極秘で無いただの計画
「リリィ先生とジャスミン先生はまだ来ていないのですか?」
「はい。学園内では先生方にも被害が出ているそうで、ジャスミン先生とリリィ先生はそちらで忙しくしていて、こっちに戻って来れないそうなんです」
「本当ですか!?」
ミアがサンビタリアとニヤつく少女の様子を見ている中で、ネモフィラとリベイアが寮の責任者は何をしているのかと話し合っていた。わけだが、学園では先生にまで被害が出ていると聞いて、ネモフィラはもの凄く驚いた。
「はい。代わりの精霊様がいるみたいですけど、その精霊様はお昼寝中で起こせなくて……」
「お昼寝中……ですか」
お昼寝と言えば、頭に冠を乗せた眠気眼な精霊だろう。ネモフィラは昨日見た怠惰を極めると言っていた精霊を思い出して冷や汗を流した。確かにあの精霊であれば、興味無いの一言で終わりそうである。
「先生ならここにもいるわよ」
不意にサンビタリアが声を上げ、ネモフィラとサンビタリアの目がかち合う。すると、ネモフィラが直ぐにミアに視線を向け、ミアは微笑んで頷いた。
「そうじゃな。サンビタリア殿下はここで先生をやっておるようじゃし、ここは任せても問題無かろうなのじゃ」
「でも、お姉様は……」
ネモフィラが眉根を下げて言い淀む。すると、サンビタリアが気に入らないと言いたげな表情でネモフィラを睨んだ。
「何よ。私が教育実習生として来ているだけだから頼れないとでも言いたいわけ?」
「そう言うわけではないのです。ただ……」
「ただ? ただ何だって言うの? 確かに私はお父様の命令で、国に天翼学園のような学校を作る為だけにここに来たわ。でも、私は数年間ここで真面目に働いて勉強をしてきたのよ。見くびらないでもらいたいわね」
「それは分かっています。でも、昨日のお姉様を見れば、とても頼りになるとは思えません」
「なんですって!」
ネモフィラとサンビタリアが睨み合い、そこへミアが「まあまあ。落ち着くのじゃ」と割って入る。
「サンビタリア殿下が天翼学園に極秘で行っておると聞いておったが、それが理由だったのじゃなあ」
「ふん。今更極秘も何も無いわよ。今回のあなた達の試用入園が決定した時に、この話は極秘から特別でも何でもないただの計画に変わったわ。ミア、全部あなたのせいよ」
そう言ったサンビタリアの表情は凄く悲しそうで、そして、恨みの籠った目をしていた。そしてその姿は、何処か焦っているようにも見えた。だけど、ミアには分からない。何故サンビタリアはここまで焦っているのか。何故その事と自分が関係しているのか。
「そこでなんでワシのせいになるのじゃ?」
「そんなの、あなたの存在でこの試用入園が作――」
「サンビタリア様。それ以上は」
「――っ! そうね……。ありがとう、ツェーデン」
ミアが関わっている理由。それは、ミアの存在が天翼学園児童部試用入園発案のきっかけだったから。天翼会は聖女の誕生を知り、この学園に少しでも早く通わせようと考えた。何故なら、聖女と言う存在が、世界にとってプラスになるかマイナスになるか見極める為だ。今回の児童部試用入園の知らせがきてから、試用入園まで時間がそれ程なかったのは、それが原因だったのだ。だけど、これは口外してはならない事。
ツェーデンがサンビタリアを止めたおかげで何とか喋らずに済んだが、それでもミアは自分を通わせる為だと言う事には気がついた。そしてそれはミアだけではない。ミアが聖女だと知る者はそれに気がつき、各々が口には出さないが複雑な表情を浮かべた。
「ミア。見てなさい? 私がこの事件の犯人を裁いて、誰がチェラズスフロウレスの王として相応しいのかを証明してあげるわ」
「お主、まさか……」
「お姉様……?」
サンビタリアが勝ち誇るような笑みを見せて、ニヤつく少女に向かって真っ直ぐと歩いて行く。その後ろ姿を見て、ミアは嫌な予感を感じた。




