さまや叔母さま、いとこたちの侍女、従者にもリングの特徴が伝わってるでしょうし…」

「いえいえ、泥棒がバレそうでも黙っておく以外に選択肢はありませんから、内心ビクビクしながら過ごしているのでは?」


イザベラは早く泥棒を弾劾したい一心で次の作戦を考える。

「次の貴金属管理の巡回でバレちゃうんだから、もう思い切って侍従長とあの補佐官に、盗難事件が起きてるって伝えちゃうのはどう?どれだけ問題になろうが、秘密を隠していた私や宝石店が怒られようが仕方ないでしょ?お父さまに伝わっちゃうのは怖いけど、しょうがないものね」


侍女たちは悲しい顔をした。

「…そのことを考えると、胸が痛いですね」

「ええ。侍従長はもうすぐ退職なされるそうですから、その直前で彼が処罰を受けるのは非常に残念です。…実際にコットンキャンディ花が埋め込まれていないリングは盗まれていますから、仕方のないことだとは思いますが…」

「人生をかけて王家に仕えてきたのに、最後の最後でこんなトラブルが起きてしまうとは、悔しいでしょうね」


それを黙って聞いていたイザベラは、手をポン!と叩いた。

「じゃあ、哀れな老人を私が救ってあげましょう。侍従長はあなた達の上司なわけだし、寛大な施しに感謝しなさいね?」


イザベラは左手から贋作のリングを外し、レジナルドの宝石箱の開いているスペースにそっと収めた。

「ほら!これで盗難には誰も気が付かないでしょ?」

「よろしいのですか?レプリカのリングは泥棒を捕まえるためのエサなのでは?」

「フフッ、窃盗犯を見つけて断罪する事なんかより、このリングの”本物”を作らせるために頭と労力を使う事にしただけ!そっちの方が魅力的なプロジェクトだから!」


――――――――――


「おはようございます」

「おはよう!」


ダイニングルームにはまたも父の姿はない。

第一王子のブレンダン、第一王女のアデレートが、イザベラに朝の挨拶を返した。

「おや、左手に付けていたお気に入りのリングはどうしたんだ?」

「さすが上のお兄さま!私の事をいつも気にかけてくださっているんですね」

「あら本当、言いつけを守って宝石箱に置いてきたの?子供みたいにはしゃいで見せて回ってるから、そろそろしかろうかと思ってたんだけど…」

「ちょっと!誰を子供って言ってるの?もう14歳なんですけど!?」

「あなたが14歳なら私は16歳でしょ?私から見ればイザベラは子供!反論できる?」

「やめろ2人とも。ともかく、華美な宝石はそれにふさわしい場でこそ光り輝くんだ。普段使いしていたら、いざ使いたいときに傷ついてしまうかもしれないじゃないか」


アデレートはブレンダンに同調する。

「そうですよね。外国では、本当の宝石は大切にしまっておき、わざわざフェイクのジュエリーを作らせて舞踏会などで使うとも聞きますから。モノの価値がわかるなら、朝食なんかに付けてこないでしょ?」

価値が判らない人間扱いされ、イザベラのイラつきは頂点に達した。

「…本物の指輪を付けてきたわけじゃないから!贋作なの!」


侍女が止めに入る。

姉のアデレートは聞き逃さなかった。

「贋作?ああ、本物を作らせたときにもうひとつ作らせたの?」

「いいえ!下の兄が持っていた指輪そっくりに作らせただけ」

「へぇ、お前が気に入る様なデザインがあったのか。意外だな」

アデレートは少しピクッとした。

彼女はレジナルドの宝石箱から気に入った指輪を盗んでいる。

「”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”って指輪の贋作を付けてたの」


侍女はイザベラに着席を促し、腕を引っぱった。

ブレンダンが口をナプキンで拭き、カトラリーを置く。

「”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”?ああ、一昨日レジナルドから来た手紙に送って欲しいと書かれていたリングだな」

