聖女の裁き(1)
チェラズスフロウレス寮の会議室にて、サンビタリアを裁く為に王妃とアネモネを除く王族と、ミアやミアが聖女だと知る侍従たちが集まっていた。侍従がこの場にいるのは国王が甘さを出さない為で、ラテールの提案だった。尚、そのラテールは「いい加減寝るです」と言ってお昼寝にしに行った。
「では、サンビタリアの処罰を決める」
「やれやれ。まさか、事件の首謀者がサンビタリア姉さんだったとはな。随分と面倒な事をしてくれた。おかげでチェラズスフロウレスは今や悪い意味での注目を集めてしまっている。分かってるのか?」
「ええ。深く反省しているわ」
「どうだかな。我が国の面汚しとなった姉さんを信じる者なんてこの場にはいない。いっそ自棄でも起こして、本性を表して暴れた方がよっぽど信じられる」
アンスリウムがサンビタリアを睨んで鼻で笑うが、サンビタリアは静かだった。怒る事無く顔の表情も変えずに受け入れるだけ。その姿に、アンスリウムだけでなくランタナは驚いた。何も言い返されない事にアンスリウムは居心地の悪さを感じて口を閉じ、ランタナは苦笑した。
「まさか、サンビタリア姉さんが嫌みの一つも返さないなんてね。なにか心境の変化でもあったの?」
「ランタナお兄様。それではお兄様が嫌みを言っているみたいです」
「おっとそうだね。ごめんよ、姉さん。でも、本当に気になったんだ」
「いいのよ。ランタナ。あなたの言う通りだもの。心境の変化があったのは間違いないわね」
サンビタリアの表情はとても穏やかなもので、憑き物が落ちたような晴れやかさがあった。ランタナが目を丸くして驚きネモフィラに視線を向けると、ネモフィラは苦笑した。するとそこで、国王が一つ咳払いをして注目を集める。
「サンビタリアがルッキリューナを利用した事がきっかけとなり、他国の学生や天翼会に被害を及ぼした。これによりチェラズスフロウレスは大変危機的な状況に陥ろうとしている。今のところは天翼会からはサンビタリアの追放だけで済んだが、他国からの我が国に対してどう動くのかが未だに分からないのが現状だ」
「何? 天翼会からの処分がそれだけで済んだのですか?」
アンスリウムはまさか追放だけで済むとは思わず、信じられないとでも言いたげな顔で国王を見る。だけど、わざわざ嘘を言う必要もないので国王は頷くだけだ。
「アンスリウム兄さん。何もおかしな事ではないんじゃない? ミアを利用するようで悪いけど、チェラズスフロウレスには聖女であるミアがいるんだし、あまり事を荒立てるつもりは無いと思うよ」
「ランタナ。お前には分からない事だろうが、天翼会が本気になればミアを俺たちから奪う事だって出来る。聖女をチェラズスフロウレスに留めておく必要は無いんだぞ」
「そんな。でも……」
ランタナが言い淀み、その可能性を否定できずに黙り込む。でも、それを「それはありえません」とハッキリとネモフィラが否定した。まさかネモフィラが否定するとは思わず、アンスリウムとランタナが驚いて視線を向けると、ネモフィラは笑顔で言葉を続ける。
「ラテール先生に先程ここに集まる前に聞いたのです。ミアにサンビタリアお姉様の処罰は任せると。天翼会の他の方々は、ジャスミン先生に説得させると言っていました」
「そうか。ジャスミン先生なら一応は安心か。あの先生は天翼会の中でも影響力が高いからな」
「そうなのですか? あ。それよりも、お姉様がこの先どうなるのかはミア次第です。でも、きっと大した事にはならないのですよね? ミア。ミアは酷い事はしないのですもの。わたくしは少しきつめのお仕置きをしてほしいのですけど」
ネモフィラは言葉の最後にサンビタリアに向かってイタズラっぽい笑みでベッと舌を出す。そんなネモフィラにアンスリウムとランタナが冷や汗を流し、国王が穏やかな笑みを零した。しかし、世の中そんなには甘くない。若干ではあるが和やかな雰囲気になったこのタイミングで、それを打ち消したのは今話題に上がった聖女ミアである。
「別にワシは生温い罰で済ますつもりは無いのじゃ」
「え……?」
「何度も言うが、サンビタリア殿下の育った環境に同情してはおるし、可哀想じゃと思っておる。しかし、それはそれ、これはこれなのじゃ」
「えええええ!? で、でもミアはお姉様がお嫌いでは無いのですよね?」
「それだって、それはそれでこれはこれなのじゃ」
思いもよらぬミアの言葉に、ネモフィラは口を開けたまま言葉を失う。そしてそれは他の者も同じで驚いていたが、流石と言うべきか、ミアの侍従たちだけは当然といった表情をしていた。
「で、サンビタリア殿下の罰じゃが、ワシに良い考えがあるのじゃ」
ミアの顔がキリリとし、駄目そうな雰囲気が迸る。皆が緊張した面持ちでミアに注目し、ミアは口角を上げて大きな声で宣言する。
「下着だけの半裸姿で、被害者全員だけでなく迷惑をかけた関係者全員一人一人に、直接向かい合って謝罪するのじゃあ!!」
高らかに宣言した罰はあまりにも意味不明だが、その顔はドヤ顔で至極真面目。やはりミアはアホだった。




