7 魂に結ばれた糸
「糸はつけてあるから。辿っていけばいいのよ」
リシャンは鎌の先の水色に光る糸を見つめる。
糸は遥か孤高の空へと伸びて消えている。
「そううまくいきますか? 奴らもプロです。追跡されている事を知ったら、すぐに場所を変えるでしょうし」
「それなら別の機会に捕まえればいいだけ」
フン‥‥と鼻を鳴らす。
「今回、逃がしたとしても、また彼らはどこかで歪みを作るでしょう。いつも自分で自分の存在を示すしかない‥‥自分が捕獲されるその日までね。それが今日になるか明日になるかの違い。つまり彼らの未来は決まってる」
「リシャン‥‥クライアントを確保したと管理局本部から報告がありました」
「‥‥‥‥」
クロウの言葉には何の興味を示さずにリシャンは、違法アバターの少女の前に立った。
「それでは管理局規定により、違法アバターを二十四時間以内に消去してください」
「‥‥‥‥」
少女の黒い瞳がリシャンを見つめている。時間が止まっているので、それはあり得ない事だったが、彼女のその表情が何かを言おうとしているように見えた。
「‥‥空間隔離、限定解除」
「リシャン?」
少女の瞳に色が戻っていく。
☆☆☆☆
どうして今まで、先輩の事を好きだと思っていたのだろう。
今では同じ学校の人‥‥ぐらいしか思わないのに。
「‥‥‥‥」
先輩は消えてしまって、後ろを振り向いたけど、友達は止まったまま。
私は先輩を鎌で切った少女をじっと見つめる。
「お前は‥‥」
「‥‥‥‥」
ここには私しかいない。だから彼女の問いかけの先は私。
「その男に好意を持っていたはずよね。どうしてその彼を拒絶したのかしら?」
「‥‥‥‥」
鎌で切られるのかと思ってたけど、いきなりそんな事を言ってきた。
「‥‥それは‥‥他に好きな人がいたから‥‥」
「‥‥その好意がテロリストのプログラムを超えたというの?」
「?」
「一つ聞きたい事があるの‥‥この世界での幸せの多くは、お金、栄誉、少々の健康、それによる円満な家庭‥‥。やり方はともかく、さっきの男の方が、お前の想い人よりも多くの幸せを与えてくれたかもしれない。それでもあなたは自分の想いを通したい?」
「‥‥‥‥」
先輩と小野君‥‥比べた事もない。
だから私は大きく頷いた。
「‥‥ふふ」
少女は私のすぐ目の前に立った。すぐ近くまで来ると、彼女の人間離れした人形のような容姿に釘付けになる。
「‥‥私も‥‥斬られるの?」
「それがあなたの望み?」
少女は鎌の先を私の喉に当てた。
ちょっとでも引いたら‥‥私は終わる。でも‥‥なぜか分からないけど、彼女はそうはしないような‥‥そんな気がしてる。
だから怖くはない。