「えっ!?」

イザベラは驚いた。

「…でも、無かったでしょう?」

「ん?」

「だってコットンキャンディ花が埋め込まれていないリングは盗まれているんだから」

「…何だって?」

「誰かが盗んで、城下にあるアンダーソン宝石店という店に持ち込んだの。贋作を作らせるように頼んで。そして、私が指に付けていたのがその贋作のリングだったんだけど…」

「いや、エイデンがそのリングをお前から受け取ったものだとばかり思っていたが。渡さなかったのか?」

「渡すも何も、一昨日エイデンは部屋に来なかった…よね?」


後ろの侍女も頷いている。

「侍女だけに許可を得て持っていくはずがありません。宝石箱を預かっていらっしゃるのはイザベラ様なのですから、必ずご本人に許可を取るはずです」

「ほら?」


ブレンダンは真顔だ。

「じゃあ、まず、”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”そのものが盗まれていて、エイデンはお前の部屋に寄らずに、どこからか”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”を持ってきて手紙に同封したというわけか?」

「…」


アデレートはポツリと言った。

「盗まれていた指輪を持ってきたのなら、エイデンが盗んだのでは?」


ブレンダンは否定する。

「いや、彼はレジナルドの第一使用人だった。レジナルドの所有物が無くなった時に、一番疑われやすい人物だ」

「それが何か?」

「一番疑われやすい人物や、証拠が揃っていていかにも怪しい人物は、絶対に犯人じゃないんだ」

「えっ…????????」

「これはミステリー小説好きとしては常識なのだが、まあ、知らないのも無理はない。専門的な知識だからな…。ちなみにどんな人物が犯人な場合が多いと思う?」

「さ、さあ…?」

「急に湧いて出た知らん登場人物が犯人な事もままある。あと読者に告げられていない協力者がいるとか。ナレーターが殺したとか。探偵本人が殺したとか。アリバイのある人物は双子だったとか。部屋に隠し通路があって実は密室じゃなかったとか。待てよ?この世界のミステリー小説って酷すぎるな????」

「誰も死んでいませんが…?」


第一王子はゴクリと唾をのんだ。

「いいか、ここでの話は口外するな。そして…」


気の利く従者は第一王子の隣へ駆け寄った。

「エイデンに偽の用事を与えて城外へ連れ出し、彼が居ないうちに、誰にも気付かれないように部屋をくまなく探せ。エイデンを外に出せたら、侍従長を私の部屋に呼ぶように」


――――――――――


トーラティカのカントリーハウス。

「土をフカフカにしたぞ!」


水槽(結局マシューが買ってきた)の中はフカフカの土で満たされ、モグラは喜んで手を叩いた。

乗馬インストラクターも感心している。

「レジナルド様、土魔法が使えるようになったのですね?」

「ああ。昨日の午後、教会へ連れて行ってもらったんだ。そこで土魔法の適性があることが分かってな!」

「それは良かったですね。落馬の瞬間、土をフカフカにすることで衝撃を和らげられますし、逆に馬が走る地面を固めれば反発を大きく出来るので、馬が早く楽に走れるようになります」

「おお!いいこと尽くめじゃないか!特に落馬はメチャ怖いからな…」

「そうですね。今日の午前は乗馬をお休みして、土魔法の練習をしましょうか」

「土魔法以外でもいいぞ。5つの魔法に適性があるからな」


――――――――――


こちらはトーラティカの王城。

「は?5つ全ての魔法に適性がある?」


宰相は聖職者の言葉を疑う。

が、彼は人の嘘を見抜けるユニークスキルが使えるので、すぐにそれが事実だと理解した。

直接面会してお伝えしたいというから、何かと思えば人質のレジナルドについてだった。

「教会にある資料によると、156年前の王族が最後の記録だったようで…この国では久々に5つ全ての魔法が使える、転生させ女神に愛されし信徒が誕生し、非常にめでたく…」

