48 全く、面倒臭い
「うまくいったでしょ」
リシャンは私が言う前に、そう決めつけてきた。
「‥‥どうかな」
「あなたは大丈夫」
「‥‥どうしてそう思うの?」
「背負ってきた重みが違うから」
「え?」
「これからは芸能事務所の方針に従っていけばそれでOK。基礎が既に出来てるあなたは、他のコ立より頭一つも二つも抜きんでてるから、すぐに上がっていける」
「‥‥‥‥うん」
「じゃあね」
リシャンは手をひらひらさせて背を向けて歩いていこうとした。
「ま、待って!」
「何?」
振り向いた彼女の表情はいつもの通り、白面で静かな笑みを浮かべてる。
「じゃあ、リシャンは‥‥もう‥‥いなくなるの?」
「そうね。これでガイドの仕事は終わり。あとはあなたの夢を叶えるだけ。良かったわね」
夢が‥‥叶う‥‥まだ先の事だと思う。不思議と彼女がそう断言してくると、絶対にそうだと思ってしまう。
「その‥‥」
「まだ何かあるの?」
「えっと‥‥あ、そうだ! お祝いに、何処かに食べに行きませんか?」
「‥‥‥‥」
彼女は漆黒の瞳で私を見てる。言ってみて思ったけど、リシャンは食べたりするんだろうか。今までどうだったかと言うと、飲み食いしてる所を見た時がない。
「‥‥フフ」
こらえきれなかったかの様に笑った。
「じゃあ、何処かに行きましょうか。何処がいい?」
「それは‥‥えっと‥‥」
「全く、面倒臭い!」
「え?‥‥うわ!」
リシャンに手を掴まれ、驚く暇もなく私は別の場所に立っていた。




