66 愛と断罪の境界
「僕は彼女の事が好きでした。例え彼女の気持ちが作り物でも、この気持ちを伝え続ければ、いつかは本物になるのではないかと‥‥」
「‥‥‥‥」
リシャンはガラスの像ではない陶二に視線を移した。
「そう決心した僕は学校を卒業してすぐに彼女にプロポーズして、結婚しました」
陶二は言葉を区切る。恐らくは色々な思いが交錯しているのだろう。リシャンは次の言葉を黙って待った。
「僕には起業したいという夢が昔からありましたが、安定した生活を失うわけにはいかなかったので、普通に就職しました。でもその僕の夢を彼女に言った時、どんな事があっても支えるから、僕のやりたい事をやって欲しいと言われ‥‥それからは無我夢中の日々でした。大変な時期もありましたが、涼子はいつでも僕を支えてくれて‥‥‥」
「今や彼女は、誰よりも裕福で何不自由の無い生活が出来てるみたいね」
それが彼なりの愛情の注ぎ方だったのだろう。そこに何がしかの問題があったのかもしれないが、現時点で断定するには材料が少なすぎる。
「リシャン!」
予想より早くクロウが戻ってきた。
「‥‥もう、涼子はその男の所に行ったの?」
「現在マンションに真っ直ぐに向かっています」
「そう」
リシャンが立ち上がった瞬間、全身が眩い光に包まれた。消えた後にはメイド服ではない、鎌を携えた着物の少女の姿に変わっていた。
リシャンのその格好に鎌を見た陶二は息を飲む。
「これから、彼女の様子を見に行くけど‥‥あなたが調査した通り、浮気してるかもしれない。そうなれば希望通り、ログアウト承認。それでいいのね?」
「はい」
陶二は静かに頷く。意志は固いようだ。
「‥‥‥‥では、そういう事で‥‥」
鎌を回転させる。全面に黒い円が渦を巻きながら現れ、着物の少女はその中へと消えていった。




