スピーディー
「いくら奪い方は自由でも俺たちはデュエリストだ。俺たちの運命はカードに委ねるべきだ」
井出の講釈は続く。
いま場は彼が完全に支配している。
企画した男も井出の話に聞き入っていた。
「手の内を知られるのが嫌なら簡単な事だ。デッキ枚数とライフポイントを減らせばいい」
デッキは10枚。ライフポイントは1000。初期手札は1枚。
これが井出が提案した変更するルール。
誰も他に代案を出さなかったので、これが一時的に採用された。
モンスター1体のダイレクトアタックでも致死量に達するスリリングデュエル。
これなら、すぐに決着がつくし、デッキ内容を大幅に知られる心配もない。
とりあえず何人かはこのルールで戦ってみようと動き出した。
つられて加藤も動こうとしていたので、制する高杉。
「まだ様子見しよう加藤。3人以下になるまで続くのなら、俺たち以外の相手は必ず一人出る」
このコンパクトデュエルは一見運任せの戦いに見える。
一度戦いの流れを見ておき、それに合わせてデッキを編成するのが無難だろう。
一組目がデュエルを始めた。
対戦カードは1年の相沢昌斗と2年の川野誠司だ。
先攻は相沢。
先攻ドローした時点でもうデッキは8枚しかない。
守っていてはデッキ切れで良くて相打ちだろう。
この場合先攻をとったプレイヤーが不利か?!
「鎧武者ゾンビを攻撃表示で召喚、ターンエンド」
自分のデッキから10枚厳選しているんだ。
お互いの精鋭カード揃いだろう。
ターンは川野にうつる。
「俺は二頭を持つキング・レックスを出す。そして攻撃」
鎧武者ゾンビ 攻撃力1500 VS キング・レックス 攻撃力1600
相沢 LP 1000 → 900
大きな一撃。相沢は川野のキング・レックスを除去しなければ、
次の川野のターンでさらなる上級モンスターを召喚されてしまう可能性がある。
そうなればもう絶望的だ。
そんな相沢の手札に来たのは・・・!!!
「ドロー・・・・!」
ディスク・マジシャンだ。攻撃力1350。これでは勝てない。
守備で伏せるしかない。
川野のターン。
「守備で伏せて攻撃を躊躇させようというのか?」
見抜かれている。
「ライフポイントが少なければいざしらず。ライフに余裕があるうちはガンガン攻撃させてもらう」
川野の考えは正しい。
生け贄が不要なレベル4のモンスターの最高守備力は2000である。
つまり、攻撃力1600のキング・レックスで攻撃したとしてもダメージは400が限界。
半分くらいは残る。一度くらいはそんな無茶も通るのである。
劣勢そうな相手ならなおさら攻めた方が効果的なのだろう。
下手に場にモンスターを残すと上級モンスターの生け贄にされることもある。
「またしても良いモンスターを引いたぞ・・・」
ニヤリと川野が笑う。
「ミノタウルスを攻撃表示だ!そして攻撃」
ディスク・マジシャン 守備力1000 VS ミノタウルス 攻撃力1700
ディスク・マジシャン粉砕!
相沢の場にはモンスターがいない・・・!!!!
「キング・レックスでダイレクトアタック!!これで姉妹だ!」
相沢 LP 900 → 0
わずか3分のデュエル。
「なかなかスピーディーだな」
高杉が感想を漏らす。




