表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
86/146

86 規約違反の戦場

挿絵(By みてみん)

「政府軍だ!」

「くそ! ここで受け渡しをしてるのがバレたのか‥‥」

 悪態をつきながらも、アジェトも武器を取る。

「ここは戦場になる。今のうちに逃げた方がいい。話はまた後で!」

 リシャンの返事を待つ事なく、アジェトは仲間たちと一緒に飛び出していった。

「これだけだと状況が分かりませんね」

「‥‥‥‥そうね」

 開けっ放しのドアから甲板に出る。三隻のザフラカンの船は高速で、高い水しぶきをあげながらこの港を目指してきているのが見えた。桟橋付近ではアジェトが大声を上げて迎撃の為の土嚢を積み上げている。

「‥‥‥クロウ‥‥‥ザフラカンの船の船体重量と、データ量を割り出して、そこからあの船が出せる最大船速を割り出して」

「分かりました」

「‥‥‥‥」

 あの大きさの船にしては速度が出すぎている。リシャンは違和感の正体がそこにあると判断した。

「スクリュー、ジェット‥‥如何なる機関を用いても、この時代の技術では出せない速度で航行しています」

「‥‥やっぱり」

 アジェトに聞くまでもなく。規約違反をしている者が誰かが分かった。

 普通に考えれば、持ち込んではいけないはずのリアル世界での技術をここで使用しているという事になるが、この近辺に人間のアバターはアジェト以外にはいない。AIがリアル世界の技術を勝手に使用しているという事になるが、それこそありえない話だ。

 =どういう事なんですかね?=

「他の可能性を消去していって、最後に残ったものが答えらしいから‥‥多分、AIが使ってるんじゃない?」

「まさか」

「フフ‥‥そういうわけで観察しに行きましょうか」

「干渉は出来ませんからね! 管理局規定、覚えてますよね?」

 船から降りたリシャンは、猛スピードで接近してくる艦船とは対照的に、ゆっくりと足をすすめ、急ごしらえで作った塹壕の隙間から後ろに回った。

 アジェトの近くに寄る。

「エージェント、リシャン! ここは危ない!」

「大丈夫、大丈夫。ここでその規約違反の現状を観察させてもらうだけだから」

「‥‥分かった」

 ザフラカンの船は港に着くと、正面の入り口が開き、そこから一斉に迷彩服を着た兵士が下りてきた。手に持っている銃は、火薬式のものではない。

 “撃て!”

 政府軍の指揮官がそう命令すると、一列に並んだ兵士達は同時に引き金を引いた。

 ビュン‥‥という重なりあった音が響いた後、赤い直線的な光が真っ直ぐに土嚢に突き刺さり、貫通して後ろの男の体を貫いた。

「ぐはっ!」

 光は背後の家の壁に丸い穴を開けて止まった。穴からは煙があがっている。

「この!」

 土嚢の隙間から顔を出して、銃を撃つ。排出される薬莢とともに間断なく射出される弾は、確かにザフラカンの兵士達に命中しているはずだが、その途中で急に失速して地面に落下して転がった。

「‥‥‥‥」

 リシャンはその有様を身動き一つなく、じっと見つめる。

 AIが撃たれて倒れると、断末魔をあげてそれで動かなくなる。それはこの世界でのそのAIの死を意味する。

 巻き起こる爆風が、リシャンの服の端を大きく靡かせた。

 もはや戦闘にすらなっていない。政府軍側からの一方的な攻撃だった。

 リシャンは目を細める。

「‥‥‥‥クロウ」

「はい」

「規約違反が明らかで、それによって現地AIが消滅している。このままだとプログラムに歪みが発生してしまう可能性が高いと判断‥‥管理局規定により、エージェント権限で介入行動を開始する」

「‥‥了解」

「‥‥‥‥」

 リシャンの瞳が紅く光る。突き出した腕の先に鎌が現れ、その鎌の柄を掴んで回転させる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