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夏と私と魔法の書~不思議な男の子との約束~  作者: サトウアラレ


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17/24

17 逢魔が時の鬼火 

 夕方になるとシリウス君とユウト君、ケントは私を迎えにやってきた。


 おばあちゃんに見送られて、田んぼの方を行くならと、虫よけスプレーをしっかりしてから出かけた。


「マオ。にいちゃんの事、ごめんな」


「ううん。しょうがなかったんでしょ?聞かれたら(うそ)は言えないよね。それにしても、シリウス君、なんだかずっと考えてるね」


「ああ、暗くはないんだけどよ。ずっとにいちゃんと何か難しい話をしているんだよな」


「どんな?」


「いや。なんだか宇宙とか、生命とか、魔法とかそんなの。俺、よく分かんね」


「うん、私も分かんない」


 ケントはシリウス君と会ってから私に意地悪をする事が無くなった。だから今は普通にしゃべる事が出来る。


「マオちゃん」


 シリウス君が横に立って、ユウト君はケントを呼んで話をしていた。


「シリウス君、鬼火出るかな?」


「どうかな、図書館に行って本を探したりしたんだ。鬼火って科学的に証明されている物もあるらしいよ。勿論、科学じゃ証明出来ない物もあるみたいだけど」


「え?じゃあ、鬼火も作れるの?」


「うん、電気みたいにね」


「そっか。でも、今日、見れたらいいな」


「うん。そうだね。全部証明出来たらいつでも見れるからいいよね」


 シリウス君はそう言って、私の手をぎゅっと握った。


「うん。あ。はい。コレ、シリウス君にも虫よけスプレー」


「僕にして意味あるのかな?」


「分からないよ。(かゆ)くなったらいやでしょ?シリウス君、どんどん人間になってるんだから」


「……。そうだね」


 シリウス君に虫よけスプレーをかけ、ついでに、ケントに渡すと、ケントがユウト君にも掛けていた。


「今日の鬼火はね、目撃者(もくげきしゃ)が何人もいるんだって」


「え?本当に?」


「うん、だから見れるかもしれないよ」


 シリウス君は優しく微笑んで、「ちょっと怖い?」と聞いてくれたけど、私は「怖くないよー」と返事をした。本当はちょっと怖いけど。



 それからあぜ道が見える所まで歩いた。


 あぜ道に行くかと思ったらユウト君が「離れた所から見た方がいい」というので、あぜ道が見える少しだけ離れた高台の公園というには何もない所から見る事にした。


 ベンチが四台あって、四阿(あずまや)があるだけの公園。避難場所とかに指定されているのかもしれないけど、それにしては狭いとは思う。


 田んぼが見渡せて、時々、軽トラックが走って行くのが見えるだけ。夕方になって、薄暗くなってくると、誰もいなくなった。


「この夕方の時を逢魔が時(おうまがとき)って言うんだよ」


 ユウト君が教えてくれた。紫に近い赤い夕陽。なんだかちょっと怖い感じがするからそう言われたら納得してしまう。


黄昏(たそがれ)の時を言うんだけどね。夜になるこの時は不思議なものが出やすい時って昔から言われているんだ」


 ゆっくりと空の色が変わっていくのを見ながら、田んぼを見つめていると、田んぼに長い影が浮かんでいるのが見えた気がしたけど、でも、見直すと暗くなったせいでそう見えただけな気もした。


「鬼火は並んで出る時もあるらしいし、田んぼの上に浮かぶこともあるそうなんだ」


「なんだか不思議な感じ」


「おう」


 皆で並んで見ていたけど、夕方になって、陽が落ちても鬼火は現れなかった。


「今日は現れなかったね」


「うん、残念だけど、ちょっとほっとした」


「なんだよマオ、怖かったのか?」


「弱虫だな」とケントがからかってむっとしたけど、でも、怖く思ったのは本当なので、素直に頷いた。


「うん、ちょっと怖かった。だって、もし、お化けがでたらどうするの?」


「マオちゃん、これだけ離れていれば大丈夫だよ。後は、帰る時は振り返らないように帰ればね」


「振り返っちゃダメ、とか言われたら振り返りたくなるよ。どうしよう」


「ま、まあ、何かあったら俺が戦ってやるよ」


 ケントが威張って言ったけどケントが戦って勝てる相手なら私でも勝てると思う。


「じゃ、帰ろうか」


 ユウト君がそう言った時、あぜ道のほうに白いふわふわふした者が浮いていた。


「あ」


「うん?」


 私が指をさすと、皆が一斉いっせいに指をさした方向を見た。


「鬼火?」


 私が言うと皆がどれ?と不思議そうにいう。


「なんだよ、マオ、驚かすなよ!」


 ケントがちょっと引きつった顔で笑った。


「違う!紙だ!飛んでいっちゃう!!」


 私が走って追いかけ出すと、「神?」とユウト君が聞いて「紙だよ!」とケントが返していたけど、多分、通じてない。


 田んぼのあぜ道に降りて、ふわふわと飛んで行く紙を必死に追いかけて行く。


 もう少しで取れる!私が手を伸ばして紙を掴んだ瞬間、身体がふわっと浮いた。


 あ。これ、やばい。やっちゃった。


 ゾクッとしたかと思ったら、一瞬が凄く長く感じた。


「マオちゃん!!」


 その声を聞いた瞬間、振り返ろうとしたけど、首が上手く回らなくて、(あせ)ったシリウス君の声と、何故か用水路の下に水が(ほとん)ど入ってないのが見えて、冷静(れいせい)に「すっごく暑いから水もないのかな」なんて考えた。


1メートル以上用水路の深さはある。


 ああ、本当にやばい。これ、怪我しちゃったな。とか思ったけど、本当にこれだけの事を一瞬で私は考えていたんだ。


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