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TS転生のじゃロリじじい聖女の引きこもり計画  作者: こんぐま
第一章 TS転生聖女はのじゃロリじじい
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学園に向けて

 家族会議室での話し合いから一夜が明ける。ネモフィラが暴走して終わった家族会議。それにその後の食事の時間も、殆どが今後のミアの生活の説明についての話題で終わった。と言うか、ネモフィラが興味津々でそれ以外の話が出来なかった。

 そうして迎えた朝に、ミアは侍従のルニィとクリマーテに起こされて、二人に濡れたタオルで顔を綺麗に拭き取られる。それから直ぐに着替えも含めて全ての朝の準備を二人にやられて、とても居心地の悪い気分でミアは朝食を食べに食堂へと向かっていた。


「ルニィさん、クリマさん、お主等もグラッセさんのように着替えとかをワシにせんでええのじゃぞ? ワシはそのくらい自分で出来るのじゃ」

「では、わたくしたちはクビと言う事ですね」

「な、なぬ!?」

「ルニィ、どうしましょう? わたくし、クビになって帰ったら、きっと両親に叱られるですまないわ」

「仕方が無いわよ。ミアお嬢様を不快にさせたのだもの。最悪処刑も覚悟しましょう」

「――しょ……っ!? ま、待つのじゃ! 今のは無しじゃ! 冗談なのじゃ!」

「まあ。ミアお嬢様ったら人が悪いですわ」

「うふふ。良かったあ。私、何か失礼な事をしてしまったのかと思ってしまいました」


 本当に安堵した表情をする二人に、ミアは冷や汗を流す。


(風呂も一人で入れんし、着替えもやってもらわないといかんし、一人でゆっくり出来るのはトイレの中だけなのじゃ。この生活には慣れるのには時間がかかりそうじゃなあ。はあ……あ。そうじゃ! 生活じゃ! のんびりしたスローライフ計画なのじゃ!)


 ミアはすっかり忘れていた計画を思い出し、計画を考えながら歩いて食堂に辿り着いた。と言っても、ここは王族専用の食堂。王族以外となると許可や招待が必要な場所である。ミアは王族ではないし今は公爵として城に住んでいる立場だけれど、王族と食卓を囲む許可を得ていると言う扱いになっていた。ただ、ミアとしては王族と一緒に食事なんて落ち着かないので、出来れば自分の部屋でゆっくりご飯を楽しみたいのが本音である。


「ミア、おはようございます」

「おお。フィーラ。おはようなのじゃ」


 食堂ではネモフィラが先に食事をしていて、ミアの姿を見ると食事の手を止めて笑顔で出迎えた。


「わたくしの隣が空いてますよ!」

「うむ。そうじゃな」

(フィーラは朝から元気で可愛いのじゃ。子供はこのくらい元気があるのが一番じゃな)


 何故か朝から勢いのいい少し興奮気味なネモフィラに誘われて、ミアは隣の席に座りながら、前世のお爺ちゃん思考を復活させて微笑ましく笑む。やはり前世の記憶があるミアとしては、相手が王族と言えど子供は子供。今世で同じ年齢なネモフィラでも所詮は五歳児なので、まるで孫を見るような感じで愛でてしまうのだ。ネモフィラへの可愛い発言も、そこからきていると言っても間違いないだろう。


「ふむ。王族の朝食はどんなものかと思っておったが、パンとスクランブルエッグとウインナーとサラダとスープか。普通じゃな」

「そうですか? ワタクシには少し多いので、いつもパンとサラダとスープだけ食べて、残りはいつもルティアとメイクーに食べてもらってるんです」

「下げ渡しと言うやつじゃな」

「そう……なりますね。この国では目上の者から目下の者に下げ渡す。と言う文化や制度が無いので、あまり意識していませんでしたけど」

「言われてみれば、昨晩の食事の時もそんなものは無かったのう。でも、そうなるとフィーラは偉いのじゃ」

「え?」

「だってそうじゃろう? 食べ物を粗末にしない為に、残ったご飯を侍従に食べてもらっておる。ご飯と言うのは命を頂いておる行為ゆえ、そうやって大事にするのはとても良い事じゃ。フィーラは本当にいい子じゃな」

「えへへ。そんな風に褒められるのは初めてです。嬉しいです」


 ネモフィラが照れて笑みを浮かべて、ミアもそれを見て満足そうに笑う。そして、そんな二人の姿を、二人の侍従たちが微笑んで見守った。するとそこに、ランタナが「おはよう」とやって来て、二人の前に座る。


「二人とも朝から仲が良いね。その調子で勉強も二人で一緒に頑張るんだよ」

「はい。お兄様」

「……勉強? ですのじゃ?」

「昨日食事をしながら話しただろう? 今日からはミアにも午前中は勉強を、午後からはマナーやピアノなどの実技のレッスンって」

「う、うむ。確かにしたような気がするのじゃ」

(ご飯が美味しくて話を聞いて無かったとは言えぬのじゃ)


 王族と食事は落ち着かないのでは? と言いたくなるが、ミアはアホなので仕方が無い。と、それはともかくとしてだ。冷や汗を流してミアがそんな事を思っていると、ネモフィラが満面の笑みを見せる。


「一緒に頑張りましょう、ミア」

「頑張るのじゃ」


 とは頷いたものの、ミアは頑張る気などなかった。何故なら、ミアはこの世界で生まれてから勉強をしまくっているからだ。異世界は色んなものが珍しく、目移りする程に豊富な“新しい”がいっぱいで、あれもこれもと学びまくっていた。しかも、ミアは人生二回目。前世では真面目に勉強していたのもあって、一から十を学べるくらいには勉強の効率の良さが抜群である。だから、前世の記憶の分だけでなく、五歳児とは思えない程にこの異世界での知識も豊富なのだ。

 ミアは今更勉強しても退屈に違いないと考えていた。そしてこの時、ミアは聖女にあるまじき悪い事を思いついてしまう。


(そうじゃ! 勉強なぞ無意味じゃから、その時間にのんびりスローライフ計画を考えれば良いのじゃ!)




◇◇◇




 早速始まった天翼学園に向けた勉強会。ミアはもの凄く真剣な表情を浮かべていた。


「このように、お披露目会以降許可を得て使用できる魔法の他にも、能力スキルと言う特殊な力があります。そしてこの能力スキルはどうやって手に入れるのかご存知ですか?」

「はい! 市販で金貨十枚で売られておる能力取得装置スキルゲットキューブを使うのじゃ!」

「正解。ミア様は大変お利口でございますね」

「凄いです、ミア」

「いやあ。それ程でもあるのじゃ」


 ミアが得意そうにご機嫌に微笑む。と言うわけで、計画を考えるとは何だったのか? ミアはアホなので即落ち二コマのごとく真面目に授業を受けていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私は元「ギフテッド・チャイルド」だったと思います。 ヘッドスタートが終わり、勉強が必要になったときに苦しみましたが、そうする習慣を身につけませんでした。 「スキル」の概念を紹介する簡単な方…
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