96 空を睨む者
アジェトを置いていく形で湾岸の敷地から飛び出す。コンクリだった地面はでこぼこの石畳に変わる。少し行けば町だが、そこに行っても仕方がない。
「全く、馬鹿じゃないの⁈ 駄目だと最初から分かってて、何でそんな事をするわけ?」
足元の石を蹴り飛ばす。
=理由はあなたも分かってるはずですよ=
「当然!」
だから腹が立っている、
一つの可能性として、もしザフラカンが侵攻する前に、その趣旨を湾岸側に伝えていたら、こうはならなかったのではないだろうか。そして湾岸側も、最初から反抗する意志がないと伝えておけば争いにはならなかったのでは‥‥。
そう思うのは、ただの結果論に過ぎない。こうなる前に、全てを知っているとすれば、人間ではなく、神というものなのだろう。
「‥‥‥この世界での神‥‥‥」
リシャンは顔を上げて空を睨む。それは偽物の青空だ。
「知っていて放置した?‥‥まさかね」
それで一番困るのは管理局だ。
足元のカラスに似た何かに顔を向ける。
「クロウ‥‥管理局は仮想世界での出来事は不干渉なんでしょ?」
=はい=
「それが、世界を歪ませる方向に事件が向いていっても変わる事はないと?」
=そうなる前に対処していますから。エージェントはその為にいます=
「対処出来ない程の事件がこれから起こるとしたら‥‥管理局はまた見て見ぬフリを続けるの? 馬鹿じゃない?」
=今、その件も含めて本部で方針を検討中です=
「遅いっての! もしかしたらお昼ぐらいから始まるかもしれないってのに」
=‥‥‥‥=
クロウは答えない。言っても仕方のない事だ。




