47 限界まで伸びをして
エレベーターを降りた先、しばらく待合室みたな大きな部屋で待たされてから、名前を呼ばれて奥の部屋へと進んだ。
「‥‥‥‥」
そこに待っていたのは、コの形で並べられた机と、そこに座ってる偉そうな人達。皆、笑ってる人はいなくて、ただ私の顔をじっと観察してる。
「村下灯火華さん。どうぞ座ってください」
「はい」
「ではこれから‥‥」
そうしてオーディション審査が始まった。
自己紹介の後、歌ったり、踊ったり‥‥緊張しすぎて頭が真っ白になる寸前‥‥の所で、ハっと意識が元に戻る。その繰り返し。
とにかく一生懸命。全力でやって、それで駄目なら仕方がないじゃん。
うううん、駄目なんて事はない。
私は‥‥あの病室の世界から抜け出したんだから。
だから誰よりも羽ばたいていけるはず。
「はい、お疲れ様でした。結果は後日、お知らせします」
「ありがとうございます」
頭をさげて部屋から出る。入れ違いに別のコが中に入っていく。顔を見るとやっぱり緊張しているようだ。
「はあ、疲れた‥‥」
芸能事務所のビルから外に出た途端、私は両手を限界まで広げて伸びをする。中は暖房が効いててホカホカだった。
外に出た途端、ひんやりとした空気が背筋をピンとさせてくる。
「‥‥雪」
灰色の空から小さな白いものがゆっくりと下りてくる。風は全くない。落ちた雪はアスファルトに落ちてしばらくすると溶けて消えていった。
「お疲れさま」
「!」
真後ろから急に声をかけられて私は首をすぼめた。
何でこの人はいつも死角から現れるかな‥‥。




