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91 潜入者

 宿舎の中は、外からでは想像がつかないほどに整然としており、金属性の壁は、ここがいざという場合には、この兵舎が防衛拠点になるようだ。

「‥‥‥‥」

 ロッカー的なものもあるようだが、そこに例の武器は入ってはいない。管理局本部でのスキャンでは、レーザー式のその銃は存在しない事になっている。

 武器自体の構造は分かっているので入手する必要はないが、何処からその技術が流れてきたのかを知る必要がある。面倒ではあったが、リシャンは内部からその情報を得る事にした。

 薄緑色の戦闘服が渡されたが、リシャンには明らかに大きすぎる。誰もいない場所まで移動してから、そこでデザインを読み取り、複製してからリサイズして着替えた。

 正規の兵と言うよりは、傭兵の扱いのようで、特に詳しい身元も聞かれなかったが、これからの詳しい行動も説明されなかった。時期がきたら戦場に派遣されるらしい。

「‥‥‥‥全く」

 探索する為に薄暗い通路を何くわぬ顔で歩いていく。ただでさえ立地が砂漠で、埃っぽい。感覚は切ってはいるが、それでも視覚から不快な気分が伝わってくる。

 指令室があれば、そこから情報は抜き取れる。誰かいたとしても、認識阻害を使えば、見えてはいるが誰にも注目される事はない。

 さっさとこの任務を終わらせよう‥‥リシャンはそれだけを考えていた。

 本来は入ってはいけない施設の奥まで入っていく。何人かの将校らしき者とすれ違ったが、リシャンには何も話しかけてはこない。軍服を着た、ここに入る許可をもらった知らない誰か‥‥彼らが思うのはそれだけだ。

「‥‥‥‥」

 扉にパスコードを入力するパネルが付いている部屋がある。どうやらあそこが当りの部屋のようだ。

 リシャンが手を翳すとドアは何事もなかったかの様に開いた。

 中に入ってから扉を閉める。窓は無く、真っ暗だったが、リシャンの眼は昼間のように中を見渡す。

 棚の中には書類が詰まっている。が、それを見ている時間はない。

 机の上にかなり古いタイプのコンピューター端末があった。そこから情報を得ようとしたが、規格が全く違うので接続する事は出来なかった。無理矢理吸い出す事も出来なくもないが、目立つ痕跡を残すのは後々不利になる。同じ理由で管理局に処理を投げるわけにもいかない。

 諦めて、指を使って入力するという非効率極まりないそのインターフェイスを使って、情報を取得していく。

「‥‥‥銃の取引がない‥‥‥突然、在庫が増えている‥‥」

 つまりあの武器はプログラム上に無理矢理作成されたものだ。

 テロリストの関与が確実だ。外のクロウに入手した情報を渡せば、管理局が新たな指針を決定してくれるだろう。

「‥‥‥‥ん?」

 外が騒がしい。そろそろ潮時のようだ。

 リシャンはコンピューターの電源を切り、足跡を全て消してから外に出る。すれ違った何人かの警備兵が走っていくが、リシャンには目もくれない。その警備兵が持っているのは陽子レーザー式のあの銃だ。

「‥‥‥‥」

 元の兵舎に戻るその途中、少しだけ豪華な扉を見つけた。そこにも何がしかの情報があるかもしれない。だが問題がある。パスコードのパネルは見当たらないが、外に兵士が立っている。

「気はすすまないけど‥‥」

 一歩で数メートル先の兵士の目の前まで移動した。

「!」

 突然現れた小柄な兵士に、立っていた警備の男は一瞬、戸惑った。

 リシャンが男の額に手を当てる。

「‥‥‥‥」

 男の瞳から光が消えて、立ったまま動かなくなった。

「‥‥‥‥しばらく時間を止めてて」

 静かにドアを開けてから、後ろ手に静かに閉める。

 “誰だ?”

「‥‥‥‥」

 気配というものは完全に遮断していたはず。それが気づかれたという事は‥‥。

「テロリスト!」

 鎌を宙に出現させて、左手で柄を掴む


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