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考えが甘い犯人

「はい。仰る通りです。サンビタリア様から話を受けて計画を考えました。だって……だって、私のネモフィラ様を苛める悪い奴が許せなかったんです」

「お主のではないのじゃ。それよりも、そのわりには寮内でミントに嘘の情報を教えてフィーラを誑《たぶら》かそうとし、本当はフィーラの服を消すつもりだったと……むう。お主、本当にフィーラを好いておるのか?」

「も、もちろんです! でも、好きだからこそ、出来心が働いたと言いますか……」

「だ、そうじゃぞ」


 ミアがネモフィラに視線を向けると、ネモフィラが首を横に振ってミアの後ろに隠れた。と言うわけで、ルッキリューナは犯行を認めて取り調べを受けている。しかし、その姿は見るも無残。

 ルッキリューナは下着だけの姿のまま、“私は脱衣癖のある変態ロリコン女です”と書かれたボードを首からぶら下げた状態で、台座の上に座らされていた。そして子供たちが囲って静聴している。ミアが中心になってルッキリューナと話していたが、ミアの頭上にラテールがいたからだろう。誰もそれを不思議に思う者はいなかった。

 さて、ルッキリューナの犯行動機は、ネモフィラを苛めるサンビタリアを恨んでいたから。幼稚舎では装備を外す魔装《ウェポン》に細工して、ダミーが魔力を感じると発動するように設定していたようだ。

 ルッキリューナはサンビタリア派の親を持つネモフィラのファンであり、とんでもないロリコンだった。


「しかし、ついでに他国の者を巻き込んで幼い子等の服を脱がすと言うのはやり過ぎじゃったな」

「でも、あの時は名案だと思ったんです。幼稚舎と児童舎と学園で同時に事件が起きれば、先生は全員そっちに行きます。そうすれば寮内に避難した幼女たちの裸が見れるって……」

「それで寮に残ると予想したラテール先生はお昼寝するだろうから、と考えたわけじゃな」

「仰る通りです」

「お前のせいでラテは大迷惑を被《こうむ》ったです」

「だって、他の先生がいない間にサンビタリア様一人の犯行と皆に思ってもらえれば、そしてそれを私が活躍して捕まえれば、サンビタリア様を退治したお姉様としてネモフィラ様に好きになってもらえると考えたんです。幼女たちの裸が見れて、その上ネモフィラ様のお姉様になれるなんて、一石二鳥で夢のようではありませんか」

「だ、そうじゃぞ」


 ミアがネモフィラに視線を向け、ネモフィラはぶるりと震えて首を横に振る。ネモフィラ的には本気で嫌らしい。そんなネモフィラの反応に、ルッキリューナは深く深く反省して落ち込んだ。と言うか、とんでもない変態ロリコン女である。こうして罪を認めてミアの言葉に答えているのも、頭上にラテールがいるからではない。水溜りよりも浅い理由があるからなのだ。


「ミアちゃん。ネモフィラ様に嫌われた私を慰《なぐさ》めて下さい。私、気がついたんです。ミアちゃんがおパンツだけの姿で私を抱きしめてくれたのは、私が好きだからなんですよね?」

「違うし嫌なのじゃ」

「しょんな……」


 ルッキリューナは戦っている最中こそ我を忘れて自分から証拠を見せてしまう程に暴走していたが、落ち着いてからはミアの肌の感触を思い出して改心したのだ。そんな理由で改心するなんてとんでもねえ変態だが、その感触が忘れられなくてミアに腰巾着と嫉妬していた感情が綺麗に無くなっている。

 ルッキリューナと言う少女は、とても単純な変態だった。周囲にいる子供たちが全員ドン引きしている程度には。


「この変態ロリコン女はこんなボードじゃ罰にならなさそうです。ラテとしてはお昼寝を邪魔されたので、もっと重い罰を与えてやりたいです」

「フィーラに嫌われておる時点で十分な罰になっておるのじゃ」

「そんなの罰とは言わないです」

「しかし、天翼会からも罰が下されるのじゃろう?」

「当たり前です。最低でも退学は免れないです」

「じゃったら十分なのじゃ」

「お昼寝の邪魔されたラテは納得出来ないです」


 ラテールはプクッと頬を膨らませて不機嫌な顔になるが、残念ながら頭上でやってもミアには見えないので伝わらない。


「最後に確認したいのじゃが、寮内の服が盗まれたと言うのもお主の仕業かのう?」

「せっかくなので幼女の柔肌をもっと見たいと言う欲が出てしまいました。でも、盗んだと言うよりは、私の魔装《ウェポン》で全部消したと言うのが正しいです」

「消したと言う事は、つまり……無くなったわけじゃな?」

「はい」

「……のう? ラテール。この場合の弁償は誰の負担になるのじゃ?」

「そんなのこの変態ロリコン女に決まってるです」

「やはりそうなると思ったのじゃ。ルッキリューナ。お主が大変なのはこれからなのじゃ」

「ど、どう言う意味ですか? 弁償と何か関係があるんですか? でも、服くらい簡単に用意出来ますよ」

「…………」

(駄目じゃ。確かこ奴は子爵じゃったな。貴族の生まれのせいか子供だからかなのかは分からぬが、金銭感覚が狂っておる。ある意味一番大変なミスに気づいて無いのじゃ。しかし……)


 被害者全員の服を弁償をする。それだけでもとんでもない金額になると言うのに、それに気が付いていないルッキリューナ。ミアはそんなルッキリューナの将来が悲惨なものになる事を想像し、でも、同情はしなかった。


(そこまで面倒をワシも見ておれんからのう)


 心優しく慈悲深い聖女であれば、ここでルッキリューナの将来に憂《うれ》いを見せたのかもしれない。だけど、ミアはそうならない。ミアはそもそも聖女否定派の引きこもりたい派なのだ。一々同情したりなんてしないし、相談にだって乗ってあげるつもりは無い。


「まあ、理由はその内に分かるのじゃ」

「はあ? そうですか」


 事の重大さに気がつかないルッキリューナがそれに気づくのは、近い未来でそう遠くない。今は何も知らずにただ首を傾げるだけで、所詮は服の代金を払えば良いだけだと甘い考えを持っている。気がついた時には既に遅く、最悪な未来が待っているとも知らずに。反省しているとは言っているが、その考えには反省の色が微塵も感じない。そのお気楽さを考えれば、妥当な罰を受けると言えるだろう。

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