「この事はすぐに国王様にお伝えします」

「わかりました」

「ルイス、あなたに任務を与えましょう。レジナルド様の元へ出向き、魔法の修得を妨害するのです」

「な、なぜそのような事を…!?」

「いちいち説明しないとわかりませんか?国王様、そしてフィリップ王子様は4つの魔法適性を持っています。外国から来た人質が、魔法を5つ使えるのですよ?王族の比較対象は王家。我が国の王族が、人質よりも魔法において劣っていると見なされるのは不愉快です」

「何をおっしゃるのですか、とんでもございません!転生させ女神は我が国トーラティカを特別に愛護し、慈しみの心で見守ってくださっております。世界で最も優れているトーラティカの王家と、それ以外の百凡の国々を比較しようなどと誰も思わないでしょう!」

「なら、なぜ、人質は5つの魔法を使えるのに、我らの王は4つの適性しかないのですか?」

「………」

「適性はあっても、能力を伸ばさなければ済む話です。いいですね?うまくやってください」

「…はい」

「とは言っても、流石に回復魔法は使えないのでしょう?」

「いえそれが、教会の石階段でレジナルド様がつまづいて転倒してしまったのです。手の平がぱっくりと切れて血が流れ出ていたのですが、その個所を”キッ!”と一瞥いちべつした途端、手がツルツルになって…」

「まさか!回復魔法も使えるとは…」

「隣にいた通訳は”デブだと細胞と細胞が押し出されるようにしてくっつくから傷の治りも早いんですかね?”とか言っていましたが、あれは間違いなく回復魔法だったかと…」

「…あの通訳、意外と肝が据わっているな?」


――――――――――


侍従長は、いっそ自分の心臓が止まって欲しいと思った。

「エイデンが…盗みを…?」

「まだ、可能性があるというだけだ」

「わ、私はてっきり第二王女様が指輪を盗んだのかと…」

「何っ!?」

「…状況を整理させてください。まず、淡青の月の24日、”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”がレジナルド様のお部屋から無くなっている事を確認しました」

「えっ??????????????????」

「えっ?」


王子は咳払いをした。

自分で”レジナルドがトーラティカに持っていったんだ”と推理した指輪だとは思っていなかったのだ。

「あ、あっ…ま、待て…」

「はい…」


第一王子の部屋がちょうどよいタイミングでノックされ、従者が入って来る。

「あったか!?」

「いえ、それらしき指輪は見つかりませんでした。しかし、このようなものが…」


1冊の日記。

沢山のふせん。

「このページを見てください!”これは絶対カネになる 盗む””この指輪は宝石が大きい 盗む””頑張って作らせた 盗む”これはもう…ヤッってるでしょう?」


窃盗ToDoリストもあった。

あからさますぎである。

しかし、王子の考えは違った。

「…こんな簡単なトリックで私の目を欺こうとはな…」

「ブ、ブレンダン様!?」

「これは、偽の手がかりだ。本当の犯人はこんなにわざとらしい手がかりを残したりしない!」

「!?」

「誰かがエイデンに罪を擦り付けようとしている。そうに違いない!」


違うのである。

「なら、一体誰が犯人なのですか?!」

「侍従長。さっき、下の妹が指輪を盗んだと発言したな?」

「はい。イザベラ様の指に”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリング”があったので…」

「あれは贋作だ」

「なんと!!」

「エイデンも同じ反応だったか?」

「はい。彼はレジナルド様の従者でしたから、指輪を一目見ただけであれがレジナルド様のものだと気付いた様子でした。私は貴金属保管の仕事をしているので、変わった名称のジュエリーな事もあり、同じく気付けました」

