内緒の話
チェラズスフロウレス寮に帰って来ると、ミアと国王と王妃の三人は寮内にある会議室に集まった。理由は、ミアの秘密について話し合う為。天翼会に問題視されてしまった事で、今更ではあるが国王と王妃が城に戻る前に話し合いが必要だと感じたのだ。国王は他者の入室を禁止し、扉の前の見張りを騎士達に命じた。
「国王様にはすまぬ事をしたのう」
「とんでもございません。気遣って下さりありがとう存じます。しかし、その必要はございません。本来であれば、もっと早く話し合うべきだったのです。これは私の自業自得でしょう」
「聖女様がご希望された事とは言え、大人としてしっかりと考えるべきでした」
国王に続いて王妃が告げると、ミアは居た堪れない気持ちになった。前世で八十まで生きたミアからすれば、国王や王妃だって自分より年下みたいなもの。大人としてだなんて言われてしまうと、どれだけ自分が浅はかなのかと落ち込んでしまう。でも、だからと言って落ち込んでなんていられない。ミアは真剣にこの事を受け止めた。
「グラッセさんだけでなく、ルニィさんとクリマさんにもワシから話す事にするのじゃ」
「承知しました。よろしくお願いします」
「それから、国王様と王妃様が信用しておる者には伝えておいてほしいのじゃ」
「我々が告げる相手を決めてしまってもよいのですか?」
「うむ。誰に伝えるかをワシに教えてくれればいいのじゃ」
「承知しました。では、まずは今直ぐ思いつく候補を何名かお話します」
◇◇◇
「三人に内緒の話があるのじゃ」
国王たちとの話が終わり、ミアは侍従たちを自室に集めてカーテンを閉めると、早速話を切り出した。そして、手を前にかざして白金に淡く輝く魔法陣を浮かび上がらせると、白金の光を放って三人を優しく包み込んだ。
「これは……これが、ミアお嬢様の魔法……」
「あわわわわわわわ! な、なんですかこれ!? うひぇえええええ!?」
「美しいですね」
ルニィは一見落ち着いているようにも見えるが驚いていて、クリマーテは慌てるように驚き騒ぎ、ヒルグラッセは柔らかな笑みを浮かべる。そんな三人の反応を見てミアは微笑すると、今度は「ミミミ」と呟いて羽の耳を持つ真っ白なウサギを体内から出現させた。
「これはワシの魔装のミミミなのじゃ」
白金の光に続いて、今度はまさかの魔装の登場でルニィとクリマーテは驚いた。そして、ヒルグラッセもミアが魔法を使う所しか見た事が無かったので、二人と同じように驚いた。でも、やはり可愛いものは驚きを凌駕する事もある。ミミミが現れると、クリマーテだけは驚いた直後に目を輝かせた。
「可愛らしいうさちゃんですね。この子は何をする魔装なんですか?」
「そうじゃなあ。色々あるのじゃが、一番はこれじゃな。ミミミ、戦闘モードに移行じゃ」
ミミミがミアの言葉を合図に姿を変形させてピストルの形になり、それをミアが掴んで何も無い方向へと構えて、撃つ真似をしてみせた。
「わあ。ミアお嬢様かっこいいですねえ」
「そうかのう? てれるのじゃ」
などと言いながら、調子に乗るミアは何度も撃つ真似をして、クリマーテが何度も褒める。それを何度か繰り返していると、ルニィが背後からクリマーテの肩を掴んで後ろに下げ止めた。
「ミアお嬢様。内緒の話と仰いましたけど、それはミアお嬢様が“聖女”様だと言う事でしょうか?」
「え!? そうだったんですか!? って、あ! そうですよね! 白金の光だなんて、聖女様以外考えられません!」
「クリマーテ。静かに。誰かに聞かれてしまうかもしれないでしょう?」
「っあ。はい。すみません……」
注意を受けてクリマーテが口を両手で押さえる。すると、ミアは苦笑しながらミミミを元の姿に戻して抱っこして、三人の侍従たちと順番に目を合わせた。
「ルニィが言った通り、ワシは王族や天翼会から“聖女”と言われておる。今まではワシの我が儘で内緒にしておったのじゃが、天翼会に国王が呼ばれて問題視されたのじゃ。だから、ワシはこれを重く受け止めて、信頼出来る限られた者だけに話す事を決めたのじゃ」
「そうだったんですね。話してくれて嬉しいです。ね。ルニィ、ヒルグラッセ」
「ええ。信頼されていると知り、とても光栄に存じます」
「私は前から知っていたけどね」
「え!? 知ってたの!? なんで教えてくれなかったのよ?」
「さっきミア様が言ったでしょ? 内緒にしていたって」
「あ。そっか……。まあ、いっか。そんな事より、ミアお嬢様が聖女様だなんて。私、感激しました。ね。ルニィ」
「そうね。でも、私は少しホッとしたわ」
「え? ホッとした? なんで?」
「さあ。何故でしょうね」
と言いながら、ルニィは嬉しそうな笑みを浮かべてミアに視線を移した。
「一部の者にしか話さないのでしたら、今後のミアお嬢様と私達の関係も今まで通りでよろしいのですか?」
「うむ。聖女と言う事を隠してくれればいいのじゃ」
「承知致しました」
「分かりました。絶対誰にも言いません」
「もちろん私も今まで通りに口外しません」
「ありがとうなのじゃ」




