11 小学校
あれから、ケントに会う事も無く、シリウス君とは毎日色んな所に出掛けた。
紙を見つける事もあったけど、見つけない日もあった。シリウス君は「急がなくていいよ。きっと、見つかるから」と慌てず、ただただ一緒に遊んですごす日もあった。
うだるような暑さの時には庭で水遊びを一緒にしたり、捕まえたカブトムシ(ナポリタン)を一緒に眺めて宿題をして、のんびりしたりした。
おじいちゃんとおばあちゃんは仕事に行ったり、近所の人が亡くなって手伝いに行ったり、買い物に行ったり、おじいちゃんの友達が近所に帰ってきて、遊びに出掛けたりとしていたから、私がシリウス君と遊んでいるのは、おばあちゃんもおじいちゃんも喜んでいるようだった。
でも、よく分からないシリウス君をおばあちゃん達も不思議とすんなり受け入れているのがちょっと不思議でシリウス君に聞いてみた。
「僕は精霊だからね。マオちゃんに悪い事をしないって誓っているから、おじいちゃんとおばあちゃんは僕を受け入れるように出来ているんだよ。僕はマオちゃんの守護精霊にもなっているから」
「シリウスは私を守ってくれているの?」
「うん、力は弱いけど。僕の手伝いをしてくれているマオちゃんに、魔法書がマオちゃんを助けるのを認めているんだ。だから、魔法書の力が働いて、僕の事を都合の良い様に受け入れるんだよ」
「そっか」
でも、ケントは受け入れてないみたいだったけど。アイツはスーパー意地悪だから精霊の力も効かないのかもしれない。
「悪の大王……」
「うん?マオちゃん、今日はどこか行きたい所ある?」
「うーん。あ、シリウス君、私の小学校、見た事ないよね。行ってみようか、十分位、歩くけど」
「いいよ。行こう」
出掛ける前に、まだ、家にいたおばあちゃんに「小学校に行ってくる」と伝えると、「お昼におにぎり作っているから、帰ってきたら二人で食べて。それとも持っていく?日傘さしたら?」と言われた。
水筒を持ち、日傘をさして、帽子も被って、シリウス君と小学校に向かった。
ミーンミーンとセミは元気よく鳴いている。
セミの鳴き声を浴びながら、シリウス君に近道の細い路地を教えながら、お地蔵様に手を合わせて、小学校に着いた。
「ここ。遊具は熱くなってるから遊べないけど、亀池の所は涼しいよ」
「へー」
シリウス君はキョロキョロ小学校を眺めると、私に手を引かれて、校長室の近くの窓の下にある亀がいる池の所に座った。
「向こうの川から小学校に水が流れて小さな小川が出来てるの。でね、この池の中を通って、川に戻るようになってるの。亀がいるんだけど、今は潜っているのかな」
日陰で話していると、今日は良い風が吹いて来て気持ち良かった。
「シリウス君。魔法書の紙はあと三枚?」
「うん。マオちゃんが沢山見つけてくれたからね。『シリウス』『アンタレス』『スピカ』『ポルックス』『ベテルギウス』『アルデバラン』『アルタイル』七枚も、もうみつけたね」
シリウス君は指を折りながら今まで捕まえた魔法書の紙を順番に言った。
シリウス君のその指はもう触っても普通の人と同じように感じる。髪の毛も透明感のあるふわふわのクリーム色から、黄色に近い髪色になって、眼の色も明るいオレンジになっていた。
「シリウス君も元気になった?」
「うん。マオちゃんのおかげだよ」
「よかった」
『スピカ』から先の魔法書集めはこんな感じだった。
『ポルックス』は風に吹かれて飛んで行くのを見つけて、慌てて追いかけたけど、捕まえられそうになると、すいっと逃げて、なかなか捕まえられなくて、汗だくになって大変だった。結局、隣の小学校まで、走って行く事になって、帰って来た時は、へとへとで、ご飯を食べてすぐに寝た。
『ベテルギウス』の時は運動公園に遊びに行った時に、背の高い三人の男の子たちがバスケをしていて、そのバスケットゴールに挟まっていたから、その子達がシュートをして落とすのをじっと待っていたら、仲間に入れて欲しいと思われて、シリウス君がバスケを一緒にする事になったけど、楽しそうだったし、無事に紙も手に入ったからよかった。
『アルデバラン』の時は猫が咥えているのを見つけておばあちゃんに頼んでイリコを貰って、猫に紙を渡して貰った。他の猫も寄って来た時は困ってしまったけど、シリウス君が沢山の猫に登られていたのは可愛かったので問題ない。
この間見つけた『アルタイル』は、おじいちゃんの背中についていて、こっそりはがすのが大変だった。はがした後におじいちゃんに捕まって、将棋を教えられたけど、良く分かんなくて、結局シリウス君がおじいちゃんの相手をする事になった。
「でも、今日は見つからないね」
「しょうがないよ。もう、ここまで見つけたんだから、見つけにくい場所にあるのかもしれないよ」
「あと、三枚かあ」
私もシリウス君と行った所がない所にいけば見つかるかもしれないと思って、今日は小学校に来たのだ。
それなのに、紙は出てこなかった。
「あ、亀」
「本当」
亀がのんびり泳いできて、よいしょという感じで、岩に上っていった。
「ああやって時々、日向ぼっこしてるんだよ。でも、暑いから、すぐ戻っちゃうかな」
「可愛いね」
「うん。可愛い」
シリウス君と亀を見て、運動場の方や、遊具の方も歩いたけど、紙を見つけることは出来ずに家に帰っておにぎりを一緒に食べて宿題をした。
「あと、残ってるのは作文かあ」
「がんばれ、マオちゃん」
「うん。何書こうかな」
「題名とかは決まってるの?」
「『夏休みの思い出』だって」
「そっか」
結局、作文も掛けず、紙も見つからず、その日は夕方になる前にシリウス君は帰っていった。魔法書が早く見つかったらシリウス君がもっと元気になるのかな。
こうやって毎日シリウス君と遊ぶのは楽しい。学校が始まったら今みたいに出来ないだろうけど、でも、私にとってシリウス君はとっても大切な友達になっていた。