「そうか…ところでその指輪はどこで作らせたのだろう?」


従者が日記からそのページを見つける。

「王城にいるジュエリー職人に作らせたようです」

「製作に関わったものを今すぐ呼べ」

「はい」


第一王子はチェアに深く座り直した。

そして…何とか”レジナルドがトーラティカに持っていったんだ説”に繋げられないか、道を探した。

彼は一度言ったことを訂正したくないタイプの人間だったのだ。

最も推理や推論に向いていない性格であることは間違いない。


――――――――――


第一王女、第二王女も部屋に呼ばれた。


職人は正直に話す。

「イザベラ様の持っているリングは贋作です。本物は我々が製作いたしました」

「ほらな?」

「…っ!大変、失礼を…」

侍従長はただでさえ曲がっている腰を曲げた。

「これで全ての辻褄が合ったな」

「!?」

「ブレンダン様、それは一体、どういう…!?」


第一王子はもったいぶってウィングチェアから立ち上がり、ゆっくりと室内を歩いた。

「まず、レジナルドはリングをトーラティカに持っていった。これは間違いないだろう」

「!?!?!?!?」

全員が驚いた。

侍従長も再確認する。

「しかし、手紙には”コットンキャンディ花が埋め込まれていないリングを送って欲しい”と書かれていたんですよね?」

「その通りだ。弟の手元になかったため、自分が所有している事を忘れてしまったのだ」

「!?」

「トーラティカにお気に入りのリングを持って行った。しかし、アデレートから聞いたのだが、どうも外国ではフェイクジュエリーが流行っているらしい。そこでだ。レジナルドも本物の指輪ではなく、贋作を作らせようとしたのだろう」


みんなの頭に?が浮かぶ。

「本来なら王城のジュエリー職人に頼むべきだが、アイツは人質だ。トーラティカ側の顔を立てるためにも、アリディンバリスの王家とは距離を取らなければ、と考えた。しかしトーラティカの国にはツテが無い。そこで使用人に国境を越えさせ、わざわざアリディンバリスの宝石店に贋作を作らせた。そのアリディンバリスの宝石店とは、レジナルドがよく使っていたアンダーソン宝石店だ。そして…トーラティカはケチなので、贋作づくりにそこまでのカネは出せないと、途中でやめさせた」


イザベラも納得した。

「アンダーソン宝石店に来た男の態度は横柄だったと伺っているし、敵国、トーラティカの野蛮人なら、使用人がその程度でも不思議じゃないかも」

「ああ。しかし、贋作づくりには本物の宝石を渡す必要がある。使用人に指輪を渡し、仕事を頼んだのをすっかり忘れ、レジナルドは我々に指輪を送れと手紙で頼んできたんだ!」


アデレートが流石にあきれた様子で言った。

「…下のお兄さまは愚かでしたが、そこまで愚かではありません」

「そうか?考えてもみろ、トーラティカへ送られ、今のアイツは精神的に不安定なはずだ。思い違いをすることもあるだろう」


みんな「うーん」という顔をしている。

とはいえ、第一王子に真っ向むかって「ガバ推理ですね」と言えるものはおらず、その場で解散になってしまった。


――――――――――


レジナルドがとんでもない間抜けにされているその頃。

本人は石をコロコロ転がしていた。

庭師が怒る。

「ちょっと!何を遊ばれていらっしゃるんですか!」

「わはは!面白いだろう!石の中にある細かな粒を寄せて動かしているんだ。重心を振ることによって大きな石も揺らすことが出来るぞ!」

「危険ですよ!庭のオブジェをグラグラさせるのはやめてください!」

「石の中にある鉄分を移動させると早く重心を変えられるなぁ~!」


――――――――――


「うーん…」


第一王子はエイデンの日記帳を手元に置いていた。

「こんなわざとらしい手がかりを作るとは、よっぽど従者を犯人に仕立て上げたかったのだろうな」

彼は自分の考えを文章化したり、口に出してしまうと、それが真実だと自分で自分を洗脳できるタイプの脳みそをしていた。

「アデレートが指輪を窓の外に投げ、それをカラスが咥えて持っていた事件もあったが…あれも仕組まれていたとしたら!?複数人、いや、もっと多くの人間が関わっていて、秘密裏に王家を陥れようと…!!」


