ケントの兄、ユウト君 16
台風が過ぎ去った後、シリウス君はまた家にやってくるようになった。
「シリウス君、台風、大丈夫だった?」
「うん。小学校の中に避難してたよ」
「へー。」
「隙間があったり、ガラスみたいに向こうが見える場所には僕、入れるんだ」
「ほー」
こういう話を聞くと、改めてシリウス君が精霊なんだなあと思う。最近は手もぶよぶよじゃないし、ケントがドンっとぶつかったり、水を掛け合いっこしても、シリウス君は潰れたりもしない。
本当の人間みたいに見える。
「不思議だねえ」
「?」
私が呟いたのをシリウス君はにっこり笑って首を傾げていた。
「おーい、マオー。シリウスーいるかー」
「あ。ケントがきた」
私が玄関に行くと、そこにはケントと久しぶりに見る、ケントのお兄さん、ユウト君が立っていた。
「あー。今日は兄ちゃんも来たんだ。えっと、シリウスの事ちょっと話しちゃって、で、シリウスと話したいって兄ちゃんついてきちゃったんだよ」
「やあ!君がシリウス君?導かれし者同士と愚弟から聞いてね」
「初めまして、シリウスです」
「うんうん、成程、オーラが違うね。僕はユウト、輝く魂を持つ者同士、仲良くしよう!」
ちょっと変わったユウト君はケントに似ずイケメンで、とっても賢い。でも、けっこう本当に、変な人だ。優しくて私は好きなんだけど、興味がある事になると凄く早口になるし、賢すぎて何言ってるか分からなくて話についていけなくなる。
「ちょ、ちょっと、ケント。こっち。ユウト君、上がって、シリウス君と一緒にそっちに座ってて」
「ああ、マオちゃん、君も相変わらず綺麗なオーラだよね。では、シリウス君の話を聞かせて貰おうかな」
「え、えっと、僕よりも、僕はユウトさんの話を聞きたいかな?」
「喜んで!この偉大なる宇宙のコアなる話しをしていこう!」
ユウト君はシリウスと嬉しそうに座って、なんだか分からない難しい話を始めた。
私はケントをキッチンに引っ張って、一体どういうことかを聞いた。
「ケント!ユウト君、なんできたの?」
「いや、ほら、この間、白玉、持って帰っただろ?で、俺、最近、マオの所で遊んでるじゃん。で、シリウスって面白い友達が出来たって、にいちゃんに言ったんだよ。で、普通は興味ないのにさ、俺が、あいつも不思議なもん、好きなんだよな、ってちょっと言っちゃったら、興味持っちゃって」
「じゃあ、シリウス君が精霊とは言ってないの?」
「ああ。それは言ってない。でも、にいちゃん、そういうのにも詳しいから、紙がまだ見つからないだろ?にいちゃんに相談するのもいいかも知れないってさ」
「ああ、確かに。ユウト君、賢いし」
私達は頷いて、お茶をお盆に乗せると、シリウス君とユウト君の所に戻った。
「だからね、僕は不思議なモノって言うのは見る視点が違うだけの事だと思うんだ。次元がね違うだけなんだよ。世界はバームクーヘン見たいなモノなんだと思うな」
私がお茶を出してもユウト君は嬉しそうにシリウス君に話し掛けていた。シリウス君も「バームクーヘン」と言い、興味ぶかそうに話しを聞いている。
「おい、マオ。こうなるとにいちゃんなげえぞ。適当に話を聞いてろよ」
「分かった」
「そもそも、魔法や幽霊、妖怪なんかは本当に実在するんだよ。それなのに、否定している人達がいる。とっても悲しい事だ」
悲しそうに話すユウト君の話を聞いて、私はケントにこそっと聞いてみた。
「……。ケント、妖怪も本当にいるの?」
「知らねえ。でも、いないって証拠はないからいるんじぇねえの?」
「成程、そう言う考えもあるのか」
ふんふん、と私が頷くと、ユウト君も頷いた。
「マオちゃん、人の魂には重さがあるって言われているんだ。人は死んだ瞬間にちょっとだけ軽くなるってね。それが魂の重さって言われている。だから幽霊にも重さはあると僕は思うよ」
「幽霊っているの?」
「人の想いって凄いことなんだよ。気持ちが沈むと病気になりやすかったり、もう、無理だって思われた人が、大好きなアーティストのライブに行く為に長生きしたりね。科学では解明出来ないことが沢山ある。それが幽霊や魔法、妖怪や都市伝説って言われている物だよ」
「じゃあ、河童もいるのかな」
「いるだろうね。天狗、雪女、一つ目小僧もいると思うよ」
「ユウト君は妖怪博士みたい」
「にいちゃんはオタクなんだよ。博士じゃねえって」
「まあ、ね。僕は人には見えない力があるって思う。その人の周りには不思議な色が見えるしね。でも、シリウス君、君には見えない。どういうことかな?」
コクン、とシリウス君が頷く。
「君は何者なんだい?なんだか変な感じだね。でも、妖怪みたいだけど、少し違う用だ。なんだろう?不思議な人だね。いや、モノに近い存在なのかな?」
ユウト君が不思議そうにシリウス君を見るので、私はケントと一緒にユウト君の前に飛び出した。
「シ、シリウス君はイケメンだから不思議なんだよ」
「そ、そうだな。それにこの辺の事知らないからな。だからにいちゃんも不思議な感じがするかもな」
「うーん。そうかな。そうだ。そう言えば、鬼火の伝説が丁度今夜あるね。僕は行ってみようと思うけど、シリウス君も行かないかな?」
「鬼火?」
「え。シリウス君、行くの?」
「うーん。どうしようかな」
「そんなに遅い時間じゃないよ。日が落ちる時間。逢魔が時に行くからね。今は日が伸びているけど、そうだな、七時からは八時位かな」
「シリウス君が行くなら私も行く」
「じゃあ、俺も行く」
「うん。小学校の奥の田んぼがあるよね。あそこのあぜ道に夏の新月の日に鬼火が出るって言われているんだ。それが今日。あとで迎えに来るよ」
「うん」
シリウス君はじっとユウト君を見つめて頷くと、シリウス君もケントもユウト君と一緒に帰って行った。
おばあちゃんにユウト君と一緒に夜、ちょっと出かける事を伝えると、ユウト君が一緒だったらいいよ、と言って貰えた。
変なユウト君だけど、成績抜群の変な人なので、おばあちゃん達からの信頼は厚いのだ。




