97 再会の予兆
「陛下、ご指示の通り、三個師団分の装備の生産が終わりました」
黒髪にオレンジの花を付けた女性、アミーナは、書類を見ながら難しい顔で唸っているバジラフ王に向けて、そう報告した。
「ご苦労さん。こんなに短期間で部隊を立て直すなんて、さすがだね。僕には出来ないよ」
「いえ、全て陛下の人望があっての事です」
アミーナ‥‥シャオティンは頭を下げた。黒の外套が揺れる。
「喉に受けた傷は大丈夫でしょうか?」
「まあ、大したことはないよ」
バジラフは笑って喉に手を当てた。
「‥‥‥‥彼女の事が気になりますか?」
それはバジラフの執務室に忍び込んだ暗殺者につけられたものだ。
「そうだね。暗殺しにきたのかもしれないけど、僕には彼女が嘘を言うような人間ではないと思うんだ」
「‥‥‥‥なぜです?」
「勘‥‥かな。うまくは言えないけど」
椅子に深く背を落とす。
「だから柄にもなく、本音を喋ってしまったのかもね。僕は侵略者、憎しみの対象であるべきだという、君の計画とは違うものになってしまうけど、本当は彼らが降参してくれれば丸く収まるとも思ってるんだ」
「‥‥‥‥湾岸都市側は、とても納得はしてくれなさそうですけど」
「そうだね、だから結局、それは僕の希望でしかない。それがベストかもしれないけど、出来なときはベターを選んでいきたいと思うよ」
「賢明な判断です、陛下」
シャオティンは再び頭をさげた。
「侵攻するのはいいんだけど‥‥また来ると思うかい?」
バジラフが言っているのはリシャンの事だ。
彼はまだ、暗殺者の少女が、軍に敗北をもたらした少女と同一人物である事を知らない。
「間違いなく来るでしょう。ですが、心配には及びません」
シャオティンは僅かに口角を上げる。
「その時は私が対応します」
「君が?」
「はい。彼女は私には勝てません。‥‥絶対に」
「それは頼もしいね」
「お任せください」
シャオティンは笑顔を向けたが、その目は笑ってはいない。