巨大な悪の組織が今、誕生しようとしている。


――――――――――


モルリヴァールの古都。

闇オークション会場。

「どなたも決して口外なさらないでください!こちら、アリディンバリスの第二王子、レジナルド様の所有していた”進入禁止の円錐オブジェ”価格は800万ゴールドからです!」


どんどん競り値が上がっていく。

オークションの支配人はホッと胸をなでおろした。

「1100万ゴールド!1100万ゴールド、これ以上はありませんか?これ以上はありませんか?」


それなりに利益が出た。

入札者と会話すると、やはりレジナルドのファンらしい。

「彼の噂は常々伺っていましたが、トーラティカに人質として送られてしまったそうではないですか。もう、オーナーのユニークさが反映された作品が生まれないのかと思うと非常に残念です」

「ええ、そうですね。だからこそ残されたオブジェに価値が生まれるというものでしょう」


支配人は口の片側を上げて、悪い顔で笑った。

初めての競売で1100万ゴールドなら、まだまだ上昇する余白があるだろう。


――――――――――


アリディンバリスの王城、第一王子の執務室。

「エイデン!」


人が払われた部屋。

エイデンは第一王子のブレンダンと2人きりだ。

「危ない所だったな。悪の秘密組織に窃盗の容疑を擦り付けられようとしていたんだ。私の推理が無ければ今頃は牢屋の中だったはずだ!」


エイデンは愕然として、膝から崩れ落ちた。

王子の手には自分の日記帳、もとい犯行計画手帳がある。

「見てくれ!このあからさますぎる犯行計画手帳を。私のようなプロからすれば、これは分かりやすく作られた偽の手がかりであると断言できる。どれだけ愚かな者であっても、自分が疑われたときに言い逃れできるよう、証拠は残さないものだからな。こんなミスリードに引っかかると思われているとは…」

「そ、そ、そそ、そうですね…」

「悪の組織がこの城で結成されている。私に協力してくれ!この王城に巣くう悪を排除するぞ!」


エイデンの本能は、コイツについていったらダメだと赤いランプをクルクル回している。

いっそ捕まえてほしいとも思った。

「嫌疑をかけられて黙っている事は出来ません!必ず犯人を見つけましょう!」


エイデンは後悔していた。

あんなにおだてて絵画やらオブジェやら宝石やらを作らせたのに、結局一つもカネに変えられそうにない。

「ところで、お前は何を手紙に入れたんだ?」

「それは…指輪の窃盗があった時に、ブレンダン様が”弟がトーラティカへ持って行った”と推理してくださったので、それを破綻させたくなくて…」

「させたくなくて?」

「………」


まさか本物のコットンキャンディ花が埋め込まれていないリングを入れたとは言えない。

「単語帳に通す銀色のリングを入れました」

「せめて指輪を入れてくれよ?」


――――――――――


同じく、アリディンバリスの王城。

レジナルドの上の妹、アデレートは、鏡の前で侍女に髪をいじられるがままになっている。

「アデレート様…アデレート様!」

「ハッ!あ、ああ!」

「このアレンジはどうですか?真珠のチェーンを編み込んだのですが…心ここにあらずという感じですね?」

「いいえ、ちょっとボーっとしてただけ…」


侍女にヘアアレンジをさせていた第一王女は、魂を肉体に取り戻した。

鏡に映った髪にはキラキラとパールが輝いている。

しかし、表情はイマイチだ。

「何かお悩みでも?」

「…私って、こんな顔だった?」

「ええ、いつもと同じ美貌を称えた、血色の良いお顔ですよ」

「…ううん違う…本当の私は、もっと美しいの…」

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