6 世界に死神が舞い降りる時
あれはどう見ても‥‥女の子だ。
「死神?‥‥あは‥‥そうとも言えるかもね。さて‥‥」
彼女は笑って、それから先輩に体を向けた。
「ワールドへの無許可アバターの配置と、周囲のアバターの行動変更。加えて自身の参加も未許可‥‥罪状多数ね」
「お前は‥‥‥まさか‥‥管理局?」
先輩は腰を抜かして後ずさりする。私には何を言ってるのか分からないけど。
「セキュリティーを突破してこれだけの事をするからには、相当の知識と組織的力が無ければ出来ないはず。あなたの希望を依頼した者達がいるはずよね。詳しく話した方が身のためだと思うけど?」
死神の少女は笑ってる。
「し、知らない‥‥俺はただ‥‥」
「幼い日の失恋の葛藤を、この世界で晴らそうとしただけ‥‥ってわけ?」
「別に構わないだろ! こんなのはただのゲームだ!」
「‥‥‥ゲーム?」
目を細めた少女の瞳が炎の様に揺れて、それから表情が無くなった。
宙に浮かんでいた彼女は、床に降りた。コツコツ‥‥と、軽そうな、小さな足音を立てて先輩に近づいていく。
「場所が特定されれば、身柄はすぐに確保されるでしょうね。そこで話しなさい」
「ひっ!」
少女は鎌を振り上げた。鎌の刃が青色に輝く。先輩は腕で顔を覆ったけど、その上から鎌は振り下ろされた。
「‥‥‥‥」
先輩を助けないと‥‥そう思ったのに全く動けない。真上から二つにされて、消えていく先輩の姿をただ黙って見てた。
「‥‥‥‥」
消えた瞬間、私の先輩に対する愛情のようなものは全て無くなった。
「何も聞きだせなかったようですね。先にクライアントを処理してしまって良かったのですか? 拘束しても恐らく彼は依頼先のテロリストの事は何も知らないでしょう」
クロウが目の前の灰色の世界を、その真っ暗な瞳に写しながら話してくる。
この室内‥‥限られた空間はエージェント権限で時間を止めていた。この部屋の以外の世界は普通に動いている。中にいた数名は解除後に自分の時計が遅れている事に気づくだろうが、その理由を知る事はない。
テロリストによって創られたアバターの少女だけは、まるでこちらを捉えているかのようにこっちを見ている。
「糸はつけてあるから。辿っていけばいいのよ」




