87 戦火の残響
向かってきた赤い閃光を鎌で弾き返す。真っ直ぐに撃った方向に返され、銃を構えていた兵士に直撃する。
「ぐはっ!‥‥」
リシャンはただ真っ直ぐに歩いていく。何度も光が襲ってきたが、その度に撃った者に戻されていった。
「‥‥全く」
あの兵器は今のこの時代にはあってはならないものだ。
同時に四方から攻撃が迫ったが、鎌を一閃させると、やはり光の軌跡は方向転換して、撃った主に返された。
そうしてる間に、ザフラカン兵士の数が減ってきた。
「リシャン! これ以上は駄目です。この地でのAIの数が規定以上に減少してしまいます」
「‥‥‥‥了解」
リシャンは鎌を大きく振るった。鎌イタチの風が、地面を抉り、爆風が残った兵士を吹き飛ばしていく。
汽笛が鳴った。政府軍は撤退を開始したようだ。
「‥‥‥‥」
振り返って散々な有様の革命軍の陣地を見渡す。
あちこちで倒れているのは、あの攻撃を受けた者たちだ。ひたすら直進してくるあの攻撃を前にしては無事で済むはずはない。
「あなたは無事のようね」
「‥‥‥‥」
アジェトは肩を押さえてうずくまっている。リシャンに気が付くと一瞬だけ顔をあげたが、また膝の中に頭を戻した。
「どうしてなんだ!‥‥まさか管理局が、ザフラカン政府に加担しているんじゃないだろうな?」
「そんな事はしない。管理局は仮想世界の歴史に関与はしない」
「では、あの武器は何なんだ! どう見ても、現実世界のものじゃないか!」
「‥‥‥‥」
リシャンは言い返さない。ただ黙ってアジェトの言葉を聞いている。
「政府はこれからも、我々を襲ってくるだろう。エージェント、リシャン‥‥我々に協力してもらえないか」
「‥‥それも出来ない」
「‥‥そうか‥‥残念だ」
「‥‥‥‥」
リシャンは顔を背けた。
政府が体制に反旗を翻してくるような集団を放置しておくはずはない。折を見てまた攻撃をしかけてくるのは明らかだ。
「このまま戦い続ければ、あなた方に勝利の可能性はない。それでも続けるつもり?」
「もちろんだ」
「死ぬと分かっていても?」
「当然だ。我々は‥‥」
アジェトは仲間の方に顔を向ける。手をあげると彼らは笑って振り返してきた。
「‥‥‥‥我々は政府軍の侵攻で全てを奪われた者の集まりだ。我々は命より大切な家族を失ったんだ」
握った手に力を入れて震わせている。
「政府を打ち倒し、軍の脅威から皆を開放する事が出来るなら‥‥それは残された我々にとっては命より大事な使命だ。例え、どんな犠牲を払おうとも、やり遂げなければならない」
「‥‥‥‥」
それで戦火が拡大すれば、同じように家族をなくす人も増えていくのではないか?‥‥リシャンの心にそんな疑問が浮かんだが、決死の覚悟を決めた彼らにそれを言う事は出来なかった。
「それではまた後に‥‥」
リシャンはまだ噴煙があがる港街を歩いていく。
解決しようのない大きな疑問が浮かんでいた。




