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53/70

53  この日のために生まれてきた

 ドーム公演が始まるまでの一か月の間、私はリハーサルを何度も繰り返してた。

 それこそ、倒れる寸前まで歌って、踊って‥‥いくら準備をしても、全然足りない。

 もっと‥‥もっと響かせたいから。

 そうやって迎えた当日‥‥。

「まあ、素敵な衣装ねえ」

 佐野さんは、ステージ衣装を見て頬に手を当てて喜んでる(ちょっと気持ち悪いかな)。

 メイクさんに化粧をされてから改めて、今、着てる衣装を見渡す。

 何て言うか‥‥華やかなんだけど、可愛い感じ。

 白色を基調として、部分的にピンクとか青のアクセントが入ってる。短い白のフレアスカートは動くたびにふんわりと揺れる。

 肩とかデコルテは出ていて、ちょっと大胆。腰にはピンク色の大きな蝶々結びのリボン。手袋もブーツもピンク色。綺麗なんだけど、可愛い‥‥みたいな。

 待合室で待ってる。ここには誰もいないけど、廊下を渡った先、その向こうには、たくさんの人が私の歌を聞きにここまで来てる(チケットは完売したとか。つまりお客さんは六万人いる!)。

 怖いけど‥‥足が震えてるけど‥‥それ以上に心が震えてる。

 逃げたりなんかは絶対にしない!

 私は‥‥私は今日、この日に為に生まれてきたんだと思うから。

 最後まで、歌いきってみせる!

「ヒビカちゃーん! 時間よぉ!」

「はい!」

 手を握りしめて立ち上がる。

 会場へ続くこの廊下は花道。

 この先に‥‥私の望んだ世界がある!


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