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人質生活8日目

明日の予定を伝え馬術の練習を断ると、乗馬インストラクターもマナーを教えると申し出てくれた。

みんなが一丸となってレジナルドへの指導へあたる。


チェアへの座り方。

「こんなに浅く座ったら腹筋を使わなければならないじゃないか!背もたれにもたれてはいけないなら、なぜ背もたれがついているんだ!?」


男性の美しいお辞儀。

「肩をすくめて背中を丸めるだけでいいだろ!」


廊下の歩き方。

「チッ!アリディンバリスの王城では俺が真ん中を歩いて、他の者に避けさせていたのに…」


夕食へ来てくれたことへのお礼の言いかた。

常に笑顔を絶やさないように顔の筋肉を固定する方法。

皮肉を言わず、やさぐれた返事をせず、返す言葉が見つからなければ軽く笑って済ませること。

政治の話、不幸な話はNG。

「帰りにお土産としてお菓子を持って帰らせるように、とレジナルド様が使用人に言いつけたことにしましょう」

「なるほどな。でもそれはマシューの考えだ。通訳のマシューが気を利かせてくれたと正直に言おう」

「…わかりました」

「だから、次に同じような機会があれば、土産を用意しろと俺から使用人に伝える」

「レジナルド様…!」

「帰宅途中で溶けて困るように氷菓子にしてやろうな?」

「レジナルド様?」


屋敷の使用人達が一丸となってレジナルドを応援する。

レジナルドもそれに応えるように上品な振る舞いを練習した。

シェフとコックは食材を買い出しに町へ向かい、庭師はダイニングテーブルに飾るための花が十分咲いているか確認する。

明日に向け、準備は万端だ。


――――――――――


アリディンバリスの街では、記者たちが印刷したペラ1枚の新聞が飛ぶように売れた。

隣国との戦争の終結、平和条約の継続のために人質として旅立った第二王子の近況がまとめられている。

多少、文が盛られてはいるが事実ベースだ。

市民の噂を閉じ込めておくことはできない。

「繁華街が今のように清潔に整備されたのはレジナルド様のおかげだと聞いたけど」

「小さなころから盛り場へ顔を出していた、とんでもない不良だと言われてたでしょ?でも実際は罪人の溜まり場を解体したヒーローだって知人から教えてもらったんだ」

「誘拐された絵師を兵士が救い出した話があるだろ?あれもレジナルド様のワガママがきっかけらしいぞ…」


――――――――――


トーラティカの王城。

フィリップ王子はのんびりとくつろぎながら、明日の事を考えていた。

18歳の誕生日、成人の祝いともなれば酒は欠かせない。

酔っぱらって大暴れして醜態を晒してもらえれば、一発でアリディンバリスへ送り返すことが出来るだろうと算段をつける。

「本人も帰りたがっているだろうし、丁度いいだろう?」

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