53 この日のために生まれてきた
ドーム公演が始まるまでの一か月の間、私はリハーサルを何度も繰り返してた。
それこそ、倒れる寸前まで歌って、踊って‥‥いくら準備をしても、全然足りない。
もっと‥‥もっと響かせたいから。
そうやって迎えた当日‥‥。
「まあ、素敵な衣装ねえ」
佐野さんは、ステージ衣装を見て頬に手を当てて喜んでる(ちょっと気持ち悪いかな)。
メイクさんに化粧をされてから改めて、今、着てる衣装を見渡す。
何て言うか‥‥華やかなんだけど、可愛い感じ。
白色を基調として、部分的にピンクとか青のアクセントが入ってる。短い白のフレアスカートは動くたびにふんわりと揺れる。
肩とかデコルテは出ていて、ちょっと大胆。腰にはピンク色の大きな蝶々結びのリボン。手袋もブーツもピンク色。綺麗なんだけど、可愛い‥‥みたいな。
待合室で待ってる。ここには誰もいないけど、廊下を渡った先、その向こうには、たくさんの人が私の歌を聞きにここまで来てる(チケットは完売したとか。つまりお客さんは六万人いる!)。
怖いけど‥‥足が震えてるけど‥‥それ以上に心が震えてる。
逃げたりなんかは絶対にしない!
私は‥‥私は今日、この日に為に生まれてきたんだと思うから。
最後まで、歌いきってみせる!
「ヒビカちゃーん! 時間よぉ!」
「はい!」
手を握りしめて立ち上がる。
会場へ続くこの廊下は花道。
この先に‥‥私の望んだ世界がある!




