63 若さは罪
「‥‥‥‥」
その時、少しだけ捲れた胸元から白い肌が見えた。
最初から思ってたけど、彼女は何て肌が白くて、スベスベしているんだろうか。およそそれは肌というよりは陶器に近い。若い頃は誰しもこうなのか‥‥私はどうだったのか‥‥あまりにも昔の事で思いだせない。
今、この若さが私にあれば‥‥。
「‥‥何か?」
彼女の少し吊り上がった眦は、穏やかな表情に比べて心を突き刺してくるみたいだ。
「あ、いえ」
あまりにもジロジロと見てたせいか、彼女は首を傾げて不審がっているようだ。
家中を案内した頃には夕方近くになっていた。
「では。明日からお願いしますね」
「分かりました」
彼女は頭を下げて帰っていく。
私はその後ろ姿を、見えなくなるまで見つめる。
スタイルが良い。長い脚。細い腰。艶やかな髪‥‥本物の若さとはあのようなものなのだ。
「‥‥くっ!」
怒りが込み上げてくる。
彼女が特別なわけじゃない。ただ生まれるタイミングが違っていただけ!
なぜ私はもっと後に生まれなかったの! ただそれだけで良かったのに!
もっと‥‥もっと‥‥美を求めなければ‥‥。
アキトが彼女みたいな若狭だけの女に惑わされるその前に‥‥。
私は彼の愛を掴んで幸せになる。
☆☆☆☆
「どうでしたか?」
一日の終わり、クロウが聞いてきた。
「普通の人」
リシャンは肩をすくめた。
「プログラム改変の痕跡は見られない。ちゃんと感情がある」
強制的に改変されていた場合、感情は喪失して、ただのボットとして反射行動を取るだけだが、彼女はそうではないように見える。
「それに、テロリストの痕跡も見当たらない」
「それならやはり、ただの初期設定の経年変化という事になりますね」
「決めつけるのはまだ早い」
涼子の自分を見つめる視線の強さに、何か尋常でないものを感じた。それは他のAIにはないものである。そこに今回の特異性があるのではないかと、リシャンは感じていた。
「とりあえず、明日もあの家に行くから、そこで観察してみましょうか」
リシャンは悪戯っぽい笑みを浮かべ、若葉の息吹を感じる初夏の街道を歩いて行った。




