81 ハート模様の猫
=リシャン、相手は子供です=
「‥‥‥‥」
=愛想よく対応しないと、相手は答えてはくれません=
「具体的には?」
=笑顔です=
「‥‥‥‥」
クロウにそう言われて、仕方なく口角を上げる。
「こんにちは、あなたは何をしているの?」
「えっと‥‥」
リシャンの表情を見て、少しは気が緩んだのか、女の子は口を開き始めた。
「シラタキを探してるの‥‥」
「シラ‥‥タキ?」
それが何を差しているのかさっぱり分からない。
「シラタキって何?」
「猫」
「‥‥‥‥」
猫がシラタキ‥‥シラタキというのは、この時代の食物で、細くてクネクネしたものだと知っていた。だが、それと猫がどう関係あるのかは不明だ。
=猫の名前の事では?=
「もちろん、分かってる」
リシャンは女の子に近寄って、屈んで彼女の目線に合わせた。
「猫がそこにいるの?」
覗いているのは家の軒下。確かに猫という生き物は、そういう所に隠れそうだが。
「‥‥分かんない。抱っこしてたら逃げちゃった。こっちの方にいると思うけど」
「あなたの飼ってる猫?」
「うん」
「‥‥それであなたの名前は?」
「紗菜」
「サナちゃんね。私はユズリハ」
手を伸ばすと、サナはリシャンの手を掴んだ。引っ張るとそのまま起き上がる。
「その猫の特徴は?」
「あのね、白黒の猫でね、お腹に大きなハート模様があるの」
「それは目立つわね」
「お姉ちゃん、一緒に探してくれる?」
「もちろん」
立ち上がったリシャンの瞳が光る。知覚拡大をしようとしたが、
=いけませんよ、そんな事に=
クロウが止めに入った。
=大体、今日は休暇なのですから、この世界の日常を感じるべきです。エージェント特権を使ったら台無しじゃないですか=
「‥‥‥‥」
言われてみれば確かにその通りで、リシャンは何も言い返せなくなった。
しかし、一緒に探すと約束してしまった。
今さら、やっぱりやらないとは言えなくなっている。
どうすれば、猫という小型の生き物を発見できるのか。しかも特定の個体というのも、さらに状況を難しくしている。




