50 初めての乾杯
中に入ってるのは紫色の液体。
「‥‥これって‥」
「お酒。ワインって言うらしいよ」
「アルコールって禁止されてるんじゃ‥‥」
「ここは仮想世界。だからいいじゃない」
「‥‥‥‥」
何だか騙されたような気がするけど、ちょっとだけ口にする。
苦い‥‥けど、後から甘さが迫ってくる感じ。美味しい‥‥のかな? よく分からない。
そうやって何杯か飲んでると‥‥気分が良くなってきたような‥‥。
今なら聞けるかもしれない。
ずっと聞きたかった事。
「その‥‥リシャンはどうしてそこまで私を助けてくれたの?」
「私は何もしてない。努力したのはヒビカ‥‥あなた自身」
「‥‥それにしては」
ただの管理局の役人にしては面倒見が良すぎる。
「私がそうしたかったから。理由があるとしたら、それだけ」
「‥‥‥‥」
これ以上聞いても、多分何も答えてはくれないと思う。
「これで‥‥リシャンとはお別れ?」
「一旦はね」
「‥‥‥‥」
「でも、あなたが自分の夢を叶えて、本物のアイドル‥‥スターになったら、その時はまた会えると思う」
「‥‥本物の‥‥スター」
「そう。だから頑張ってね。期待してる」
「はい!‥‥絶対に!‥‥絶対に夢を叶えてみせます!」
「ふふ」
リシャンは笑って空になった私のグラスにワインを注いだ。
明日からは今日食べた分のカロリーを消費する為に、自主トレをしなければならない。そう考えると憂鬱だけど‥‥。
「初めてにしては、良い飲みっぷりね」
「うん‥‥あははは!、だって私は未来のスターだから!」
「もしかして酔ってる?」
リシャンはまた注いできた。
今だけは、彼女との一時を楽しもうと思う。




